天下無双の鍵使いー引き継がれるものー【挿絵付】

サマヨエル

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ー第34話ー

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(さっきの子達、川で遊ぶつもりだったのかな・・・いいなぁ。どうして私はいつも一人なんだろう)




日は傾き始め、世界はオレンジ色に染まっていく。野に広がるススキ軍は風に揺らぎ黄金の絨毯のようだった。



ウララは一人、ススキに影を落とし家へと歩みを進める。




(誰も私に近づかない。誰も私を見てくれない。家を出たら私に居場所なんて・・・あぁ、寂しいよお父さん)






今日だけの話ではない、ウララはこの村でいつも一人ぼっちだった。




理由はとても単純で実に人間らしい。とても大きいとはいえないこの村の中で、唯一裕福な暮らしができていたエルドラゴ家に対し、村の住人が妬み嫉妬していたからである。




同じ村に住むエルドラゴ一家を未だによそ様扱いし、誰一人として関わろうとしない。時には窓を割られたり物を盗まれるようなことまで起きた事もある。






そのためウララは村の子供たちと一緒に遊んだことなど、一度としてなかった。いつも寂しそうにするウララに、村での生活に耐えかねた両親は街へ移り住むことを決意したのだが・・・




その矢先、父は徴兵され家を離れることとなってしまった。







ウララは孤独をこらえるようにこぶしを硬く握った。





(お父さんさえ帰ってくれば寂しくない。この村からも出て行けるんだ。お父さんさえ・・・戻ってきてくれれば・・・それに来年は・・・)






そう、14歳になったウララは来年にあの儀式が控えているのだ。人生を一変させるほど大きな儀式、神職授与式が。





父さえ帰ってくればすべてがうまくいく。来年になれば職業次第では村の住人に認めてもらえる。




ウララの心が前を向いていられるのも、家族という柱と神職授与という光がこの未来さきで輝いていたからに他ならなかった。




ぐっと寂しさを押し込めて顔を上げる。遠くに見える忌々しいあの村のもっと先には、グラデーションのかかった透き通る青と橙色の狭間で光り輝く、一点の一番星が見える。





「私は負けない、負けないよお父さん!堪えて、頑張って・・・あの一番星になる!」




ひんやりとした夕暮れの冷たい風が頬をなぞった。内に宿った決意を吐き出したのは、遠い父に向けての言葉ではなく、自分を鼓舞するためだったのかもしれない。





だが、この世界は平等に不平等。悲嘆するものに無償で救いを与えるお人よしの神など存在しない。結局のところ自分で助かるほか道はないのだ。



















父からの手紙はウララの元へ届くことは一度としてなかった。



そして父は、二度とウララの前に現れることはなかった。
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