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ー第11話ー

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「・・・・・はっ!」



カインが再び意識を取り戻したときには、あの不思議な書斎ではなくいつもの見慣れた自分の家へと戻っていた。




Eランクの自分が、あまりの渇望ゆえ見た夢。そう思えるくらいに衝撃と歓喜の連続で、まだ夢だったんじゃないかとさえ疑ってしまう。



しかし自分の体を染め上げる大量の血痕を、まだ生きてる自分が無傷で見ているこの現実。そして何より右手に握られていたが、すべて夢ではなかったことを物語っていた。




(本当なんだ。自分が5代目の鍵師だってことも。これから待つ冒険のことも・・・)




カインはついさっきまでの出来事を振り返る。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「今机に広げている鍵は、歴代鍵師が回収した初代の力の結晶さ。つまり君に引き継がれた君が現状使える能力。空間施錠、契約された扉同士の接続権を持った鍵が幾つか・・・。後は数ある召門術式の一つ、『七星魔道宮しちせいまどうきゅうの門』の暗月の扉を開ける鍵だ。これでもまだまだ回収し切れていない。能力については後日練習もかねて説明するよ」


あとはこれも、と男の子は鍵を一本差し出した。



「これはインヘリット・ルームにつながる鍵。どんな扉の鍵穴にも刺さり、これで開けた扉はこの部屋へつながっている。まぁいつでも来てくれて構わないよ」




このまま一度別れる雰囲気を察して、カインはいったん待ったを掛ける。




「ちょっと待ってくれ、後一個説明していないことがあるだろう?君は何者なんだ」





「おっといけない!」





見るからにやっちまったという顔だ。あれほど説明するといっていたくせに完全に忘れていたらしい。





「なんとなく察しが着いてるだろう?僕はこの部屋の管理人さ。初代の残した鍵はたくさんあるから、実際に使おうと思うと探して持ち出して、というのが結構大変なんだ。まぁやって見ればわかるよ。そんなわけで僕がいつでもこの部屋に居て、ほしい時にほしい鍵を君に渡す。検索ツールとでも思ってくれ。後は・・・案内人って所かな」





「へぇ。なるほどね。それで?なんて呼べばいいんだ?」





「んー、鍵師という職業が受け継がれるたびに僕が生まれるから、出来立てほやほやの僕には名前が無いんだ。5代目のカイン、君が僕に名前をつけてくれないか?」




「え、俺!?名前・・・名前ねぇ・・・」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『うわっ!何このにおい!』



『あはは!これはバジルさ。この匂いにはリラックス効果があって、料理にも使えるんだって。好きで育ててるんだよ』







『王様って意味なんだって!』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ふと脳裏にフラッシュバックしたのは、授与式以前の、道を違える前の親友とのやり取りだった。





「ジル・・・・決めた。お前をジルと名づけよう」





「ほぅ、いいね。気に入ったよ!」




ジルはその小さな手をカインの前へと差し出した。



「先代より受け継いだこの財産、この存在を持って全霊で管理しよう。よろしく相棒!」
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