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ー第7話ー
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(死んでない・・だって?)
「そんな馬鹿な!だってあの時確実に!」
「そう、確実に内臓は破裂しズタボロにされていたよ。まったくひどい有様だった。あの状態では日をまたぐ前に死んでいたね」
「じゃあ何で・・・」
「はい静かに!」
男の子は人差し指を口の前に立て、しーっと子供をあやすようにカインの言葉を切った。
「あのままじゃ死んでいたけど、君死ぬ前にキーボックスを開けたろ?」
「・・・・・・」
(開けた・・・開けたはずだ。意識が朦朧としていたからあまり鮮明に覚えていないけど、手の感触とあの音。中身は見ていなかったけど・・・)
「あれが功を奏したわけさ。あ、まだピンと来てないね?」
指をあごに沿えうーんとうなるカイン。その様子でまだ順を追う必要があると判断した男の子は続けて説明する。
「スキルランクってあるだろ?ジョブランクとは別に、その職業の熟練度を表すランク」
「え?あ、あぁ・・・」
スキルランク。
ジョブランクと同じくアルファベットでランクがつけられ、自身の職業がどれほど熟練しているかを表すランクであり、こちらは国が定める…というより職神ジョブ=ニゴラウスにより告げられるランクである。
職人は1年定期で職神の教会にて『職木神鑑の儀』というものを受けることが義務付けられており、植えつけられた職の芽の成長具合で職神が熟練度を推し量り当人に告げるというものだ。
当然スキルランクが高いほど、その技術は保障されるので、スキルランクは自分のステータスに直結している。用心棒を雇うにしても商人からものを買うにしても、選ぶ基準としてスキルランクは重要な要素である。当然高い技術を持ったものから供給されるものは高い値がつく。技術を金で買うという単純明快なシステムは、この世界の基本ともいえる。
「実はスキルランクってのはただ技術が保障されるだけじゃない。本人のレベルにも直結しているのさ。平たく言えば職業能力と身体パラメータの上昇という恩恵が無条件で得られるんだよ」
「パラメータ・・・レベル?何を言っているのかさっぱりだ」
混乱するカインに対し、男の子は仕方ない、とさらに噛み砕いて説明する。
「たとえばだよ?格闘家の職を持つ男が筋トレして、今まで持ち上げられなかった岩を持ち上げることができたとする。最初の状態の筋力を数字で表したら5。岩を持ち上げるために必要な筋力が20だとする」
「筋トレで上乗せされるのはせいぜい5としよう。これじゃ岩は持ち上がらないわけだが、ここでスキルランクもといレベルがものを言う」
「筋肉を使う職業である以上同時に熟練度もあがっているんだ。別の人間が同じように筋トレすれば、格闘家と同じだけ5筋力が上がるけど、熟練度も同時にあがる格闘家はその恩恵として全体的な身体能力の上昇と、格闘家としてのレベルが上がっている。その分を合計したら筋力が20になる。おっけー?」
「・・・・・えーっと」
「職人の技術を上げると実は人間としてもパワーアップしてるってこと?」
「うん、そういうこと!」
「えぇ・・・そうなの?」
カインは半信半疑でそう聞き返す。何せそんな話は聞いたことがない。確かにスキルランクの高い剣士なんかは、その身体能力もすごいけど、それって修練を積んだ結果熟練度もあがったし能力も上がったわけで、不思議に思ったことなど一度もなかった。
「さて、話を戻そう。カイン、君が開錠したキーボックスこそ熟練度を飛躍的に上げるためのアイテムであり、鍵師の正当後継者になるための試練でもあるんだ」
男の子はごそごそと体をまさぐり何かを取り出した。机の上へ音を立て現れたそれは、まさしくカインが開けたキーボックスに他ならなかった。
そしてその箱の鍵ははずれ、ふたが開けられていた。
「そんな馬鹿な!だってあの時確実に!」
「そう、確実に内臓は破裂しズタボロにされていたよ。まったくひどい有様だった。あの状態では日をまたぐ前に死んでいたね」
「じゃあ何で・・・」
「はい静かに!」
男の子は人差し指を口の前に立て、しーっと子供をあやすようにカインの言葉を切った。
「あのままじゃ死んでいたけど、君死ぬ前にキーボックスを開けたろ?」
「・・・・・・」
(開けた・・・開けたはずだ。意識が朦朧としていたからあまり鮮明に覚えていないけど、手の感触とあの音。中身は見ていなかったけど・・・)
「あれが功を奏したわけさ。あ、まだピンと来てないね?」
指をあごに沿えうーんとうなるカイン。その様子でまだ順を追う必要があると判断した男の子は続けて説明する。
「スキルランクってあるだろ?ジョブランクとは別に、その職業の熟練度を表すランク」
「え?あ、あぁ・・・」
スキルランク。
ジョブランクと同じくアルファベットでランクがつけられ、自身の職業がどれほど熟練しているかを表すランクであり、こちらは国が定める…というより職神ジョブ=ニゴラウスにより告げられるランクである。
職人は1年定期で職神の教会にて『職木神鑑の儀』というものを受けることが義務付けられており、植えつけられた職の芽の成長具合で職神が熟練度を推し量り当人に告げるというものだ。
当然スキルランクが高いほど、その技術は保障されるので、スキルランクは自分のステータスに直結している。用心棒を雇うにしても商人からものを買うにしても、選ぶ基準としてスキルランクは重要な要素である。当然高い技術を持ったものから供給されるものは高い値がつく。技術を金で買うという単純明快なシステムは、この世界の基本ともいえる。
「実はスキルランクってのはただ技術が保障されるだけじゃない。本人のレベルにも直結しているのさ。平たく言えば職業能力と身体パラメータの上昇という恩恵が無条件で得られるんだよ」
「パラメータ・・・レベル?何を言っているのかさっぱりだ」
混乱するカインに対し、男の子は仕方ない、とさらに噛み砕いて説明する。
「たとえばだよ?格闘家の職を持つ男が筋トレして、今まで持ち上げられなかった岩を持ち上げることができたとする。最初の状態の筋力を数字で表したら5。岩を持ち上げるために必要な筋力が20だとする」
「筋トレで上乗せされるのはせいぜい5としよう。これじゃ岩は持ち上がらないわけだが、ここでスキルランクもといレベルがものを言う」
「筋肉を使う職業である以上同時に熟練度もあがっているんだ。別の人間が同じように筋トレすれば、格闘家と同じだけ5筋力が上がるけど、熟練度も同時にあがる格闘家はその恩恵として全体的な身体能力の上昇と、格闘家としてのレベルが上がっている。その分を合計したら筋力が20になる。おっけー?」
「・・・・・えーっと」
「職人の技術を上げると実は人間としてもパワーアップしてるってこと?」
「うん、そういうこと!」
「えぇ・・・そうなの?」
カインは半信半疑でそう聞き返す。何せそんな話は聞いたことがない。確かにスキルランクの高い剣士なんかは、その身体能力もすごいけど、それって修練を積んだ結果熟練度もあがったし能力も上がったわけで、不思議に思ったことなど一度もなかった。
「さて、話を戻そう。カイン、君が開錠したキーボックスこそ熟練度を飛躍的に上げるためのアイテムであり、鍵師の正当後継者になるための試練でもあるんだ」
男の子はごそごそと体をまさぐり何かを取り出した。机の上へ音を立て現れたそれは、まさしくカインが開けたキーボックスに他ならなかった。
そしてその箱の鍵ははずれ、ふたが開けられていた。
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