天下無双の鍵使いー引き継がれるものー【挿絵付】

サマヨエル

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ー第41話ー

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「これから一体何をするんですか?」


カインの『扉を貸してほしい』とうよくわからない願いを聞き届け、自宅の前まで連れてきたウララであったが、結局のところ扉を使って何をするのかはさっぱりわからなかった。



「そうだな、契約するにあたってその内容を知っておいてもらわないと成立しないらしいから、話してくよ」




(契約・・・成立?)




「信じがたいかもしれないけど、俺の鍵師としての能力でね。自分の所有している扉と契約した扉を接続するって力があるんだ。早い話が扉を使った瞬間移動だな」




「はぁ・・・・」



ウララは気の抜けた返事をする。カインの言うことは何となく理解はできるのだが、それが実現するのかというと、また話が別である。





「君の家の中に入ることはないから安心して。使うのは扉の外側だけだから。まぁ・・・男が出入りしてるって噂になる可能性はあるけど・・・。どう?いいかな」




(言ってることは分からないけど・・・)



「よくわかりませんが、お役に立つなら・・・いいですよ」




「やった!これで成立だな!」




そういうとカインは右の掌を上に向け差し出した。突如出現した魔法陣のようなものから、にょきっと一本の鍵が生えてくる!



「!?魔術?でも鍵師って・・・」







カインが鍵をウララの家の扉に差した。くるりと囲うように出現したままの魔法陣は、まるで鍵穴の中で形を変えるシリンダーの様に目まぐるしく動いている。




がちんっ!




自分の家の扉から聞いたこともないような重厚な金属音が響き、なぜか開いていた扉に対し鍵を回したはずなのに、ドアノブを回すとすっと開いた。








「嘘っ!」






実に不思議な、信じがたい光景である。扉以外の、穴の開いた壁やガラスの割れた窓の向こうにはちゃんと自分の家の中が見えるというのに、扉の中から見た向こう側だけは全く別の空間が広がっているではないか。




「さぁ、入ってよ。契約してくれたお礼もしたいしさ。君が俺にとっての初めてのお客さんだ」




カインに促されウララは扉の向こう、家の玄関に立つ。




「信じられない…確かに私の家だったのに。こんなに素敵な場所に繋がっているなんて」




村での暮らししかしたことのないウララにとって、カインの拠点はあまりに規格外だった。



天窓から降り注ぐ陽の光が部屋の中を満たしている。外は木々が風に揺れ眺めるだけで涼しげな気持ちになる。



視界に広がるリビング。テーブルやソファ、キッチンはどれもきれいで時計、本棚、食器棚など家具はどれも部屋の雰囲気を損なわず統一された素敵な部屋だった。




中へ入っていくカインだったが、ウララはそこから一歩も動けない。







「どうした?上がってよ」




「で、でも・・・」



ウララは少し俯く。そこから見える自分の姿は、きれいな部屋とはあまりにかけ離れている。



ボロボロになった服に泥と煤に黒ずんだ肌。髪もバサバサである。




「私はこんなに汚いですから、上がっては汚してしまいます」




あぁ!とその言葉に少年が納得したような顔を見せる。



「別に俺は気にならないんだけどなぁ。確かに招かれる側としては気になるよな。じゃあまず!服もいっぱいあるし・・・といってもみんな似たような服だけど」




「えぇえ!?」




これほど驚いたのはいつぶりのことだろうか。さっき会ったばかりの他人がこんな汚い人外にお風呂と服まで貸してくれるとは、この世界にそんな人間がいることに驚きを隠せないウララ。



「やっぱりわかりません。なぜそこまで私に対し優しくしてくれるんですか。いつ襲われてもおかしくないのに・・・」




「くくっ!あははははっ!」




割と真剣に頭を悩ませていたウララに対し、なんとカインはからりと笑ったではないか!こちらの気も知らないで、とウララは内心少しムッとした。




「あぁごめん、気を悪くしたなら謝る。だって相手の心配をする魔物なんてのが人を襲うわけないしさ」




「・・・わかりませんよ?すべて演技だとしたら。実際私は人間だった育ての母をこの手で殺めたのですから。油断させ食べてしまおうとする悪い魔物かも・・・「嘘だね」」





が一瞬脳裏によぎる。そんなウララの目をカインはまっすぐと見つめる。




「隠すのはうまいけど嘘が下手だ。一時期はどん底にいた俺にはわかる。君はとても辛そうだよ、見ていて悲しくなるくらいに」




「・・・あなたに、私の何がわかると?」





奥底から湧き出る不快感に、ウララはカインを睨んだ。だがカインは一切臆する様子がない。






「少なくとも一つ知っている。ということさ。」
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