堕ちる

はる

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崩壊

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あれ以来、少年は春と距離を置く様になった。無情にも春への嫌がらせはパッタリと無くなり、春は再び平穏な日々を過ごした。春は部活の部長となり、更に歌にのめり込んでいた。

そんなある日の出来事。
春は教師に携帯のメールで呼び出され、休日の校舎に入った。部活のことで休日も登校する事は珍しくなかった。教師の試験作成の手伝いをする時は、決まって生徒の少ない日と時間だった。この日もいつもと同じように頼まれ事があるのだと思っていた。
春は校舎に入るとすぐに音楽準備室…つまり教師専用の部屋へと向かった。入るとすぐに、いつものように楽譜の製本を頼まれた。春と教師はポツポツを言葉を交わしながらお互いの作業を進めた。
教師はふと顔を上げて春に言った。
「ちょっと付いてきて。」
教師は準備室からすぐ近いトイレの前まで行くと、
「ちょっと待ってて。」
と、トイレの中に入っていった。春はトイレの前で待っていると、すぐに教師は出てきて、春の腕を掴んだ。
「来て。」
首を傾げる春を、教師はトイレに連れ込み、個室に入れて鍵を後ろ手で締めた。
目を見開く春の口を教師はそっと抑えた。
「声を出しちゃダメだよ。生まれた時の姿になって。」
「え?」
戸惑う春に、教師は恐ろしい程の笑顔を向けた。
「こんな所に女の子が入るなんて、本当に変態だね。手伝ってあげよう。」
やや抵抗する春の服を、教師は無理やり脱がし始めた。春が恐怖で声を出そうとすると、教師は春をじっと睨んだ。
「誰かに聞かれたら、君の噂はもっと広がって、学校にいられなくなるよ。僕じゃない。君が僕を誘ったんだよ。」
春は呆然とし、教師はそんな春を見て嬉しそうに笑いながら服を脱がした。
あらかた服を脱がせると、教師は春の肌に触らず、上から下まで舐め回すようにその身体に魅入った。
春の頭の中に幼い頃の記憶が突然蘇った。忘れかけていた恐怖が一気に溢れ出し、春は現実と過去を錯覚し、死を垣間見た。
ーー抵抗したら殺されるーー
言葉にならない叫びは春の全身を駆け巡り、現実から目を背け、春の記憶はそこで途絶えた。
気がつくと、春は服を来て、トイレから出ていた。ただ、全身がじっとりと汗をかいている事しかわからない。その場に既に教師はもういなかった。
春は逃げるように校舎から出た。その後、どうやって何時に帰ったのか、春の記憶には、中学校の裏山から家々の夜景を見下ろした事しか残っていなかった。まるで向こう岸とこちらの様に、木々が家々の明かりと春を隔てていた。
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