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ー第28話ー
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「聞いていた話と違うぞ、相手はただの鍵師じゃないのか!何で俺達が追いつけない!」
カインの後を追う数名の男達がそんなことを口々に叫んでいた。
屈強、というには少々物足りない比較的小柄な男が3名。単純なスピードではカインに劣るが、屋根の上という走りにくいこの場所を難なく走る彼らの身のこなしは常人のものではない。
おそらく地上で走っても同じほどの速度で走れるのだろう。
<ねぇカイン、追われているところ申し訳ないんだけど、僕は反職組織という言葉は聞いたことがないんだ。どういう組織なんだい?>
「ん?あぁ。アンチジョブはその名の通り、完全職依存に反したならず者の集団だよ。自分の職に不満のあるものや不当な扱いを受ける者達が集まって組織化したヤクザ者。メタルフラッグはここいらじゃ一番でかい組織だ」
相変わらず脳内会話が苦手なカインは走りながら口で答えた。追われている状況にもかかわらず、息を荒げる様子はない。
「暗殺者とか盗賊なんて職はれっきとした戦闘職だけど、イメージが明るくないせいでパーティを組めなかったり、ギルドが加入を制限してる場所だってある。ほかにも自分の理想と職の不一致に我慢できず、職を全うしろって言う国の方針に反旗を翻すって目的で集まった連中だよ。数と力で物を言わせて、金貸しや用心棒、復讐代行から殺しまで、金のためならなんでもする裏社会の人間」
<へぇ・・・それはまた厄介な連中に目をつけられたね>
「あぁ。たぶんソリッズが金で雇ったんだろう。まだ役人の卵とはいえ、さすがにこれはアウトだな。明るみに出れば法で裁かれる」
<カイン、後ろ!>
ビュンッ!!
「うぉっと!」
背後から迫る投げナイフにいち早く気づいたジル。声に反応して咄嗟に身体を低くしたカインの頭上に3本のナイフが飛んでいった。
「遮蔽物がない屋根の上はこっちが不利だな、クソ!」
次の家の屋根を飛び移る前に地面へ落ちるカイン。壁をけり衝撃を弱めてすとんと着地すると、人通りの多い通りに向かい走った!
(さすがに裏社会の人間がこの雑踏の中で目立つ行動はしないだろう!)
そう思い人ごみに身を投じようとするカインだったが、刹那の瞬間よぎった違和感に寸でのところで足を止めた。
(!?まさかこいつら・・・・!!)
見ていたのだ。街の住人だと思っていた人ごみの中の数名が、カインを目で捕らえていた。一瞬だったが、カインが姿を現したその瞬間、同時に目線が移ったことで違和感を覚えたのだ。
「ッッ!!」
間違いない、こいつらも同じくメタルフラッグのメンバーだ。潜伏アンチジョブといったところだろうか。捕まることを危惧したカインは反転し、大通りから離れた路地へと逃げ込んだ。
「あっちに行ったぞ、追え!!」
カインの勘は正しかったようだ。背後から聞こえる声に見向きもせず、カインは暗く細い裏路地に走りこんだ。
カインの後を追う数名の男達がそんなことを口々に叫んでいた。
屈強、というには少々物足りない比較的小柄な男が3名。単純なスピードではカインに劣るが、屋根の上という走りにくいこの場所を難なく走る彼らの身のこなしは常人のものではない。
おそらく地上で走っても同じほどの速度で走れるのだろう。
<ねぇカイン、追われているところ申し訳ないんだけど、僕は反職組織という言葉は聞いたことがないんだ。どういう組織なんだい?>
「ん?あぁ。アンチジョブはその名の通り、完全職依存に反したならず者の集団だよ。自分の職に不満のあるものや不当な扱いを受ける者達が集まって組織化したヤクザ者。メタルフラッグはここいらじゃ一番でかい組織だ」
相変わらず脳内会話が苦手なカインは走りながら口で答えた。追われている状況にもかかわらず、息を荒げる様子はない。
「暗殺者とか盗賊なんて職はれっきとした戦闘職だけど、イメージが明るくないせいでパーティを組めなかったり、ギルドが加入を制限してる場所だってある。ほかにも自分の理想と職の不一致に我慢できず、職を全うしろって言う国の方針に反旗を翻すって目的で集まった連中だよ。数と力で物を言わせて、金貸しや用心棒、復讐代行から殺しまで、金のためならなんでもする裏社会の人間」
<へぇ・・・それはまた厄介な連中に目をつけられたね>
「あぁ。たぶんソリッズが金で雇ったんだろう。まだ役人の卵とはいえ、さすがにこれはアウトだな。明るみに出れば法で裁かれる」
<カイン、後ろ!>
ビュンッ!!
「うぉっと!」
背後から迫る投げナイフにいち早く気づいたジル。声に反応して咄嗟に身体を低くしたカインの頭上に3本のナイフが飛んでいった。
「遮蔽物がない屋根の上はこっちが不利だな、クソ!」
次の家の屋根を飛び移る前に地面へ落ちるカイン。壁をけり衝撃を弱めてすとんと着地すると、人通りの多い通りに向かい走った!
(さすがに裏社会の人間がこの雑踏の中で目立つ行動はしないだろう!)
そう思い人ごみに身を投じようとするカインだったが、刹那の瞬間よぎった違和感に寸でのところで足を止めた。
(!?まさかこいつら・・・・!!)
見ていたのだ。街の住人だと思っていた人ごみの中の数名が、カインを目で捕らえていた。一瞬だったが、カインが姿を現したその瞬間、同時に目線が移ったことで違和感を覚えたのだ。
「ッッ!!」
間違いない、こいつらも同じくメタルフラッグのメンバーだ。潜伏アンチジョブといったところだろうか。捕まることを危惧したカインは反転し、大通りから離れた路地へと逃げ込んだ。
「あっちに行ったぞ、追え!!」
カインの勘は正しかったようだ。背後から聞こえる声に見向きもせず、カインは暗く細い裏路地に走りこんだ。
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