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ー第19話ー
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ぶぉん!!
風を切って放たれた回し蹴りは確実にカインの後頭部に狙いを定めていた。だが不意を付いたつもりでいたのはこの場でマルスだけである。
「!?」
渾身の回し蹴りは、なんと後ろを向いたままのカインの腕によって糸も簡単に止められてしまった。
「何もしなきゃ手を出すつもりは無かったんだけどな。先に言っておくと俺は謝るつもりは無い。お前が悪いんだぜ?」
そういうとカインはマルスの足首をむんずとつかむと・・・
「おぉ・・?ぉお!おおおおおおおおおおお!!」
マルスの体が宙へ浮いた!カインよりも一回り大きいその体は簡単に浮き上がり、ブンと片腕一本で振り回されすっ飛んでいく!
ゴッシャアァァァァァァァ!!!!
マルスの体は空の木の樽の山へ派手に突っ込んだ。バラバラになった樽の瓦礫の山からはみ出た両足はピクリとも動く気配が無い。
「おわっ!そんなに吹っ飛ばすつもりは無かったんだが・・・やっちまったか?」
<さすがにあれ位じゃ死なないさ。曲がりなりにも『戦士』なんだろ、彼。カインももうちょっと自分の体の変化に慣れておいたほうがいいね>
そんな二人の戦闘を目の当たりにしたソリッズとその他は、その場に立ち尽くし動けずにいた。
目の前で起こったことに対し脳の処理が追いつかないのだ。カインの変わりように始まり、今までいじめ続けてきた相手に拳が当たらない。あろうことかあのマルスでさえ腕一本で宙に浮き数mも吹っ飛ばされたのだ!
しかもジョブランク最低のE、生産職の鍵師に戦士が、だ。
情報量が多すぎて混乱する一行に対し、カインは彼らに向き直る。
「いいか、よく聞け。この通り俺は変わった。お前たちが死ぬほどボコボコにしたせいで文字通り死んで生まれ変わった。今の俺ならお前らを俺が受けたように、同じ仕打ちをすることなんて容易い。だけど俺はそうしない。大サービスだ。あれだけ散々蹴られ殴られなじられ続けたそのすべてを忘れてやる。今の俺にとってお前たちなんてそんなもんだ。心底どうでもいいんだ」
「だけどそれでも突っかかってくるって言うんなら仕方が無いから相手をしてやる。まぁたぶんあぁなると思うぜ?」
そういってカインが指差す先には相変わらず動く気配の無いマルスの体。
「くっ・・・貴様!覚悟はできているんだろうな?『役人』の俺に楯突いたことを!貴様の家から何もかも差し押さえ、追い出してやってもいいんだぞ!!」
「はっ!!ご自由にどうぞ。でもあの家には差し押さえるもんなんて何も残ってないぞ?もう一度言う、お前らが何しようが心底どうでもいい。ただ俺に喧嘩売ってこなければ。じゃあな、あのデカブツちゃんと持って帰れよ?」
カインは言いたいことだけ言うと、颯爽とその場を後にした。そしてふと彼らは思い出す。カインは最初持っていた買い物の袋を一度として放していない。
ずっと荷物を持ったまま片腕一本であのマルスの相手をしていたのだ。
「ぐっ・・・ぐがぁっ・・ぎぃいいぃいいいい!!!!!」
在ろうことかカインに見下され見返され、返り討ちにあい言いたい放題言われる。常に誰よりも上の立場であったソリッズのプライドというプライドはズタズタにされ、あまりの悔しさに奇声を上げていた。
だが、マルスでさえ太刀打ちできない相手にソリッズが力で適うはずも無い。役人としての権力はまだ子供のソリッズには無く、カインが言うとおりあの家にはろくな物も残っていない。そもそもカインは拠点を移しているから意味は無いのだが、それはソリッズの知るところではなかった。
「ぐぅうぅぅうう!覚えてろよカイィン!!!この借りは絶対に返す!!!俺の恐ろしさを散々思い知らしめた後、地べたに這い蹲って延々と謝罪してもらうからな!!!!」
風を切って放たれた回し蹴りは確実にカインの後頭部に狙いを定めていた。だが不意を付いたつもりでいたのはこの場でマルスだけである。
「!?」
渾身の回し蹴りは、なんと後ろを向いたままのカインの腕によって糸も簡単に止められてしまった。
「何もしなきゃ手を出すつもりは無かったんだけどな。先に言っておくと俺は謝るつもりは無い。お前が悪いんだぜ?」
そういうとカインはマルスの足首をむんずとつかむと・・・
「おぉ・・?ぉお!おおおおおおおおおおお!!」
マルスの体が宙へ浮いた!カインよりも一回り大きいその体は簡単に浮き上がり、ブンと片腕一本で振り回されすっ飛んでいく!
ゴッシャアァァァァァァァ!!!!
マルスの体は空の木の樽の山へ派手に突っ込んだ。バラバラになった樽の瓦礫の山からはみ出た両足はピクリとも動く気配が無い。
「おわっ!そんなに吹っ飛ばすつもりは無かったんだが・・・やっちまったか?」
<さすがにあれ位じゃ死なないさ。曲がりなりにも『戦士』なんだろ、彼。カインももうちょっと自分の体の変化に慣れておいたほうがいいね>
そんな二人の戦闘を目の当たりにしたソリッズとその他は、その場に立ち尽くし動けずにいた。
目の前で起こったことに対し脳の処理が追いつかないのだ。カインの変わりように始まり、今までいじめ続けてきた相手に拳が当たらない。あろうことかあのマルスでさえ腕一本で宙に浮き数mも吹っ飛ばされたのだ!
しかもジョブランク最低のE、生産職の鍵師に戦士が、だ。
情報量が多すぎて混乱する一行に対し、カインは彼らに向き直る。
「いいか、よく聞け。この通り俺は変わった。お前たちが死ぬほどボコボコにしたせいで文字通り死んで生まれ変わった。今の俺ならお前らを俺が受けたように、同じ仕打ちをすることなんて容易い。だけど俺はそうしない。大サービスだ。あれだけ散々蹴られ殴られなじられ続けたそのすべてを忘れてやる。今の俺にとってお前たちなんてそんなもんだ。心底どうでもいいんだ」
「だけどそれでも突っかかってくるって言うんなら仕方が無いから相手をしてやる。まぁたぶんあぁなると思うぜ?」
そういってカインが指差す先には相変わらず動く気配の無いマルスの体。
「くっ・・・貴様!覚悟はできているんだろうな?『役人』の俺に楯突いたことを!貴様の家から何もかも差し押さえ、追い出してやってもいいんだぞ!!」
「はっ!!ご自由にどうぞ。でもあの家には差し押さえるもんなんて何も残ってないぞ?もう一度言う、お前らが何しようが心底どうでもいい。ただ俺に喧嘩売ってこなければ。じゃあな、あのデカブツちゃんと持って帰れよ?」
カインは言いたいことだけ言うと、颯爽とその場を後にした。そしてふと彼らは思い出す。カインは最初持っていた買い物の袋を一度として放していない。
ずっと荷物を持ったまま片腕一本であのマルスの相手をしていたのだ。
「ぐっ・・・ぐがぁっ・・ぎぃいいぃいいいい!!!!!」
在ろうことかカインに見下され見返され、返り討ちにあい言いたい放題言われる。常に誰よりも上の立場であったソリッズのプライドというプライドはズタズタにされ、あまりの悔しさに奇声を上げていた。
だが、マルスでさえ太刀打ちできない相手にソリッズが力で適うはずも無い。役人としての権力はまだ子供のソリッズには無く、カインが言うとおりあの家にはろくな物も残っていない。そもそもカインは拠点を移しているから意味は無いのだが、それはソリッズの知るところではなかった。
「ぐぅうぅぅうう!覚えてろよカイィン!!!この借りは絶対に返す!!!俺の恐ろしさを散々思い知らしめた後、地べたに這い蹲って延々と謝罪してもらうからな!!!!」
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