天下無双の鍵使いー引き継がれるものー【挿絵付】

サマヨエル

文字の大きさ
上 下
19 / 50

ー第18話ー

しおりを挟む
「ソリッズ・・・お前らまで何してんだ?昨日も今日も揃いも揃って、俺になんか用か?」



シチュエーションこそ昨日と変わらないが、両者の間には昨日には無かったとても大きな違いがある。



ソリッズたちは目をこれでもかと言うほど大きく見開き口をパクパクさせている。辛うじて脳みその回転が始まったソリッズは、目の前の少年におかしな質問を投げかける。




「お・・・お前、カインか?本当にカインなのか!?」




「はぁ?何言ってんだソリッズ。当たり前だろう。大体お前が俺のことを呼んだんだろうが」




<カイン・・・思い出してみなよ。今の君は髪も服も綺麗さっぱり。僕から見ても別人だよ?>





「あそっか」





(何だ、どうなっているんだ!声は確かにカインだ。背格好も顔も・・・だがまるで違う!声に力がある、態度に自信がある、何よりその目に恐怖が無い!この1日で一体こいつに何が・・・)




彼らが知るカインとは、いつも伏せ目がちで絶対に目を合わせず、歯切れが悪い。


弱く小さくプルプルと震える子犬のようだった。





(もはや別人・・・こんなに流暢に喋るやつだったか?明るいやつだったのか!?)






「何だよ押し黙って。用が無いなら俺は行くぜ。ほら、道を開けろよ」




そういって一向のど真ん中を割って進もうとするカインに対し、その中の一人がカインの肩をつかんで拳を握った!




「てっめぇ、何だその態度!カインの癖に調子に・・・!?」




(遅い・・・すごく遅いな。何で俺は今までこんなやつのパンチが避けられなかったんだろう)





ひどくゆっくりはっきり見えるその拳をすっと躱すと、勢いに乗った少年の体をぐっと押しつつ足払いをする。





「ぐぉ・・・がっ!!」




バランスを崩したその少年は一回転でもしそうな勢いで顔面から地面に激突した。





(あ、やっちゃった。怪我させる気無かったんだけどな・・・)




<さすがに今のは仕方ないと思うよ?というか僕としてはここでボコボコにしてもいいと思うんだ。カインとは記憶も一部共有しているから、こいつらが今まで君にしてきたことは知っている。当事者じゃない僕でさえ殺してやりたいほど腹が立っているよ>




(いや、でもなぁ・・・)




「おいてめぇ、やりやがったなカイン!」




そう吼えるのは他でもない、この集まりの発端でもあるマルスである。


今日のギルドでの出来事といい、カインが見せた態度といい、カインの変わりようを差し引いてもマルスのイライラはピークへ達していた。




「いい度胸じゃねぇかこの野郎。ちょっと小奇麗になったからって調子に乗ってんじゃねぇか?俺に今までやられてきたことを忘れちまったんじゃねぇだろうな。だったら思い出させてやるぜ!うぉら!!!」




腐っても戦士、ジルが言うように職業とスキルランクは本人にある程度恩恵を与えているようで、マルスの拳は先ほどの少年と比べるとその鋭さは増している。





、せいぜいDかEほどのスキルランクでは、SSランクのカインの前では毛ほども役に立たない。それがたとえ戦闘が本職である戦士だとしてもだ。




(駄目だ、マルスこいつみたいな単細胞はちょっと痛い目にあわせないと逆恨みして何度でも同じことを繰り返す。気が進まないけどちょっとだけお灸を添えてやろう)



ぱしんっ!




カインはマルスのパンチを手の平で受ける。いや、正しくは受けるというより触れていなしている。通常であれば力の方向が狂った結果バランスを崩し倒れるものだが、戦士の持つ戦闘センスは一般人の比ではない。



マルスの拳は勢いを殺さず、その腕を振り子にぐるんと体を回転させ回し蹴りへと発展させる。




(いった!クリーンヒットだ!)





マルスの足は確実にカインの顔面を捕捉していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界でのんびり暮らしたい!?

日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?

処理中です...