12 / 50
ー第11話ー
しおりを挟む
「・・・・・はっ!」
カインが再び意識を取り戻したときには、あの不思議な書斎ではなくいつもの見慣れた自分の家へと戻っていた。
Eランクの自分が、あまりの渇望ゆえ見た夢。そう思えるくらいに衝撃と歓喜の連続で、まだ夢だったんじゃないかとさえ疑ってしまう。
しかし自分の体を染め上げる大量の血痕を、まだ生きてる自分が無傷で見ているこの現実。そして何より右手に握られていた鍵が、すべて夢ではなかったことを物語っていた。
(本当なんだ。自分が5代目の鍵師だってことも。これから待つ冒険のことも・・・)
カインはついさっきまでの出来事を振り返る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今机に広げている鍵は、歴代鍵師が回収した初代の力の結晶さ。つまり君に引き継がれた君が現状使える能力。空間施錠、契約された扉同士の接続権を持った鍵が幾つか・・・。後は数ある召門術式の一つ、『七星魔道宮の門』の暗月の扉を開ける鍵だ。これでもまだまだ回収し切れていない。能力については後日練習もかねて説明するよ」
あとはこれも、と男の子は鍵を一本差し出した。
「これはインヘリット・ルームにつながる鍵。どんな扉の鍵穴にも刺さり、これで開けた扉はこの部屋へつながっている。まぁいつでも来てくれて構わないよ」
このまま一度別れる雰囲気を察して、カインはいったん待ったを掛ける。
「ちょっと待ってくれ、後一個説明していないことがあるだろう?君は何者なんだ」
「おっといけない!」
見るからにやっちまったという顔だ。あれほど説明するといっていたくせに完全に忘れていたらしい。
「なんとなく察しが着いてるだろう?僕はこの部屋の管理人さ。初代の残した鍵はたくさんあるから、実際に使おうと思うと探して持ち出して、というのが結構大変なんだ。まぁやって見ればわかるよ。そんなわけで僕がいつでもこの部屋に居て、ほしい時にほしい鍵を君に渡す。検索ツールとでも思ってくれ。後は・・・案内人って所かな」
「へぇ。なるほどね。それで?なんて呼べばいいんだ?」
「んー、鍵師という職業が受け継がれるたびに僕が生まれるから、出来立てほやほやの僕には名前が無いんだ。5代目のカイン、君が僕に名前をつけてくれないか?」
「え、俺!?名前・・・名前ねぇ・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『うわっ!何このにおい!』
『あはは!これはバジルさ。この匂いにはリラックス効果があって、料理にも使えるんだって。好きで育ててるんだよ』
『王様って意味なんだって!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ふと脳裏にフラッシュバックしたのは、授与式以前の、道を違える前の親友とのやり取りだった。
「ジル・・・・決めた。お前をジルと名づけよう」
「ほぅ、いいね。気に入ったよ!」
ジルはその小さな手をカインの前へと差し出した。
「先代より受け継いだこの財産、この存在を持って全霊で管理しよう。よろしく相棒!」
カインが再び意識を取り戻したときには、あの不思議な書斎ではなくいつもの見慣れた自分の家へと戻っていた。
Eランクの自分が、あまりの渇望ゆえ見た夢。そう思えるくらいに衝撃と歓喜の連続で、まだ夢だったんじゃないかとさえ疑ってしまう。
しかし自分の体を染め上げる大量の血痕を、まだ生きてる自分が無傷で見ているこの現実。そして何より右手に握られていた鍵が、すべて夢ではなかったことを物語っていた。
(本当なんだ。自分が5代目の鍵師だってことも。これから待つ冒険のことも・・・)
カインはついさっきまでの出来事を振り返る。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今机に広げている鍵は、歴代鍵師が回収した初代の力の結晶さ。つまり君に引き継がれた君が現状使える能力。空間施錠、契約された扉同士の接続権を持った鍵が幾つか・・・。後は数ある召門術式の一つ、『七星魔道宮の門』の暗月の扉を開ける鍵だ。これでもまだまだ回収し切れていない。能力については後日練習もかねて説明するよ」
あとはこれも、と男の子は鍵を一本差し出した。
「これはインヘリット・ルームにつながる鍵。どんな扉の鍵穴にも刺さり、これで開けた扉はこの部屋へつながっている。まぁいつでも来てくれて構わないよ」
このまま一度別れる雰囲気を察して、カインはいったん待ったを掛ける。
「ちょっと待ってくれ、後一個説明していないことがあるだろう?君は何者なんだ」
「おっといけない!」
見るからにやっちまったという顔だ。あれほど説明するといっていたくせに完全に忘れていたらしい。
「なんとなく察しが着いてるだろう?僕はこの部屋の管理人さ。初代の残した鍵はたくさんあるから、実際に使おうと思うと探して持ち出して、というのが結構大変なんだ。まぁやって見ればわかるよ。そんなわけで僕がいつでもこの部屋に居て、ほしい時にほしい鍵を君に渡す。検索ツールとでも思ってくれ。後は・・・案内人って所かな」
「へぇ。なるほどね。それで?なんて呼べばいいんだ?」
「んー、鍵師という職業が受け継がれるたびに僕が生まれるから、出来立てほやほやの僕には名前が無いんだ。5代目のカイン、君が僕に名前をつけてくれないか?」
「え、俺!?名前・・・名前ねぇ・・・」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『うわっ!何このにおい!』
『あはは!これはバジルさ。この匂いにはリラックス効果があって、料理にも使えるんだって。好きで育ててるんだよ』
『王様って意味なんだって!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ふと脳裏にフラッシュバックしたのは、授与式以前の、道を違える前の親友とのやり取りだった。
「ジル・・・・決めた。お前をジルと名づけよう」
「ほぅ、いいね。気に入ったよ!」
ジルはその小さな手をカインの前へと差し出した。
「先代より受け継いだこの財産、この存在を持って全霊で管理しよう。よろしく相棒!」
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件
後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。
転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。
それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。
これから零はどうなってしまうのか........。
お気に入り・感想等よろしくお願いします!!
間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜
舞桜
ファンタジー
初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎
って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!
何故こうなった…
突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、
手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、
だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎
転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?
そして死亡する原因には不可解な点が…
様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、
目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“
そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪
*神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw)
*投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい
*この作品は“小説家になろう“にも掲載しています
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる