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ー第13話ー
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「うぉおお・・・すげぇ・・」
家の玄関の扉を開けたはずのカインだったが、その先はなんとまた家の中だった。
全体がこげ茶の木目が映える木造のこの家は、俗にいうログハウスというやつが一番近いかもしれない。
目の前に広がるリビングは天井が高く、2階建てのこの家の吹き抜けになっているのだろう。天窓からあふれる木漏れ日は、明かりのついていないこの家でも十分すぎるほど暖かな光で包んでいた。
床にはふかふかのカーペットが敷かれ、中央には立派な木造のテーブルと椅子。その奥には暖炉にソファまであるではないか。
はじめてみる立派な内装の家にテンションが上がったカインは部屋の中を駆け巡る。
1階には先ほどのテーブルや椅子、ソファなどが置いてあるリビングとキッチン、お風呂場と部屋が2つ。それにトイレがあった。
二階にはベッドと簡易な机、テーブルが置かれた部屋が3つ。書斎が一つになんとまたトイレがある。
どの部屋にも高価そうなカーペットや明かり、本棚にはたくさん本が並べられており、窓がついている。
ジルの言ったとおり、まったく別の場所につながっているようで、窓の外は木々が折り重なる森のようだった。
ためしにお風呂場で蛇口をひねってみると、カインがこれまで見たことが無いような綺麗な水が流れ出てくる。このすばらしい家にカインは興奮を隠せなかった。
「すごいぞジル!水が出る!それにソファはふかふかだし明かりがつくぞ!なんて素敵な家だ!!」
<ふふっ!気に入ったみたいだね!!>
なぜか自慢げに話すジル。
<ここは鍵師たちが使っていた別荘、隠れ家のようなものさ。水は自然の湧き水を空間接続して引いてある。ガスも離れた街からちょろまかしてるんだ。そしてこれはもう君のもの。好きに使っていいよ>
「お・・おぉおおおお!」
地獄のような生活から一転、突然与えられたこの住まいはその辺の役人よりよっぽどすばらしい家だった。そのあまりの差にカインの語威力は一瞬で衰え、歓喜の叫びを上げるほかこの喜びを表現するすべは無かった。
<とりあえず風呂に入りなよ?服はクローゼットにいっぱいあるから。あと髪も切ったらいい。そんなに長いと前が見えないだろう?>
言われるがまま、カインは風呂場へと向かう。せっかくならと湯船にお湯を張り、数ヶ月ぶりの風呂に浸かった。
「うわぁ最高!そういえばお風呂ってこんな感じだったなぁ!天国かよ!」
<す、すごい台詞だね・・・>
(あぁ・・・本当に天国みたいだ。実はあの時死んじゃってたりしてな)
カインはかつての地獄の日々を振り返る。常に空腹で倒れそうになりながら靴を磨き、罵倒を浴びせられ、殴られ、Eランクの職業だからという理由だけで不当な扱いを受け続けていた。
明日のことなど考えてられない。今を生き延びるだけで精一杯だったあの日々から、今の状況を誰が想像しただろうか。
<・・・カイン、泣いているのかい?>
「!?」
ジルにそう言われ、初めて自分の頬を涙が伝っていることに気づいたカイン。湯船のお湯を顔に浴びせ目を手の甲でこすった。
「ははっ・・・わりぃ。ほら、あの地獄の日々を振り返ってさ。今その瞬間生きるだけでも必死だった俺が、ここでの生活とかこれから始まる冒険のこととか、受け継いだ力を使ってみたいとかって、これからのことを考えてるんだぜ?ようやく死ぬかもって考えなくていいと思ったら、なんかホッとしたって言うか・・・あぁ、よくわかんないや」
<カイン・・・>
水滴が一つ、湯船の水面に波紋を作った。
家の玄関の扉を開けたはずのカインだったが、その先はなんとまた家の中だった。
全体がこげ茶の木目が映える木造のこの家は、俗にいうログハウスというやつが一番近いかもしれない。
目の前に広がるリビングは天井が高く、2階建てのこの家の吹き抜けになっているのだろう。天窓からあふれる木漏れ日は、明かりのついていないこの家でも十分すぎるほど暖かな光で包んでいた。
床にはふかふかのカーペットが敷かれ、中央には立派な木造のテーブルと椅子。その奥には暖炉にソファまであるではないか。
はじめてみる立派な内装の家にテンションが上がったカインは部屋の中を駆け巡る。
1階には先ほどのテーブルや椅子、ソファなどが置いてあるリビングとキッチン、お風呂場と部屋が2つ。それにトイレがあった。
二階にはベッドと簡易な机、テーブルが置かれた部屋が3つ。書斎が一つになんとまたトイレがある。
どの部屋にも高価そうなカーペットや明かり、本棚にはたくさん本が並べられており、窓がついている。
ジルの言ったとおり、まったく別の場所につながっているようで、窓の外は木々が折り重なる森のようだった。
ためしにお風呂場で蛇口をひねってみると、カインがこれまで見たことが無いような綺麗な水が流れ出てくる。このすばらしい家にカインは興奮を隠せなかった。
「すごいぞジル!水が出る!それにソファはふかふかだし明かりがつくぞ!なんて素敵な家だ!!」
<ふふっ!気に入ったみたいだね!!>
なぜか自慢げに話すジル。
<ここは鍵師たちが使っていた別荘、隠れ家のようなものさ。水は自然の湧き水を空間接続して引いてある。ガスも離れた街からちょろまかしてるんだ。そしてこれはもう君のもの。好きに使っていいよ>
「お・・おぉおおおお!」
地獄のような生活から一転、突然与えられたこの住まいはその辺の役人よりよっぽどすばらしい家だった。そのあまりの差にカインの語威力は一瞬で衰え、歓喜の叫びを上げるほかこの喜びを表現するすべは無かった。
<とりあえず風呂に入りなよ?服はクローゼットにいっぱいあるから。あと髪も切ったらいい。そんなに長いと前が見えないだろう?>
言われるがまま、カインは風呂場へと向かう。せっかくならと湯船にお湯を張り、数ヶ月ぶりの風呂に浸かった。
「うわぁ最高!そういえばお風呂ってこんな感じだったなぁ!天国かよ!」
<す、すごい台詞だね・・・>
(あぁ・・・本当に天国みたいだ。実はあの時死んじゃってたりしてな)
カインはかつての地獄の日々を振り返る。常に空腹で倒れそうになりながら靴を磨き、罵倒を浴びせられ、殴られ、Eランクの職業だからという理由だけで不当な扱いを受け続けていた。
明日のことなど考えてられない。今を生き延びるだけで精一杯だったあの日々から、今の状況を誰が想像しただろうか。
<・・・カイン、泣いているのかい?>
「!?」
ジルにそう言われ、初めて自分の頬を涙が伝っていることに気づいたカイン。湯船のお湯を顔に浴びせ目を手の甲でこすった。
「ははっ・・・わりぃ。ほら、あの地獄の日々を振り返ってさ。今その瞬間生きるだけでも必死だった俺が、ここでの生活とかこれから始まる冒険のこととか、受け継いだ力を使ってみたいとかって、これからのことを考えてるんだぜ?ようやく死ぬかもって考えなくていいと思ったら、なんかホッとしたって言うか・・・あぁ、よくわかんないや」
<カイン・・・>
水滴が一つ、湯船の水面に波紋を作った。
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