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第一章
第六話
しおりを挟む「検査はどうだったー? ナンちゃん。」
廊下を歩いていると、目の前に桜が現れた。
「まあ、大丈夫だったよ。」
「あー。あの人は見かけと違って残酷だからねえ。人の心を理解していないっていうか。」
また、謎なことを言い出す。でも、図星だった。
「おいおい。なんてことを言うんだい。」
「げげげ。じゃあね!梨花ちゃん!」
そういうと、桜は慌ただしく逃げていった。
「まったく、桜は。えーと、では梨花さん。」
「はい!」
緊張が高じて変な声になってしまった。
「特に異常はなかったので、これで退院となります。」
「はい、ありがとうございました。」
これでこの生活も終わり、いつものスラム生活に戻ることになる。
「ところでですが、梨花さん。親っていますか?」
「え?」
驚きのあまり、素っ頓狂な声を出す。
「いえ、すみません。ただ、あまりに気になったもので。このあと、親御さんにきてもらって書類を申請してもらう必要があるのですが、いらっしゃらなければ代理が必要ですので。」
「い、います。」
親などいない。とっくに捨てられている。多分どこかにいるだろう。でも、私が近づいたら殺されるかもしれない。だからって、この人のお世話になるわけにはいかない気がする。
「そうですか。では、あとは親御さんとのお話になりますので、好きなタイミングでお帰りください。」
「はい。」
私は嘘をついた。小さな嘘だ。もしかしたら、嘘をついてはダメだったかもしれない。もう、手遅れだ。
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