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1. side 町田
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「まぁいいや、6年ぶりだぜ?飲みに行こうよ」「え…」「なんか用事?急いでるみたいだし。あ、もしかして結婚したとか?」「結婚なんて…いまは恋人もいないよ」「そっか、じゃとにかく駅まで」遼が歩き出す。僕は下を向いてついていく。前を向いてしまったら、背中に縋り付いてしまう。僕に遼を刻み込んでくれと懇願してしまう。「実家暮らし?」「ううん、アパート借りてる。僕のいない生活に慣れてしまったから帰ってこられても困るって」「…あのとき…なんで志望校変えたんだよ」遼と同じにしたくなかったからだよ、と正直に答えたら遼はどう思うだろう。僕は無言を返した。
この駅から遼の家は僕のアパートと反対方向だったはずだ。「じゃここで」そうだ、これでいい。久しぶりに会ったから少し話をした、これが僕たちの適正な距離。「俺もそっちだから」「え?」「俺も社会人になって一人暮らし始めたんだ」帰宅ラッシュの車内で適正な距離を保つことは容易ではない。背の低い僕を守るように立つ遼の胸に飛び込んでしまわないよう、両足に力を込めた。
今度こそ「僕、ここだから」「マジ?俺もだよ」…勘弁して。早く遼のいないところに行かなくちゃ、僕は本当にどうにかなってしまう。入ったばかりの会社を辞めることになるかもしれない。…いや、辞めてしまえばいいのか。そうすれば遼に会わずに済む。あの街に戻ればいいのだ。
遼に掴まれた腕を振り払おうとは思わなかった。どうせ辞めるのなら想いを遂げてしまえばいいのだ。迷うことなどなかった。
この駅から遼の家は僕のアパートと反対方向だったはずだ。「じゃここで」そうだ、これでいい。久しぶりに会ったから少し話をした、これが僕たちの適正な距離。「俺もそっちだから」「え?」「俺も社会人になって一人暮らし始めたんだ」帰宅ラッシュの車内で適正な距離を保つことは容易ではない。背の低い僕を守るように立つ遼の胸に飛び込んでしまわないよう、両足に力を込めた。
今度こそ「僕、ここだから」「マジ?俺もだよ」…勘弁して。早く遼のいないところに行かなくちゃ、僕は本当にどうにかなってしまう。入ったばかりの会社を辞めることになるかもしれない。…いや、辞めてしまえばいいのか。そうすれば遼に会わずに済む。あの街に戻ればいいのだ。
遼に掴まれた腕を振り払おうとは思わなかった。どうせ辞めるのなら想いを遂げてしまえばいいのだ。迷うことなどなかった。
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