天下無双の鍵使いー引き継がれるものー【挿絵付】

サマヨエル

文字の大きさ
上 下
29 / 50

ー第28話ー

しおりを挟む
「聞いていた話と違うぞ、相手はただの鍵師じゃないのか!何で俺達が追いつけない!」




カインの後を追う数名の男達がそんなことを口々に叫んでいた。



屈強、というには少々物足りない比較的小柄な男が3名。単純なスピードではカインに劣るが、屋根の上という走りにくいこの場所を難なく走る彼らの身のこなしは常人のものではない。


おそらく地上で走っても同じほどの速度で走れるのだろう。




<ねぇカイン、追われているところ申し訳ないんだけど、僕は反職組織アンチジョブという言葉は聞いたことがないんだ。どういう組織なんだい?>




「ん?あぁ。アンチジョブはその名の通り、完全職依存に反したならず者の集団だよ。自分の職に不満のあるものや不当な扱いを受ける者達が集まって組織化したヤクザ者。メタルフラッグはここいらじゃ一番でかい組織だ」




相変わらず脳内会話が苦手なカインは走りながら口で答えた。追われている状況にもかかわらず、息を荒げる様子はない。




「暗殺者とか盗賊なんて職はれっきとした戦闘職だけど、イメージが明るくないせいでパーティを組めなかったり、ギルドが加入を制限してる場所だってある。ほかにも自分の理想と職の不一致に我慢できず、職を全うしろって言う国の方針に反旗を翻すって目的で集まった連中だよ。数と力で物を言わせて、金貸しや用心棒、復讐代行から殺しまで、金のためならなんでもする裏社会の人間」





<へぇ・・・それはまた厄介な連中に目をつけられたね>






「あぁ。たぶんソリッズが金で雇ったんだろう。まだ役人の卵とはいえ、さすがにこれはアウトだな。明るみに出れば法で裁かれる」



<カイン、後ろ!>




ビュンッ!!


「うぉっと!」




背後から迫る投げナイフにいち早く気づいたジル。声に反応して咄嗟に身体を低くしたカインの頭上に3本のナイフが飛んでいった。



「遮蔽物がない屋根の上はこっちが不利だな、クソ!」





次の家の屋根を飛び移る前に地面へ落ちるカイン。壁をけり衝撃を弱めてすとんと着地すると、人通りの多い通りに向かい走った!




(さすがに裏社会の人間がこの雑踏の中で目立つ行動はしないだろう!)




そう思い人ごみに身を投じようとするカインだったが、刹那の瞬間よぎった違和感に寸でのところで足を止めた。





(!?まさかこいつら・・・・!!)





見ていたのだ。街の住人だと思っていた人ごみの中の数名が、カインを目で捕らえていた。一瞬だったが、カインが姿を現したその瞬間、同時に目線が移ったことで違和感を覚えたのだ。




「ッッ!!」




間違いない、こいつらも同じくメタルフラッグのメンバーだ。潜伏アンチジョブといったところだろうか。捕まることを危惧したカインは反転し、大通りから離れた路地へと逃げ込んだ。




「あっちに行ったぞ、追え!!」






カインの勘は正しかったようだ。背後から聞こえる声に見向きもせず、カインは暗く細い裏路地に走りこんだ。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

処理中です...