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ー第16話ー
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道を挟んでレンガ造りの家々が立ち並ぶ中、一際大きく目立つ家があった。
鉄柵が囲う敷地は広く、青く茂る芝生の中央をまっすぐ伸びる玄関への道。その脇には花が植えられている。上品で大きなその家の門を叩く男は、この場所には少々似つかわしくない。
男が待つ中、両開きの大きな玄関のドアを開け姿を見せたのは、オールバックの金髪にブランド物の服を来た少年、ソリッズだった。
彼の家は代々『役人』という継承職を継いで来た家系である。言わずもがなその職業は街や国を管理・運営する職業で、場合によっては法律や税管理など国の根幹にまで携われることもあるエリート中のエリート。生まれた瞬間から勝利を約束された家系なのだ。
もちろんその才能は折り紙つき。しかし腕は確かでも個人の人間性までは適正があるかというとそれはまた別の話である。
特に継承職は約束された勝ち組コースに慢心し、性根が腐りやすい傾向にある。ソリッズはまさにその典型といえるだろう。
「マルス?マルスじゃないか!今日はギルドの初日だったんだろう。僕の鎧はどうだったかい?中で話を聞かせてくれよ」
そして『役人』を持つものは良くも悪くも、周りに対する影響力の大きさというのも特徴だろう。要するに類は友を呼ぶというやつだ。
ソリッズの門を叩いたのは他の誰でもない、クエストから帰ったばかりのマルスであった。家の中へ迎えられたマルスには、土産話とはまた別の目的がある。
「そして現れた魔物を、俺の剣が真っ二つに両断した!もう一匹は爪で襲ってきたんだが、ソリッズの鎧の前には傷一つ付かなかったぜ!一緒に言った先輩たちなんて腰を抜かしちまってよ、まったくしょうがねぇやつらだった」
「はははっ!さすがマルスだ!その調子で武功をあげてくれよ!いずれお前は俺専属の騎士になるんだからな。名は轟かせておくに越したことは無い」
「ところでよ、ソリッズ。話は変わるんだが・・・」
マルスはひとしきり妄想を語り終えたところで本題に入った。
「俺ぁよ、魔物をばったばった切り倒して今ひっじょーに!猛っている!!この熱を冷ますには、発散させないといけないんだよ。分かるよな?そしてこの街には丁度いいサンドバックがある!汚らしくて惨めでボコボコにするとスカッとする最っ高のサンドバックがよぉ!」
マルスの言葉にソリッズも口の端をゆがめてニィっと笑った。
「なるほどな、一理ある。わが騎士の願いを叶えるのも主の務め。であれば致し方ない。カインには友情を行使して貰わないとなぁ」
ひひひっと笑う二人は早速仲間を集め、カインがいつも通るあの裏路地へと集合した。
「それにしても捕まえやすくていいよなぁカインのやつ。家に明かりが無いからこの時間には必ずこの道を通って家へ戻る。家から出なきゃ餓えて死ぬ。可哀想なやつだよなぁ!!」
「でも今日はちょっと遅くねぇか?さすがに昨日の今日だ、警戒して外に出てないんじゃ・・・」
ソリッズの言葉に仲間の一人が異を唱えた。確かにいつもならもう通過していてもおかしくない時間帯だというのに、今日はまだカインの姿を見ていない。
「ふっ、さしあたり俺たちの姿を見て隠れでもしているんだろう。だがこの道を通らなきゃ家へは帰れない。なぁカイン!そうだろう!!隠れてないで出てきたらどうだ!!」
すぐ近くに居ると踏んで大声で呼ぶソリッズ。そしてそれは幸か不幸か、本当にたまたま通りかかったかの待ち人が、ソリッズの声を聞き返事をしたのだ。
「ん?誰か呼んだか?」
「!?」
「来たか!」
ソリッズ以外の少年たちはまさか本当に居るとは思わず、バッと声の聞こえたあの道の角へ視線を集めた。
確かに間違いない、カインの声だ!
だが次の瞬間、現れたその人物に全員が絶句することとなる。
鉄柵が囲う敷地は広く、青く茂る芝生の中央をまっすぐ伸びる玄関への道。その脇には花が植えられている。上品で大きなその家の門を叩く男は、この場所には少々似つかわしくない。
男が待つ中、両開きの大きな玄関のドアを開け姿を見せたのは、オールバックの金髪にブランド物の服を来た少年、ソリッズだった。
彼の家は代々『役人』という継承職を継いで来た家系である。言わずもがなその職業は街や国を管理・運営する職業で、場合によっては法律や税管理など国の根幹にまで携われることもあるエリート中のエリート。生まれた瞬間から勝利を約束された家系なのだ。
もちろんその才能は折り紙つき。しかし腕は確かでも個人の人間性までは適正があるかというとそれはまた別の話である。
特に継承職は約束された勝ち組コースに慢心し、性根が腐りやすい傾向にある。ソリッズはまさにその典型といえるだろう。
「マルス?マルスじゃないか!今日はギルドの初日だったんだろう。僕の鎧はどうだったかい?中で話を聞かせてくれよ」
そして『役人』を持つものは良くも悪くも、周りに対する影響力の大きさというのも特徴だろう。要するに類は友を呼ぶというやつだ。
ソリッズの門を叩いたのは他の誰でもない、クエストから帰ったばかりのマルスであった。家の中へ迎えられたマルスには、土産話とはまた別の目的がある。
「そして現れた魔物を、俺の剣が真っ二つに両断した!もう一匹は爪で襲ってきたんだが、ソリッズの鎧の前には傷一つ付かなかったぜ!一緒に言った先輩たちなんて腰を抜かしちまってよ、まったくしょうがねぇやつらだった」
「はははっ!さすがマルスだ!その調子で武功をあげてくれよ!いずれお前は俺専属の騎士になるんだからな。名は轟かせておくに越したことは無い」
「ところでよ、ソリッズ。話は変わるんだが・・・」
マルスはひとしきり妄想を語り終えたところで本題に入った。
「俺ぁよ、魔物をばったばった切り倒して今ひっじょーに!猛っている!!この熱を冷ますには、発散させないといけないんだよ。分かるよな?そしてこの街には丁度いいサンドバックがある!汚らしくて惨めでボコボコにするとスカッとする最っ高のサンドバックがよぉ!」
マルスの言葉にソリッズも口の端をゆがめてニィっと笑った。
「なるほどな、一理ある。わが騎士の願いを叶えるのも主の務め。であれば致し方ない。カインには友情を行使して貰わないとなぁ」
ひひひっと笑う二人は早速仲間を集め、カインがいつも通るあの裏路地へと集合した。
「それにしても捕まえやすくていいよなぁカインのやつ。家に明かりが無いからこの時間には必ずこの道を通って家へ戻る。家から出なきゃ餓えて死ぬ。可哀想なやつだよなぁ!!」
「でも今日はちょっと遅くねぇか?さすがに昨日の今日だ、警戒して外に出てないんじゃ・・・」
ソリッズの言葉に仲間の一人が異を唱えた。確かにいつもならもう通過していてもおかしくない時間帯だというのに、今日はまだカインの姿を見ていない。
「ふっ、さしあたり俺たちの姿を見て隠れでもしているんだろう。だがこの道を通らなきゃ家へは帰れない。なぁカイン!そうだろう!!隠れてないで出てきたらどうだ!!」
すぐ近くに居ると踏んで大声で呼ぶソリッズ。そしてそれは幸か不幸か、本当にたまたま通りかかったかの待ち人が、ソリッズの声を聞き返事をしたのだ。
「ん?誰か呼んだか?」
「!?」
「来たか!」
ソリッズ以外の少年たちはまさか本当に居るとは思わず、バッと声の聞こえたあの道の角へ視線を集めた。
確かに間違いない、カインの声だ!
だが次の瞬間、現れたその人物に全員が絶句することとなる。
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