先生と俺

春夏

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side 幸久

「のど渇いとるやろ。これ飲んどけ」先生はそう言って俺にペットボトルを渡した。勢いよく傾けすぎて、飲み込めなかった水が溢れる。先生は後部座席のドアを開けて「乗って。これで拭いとけ」と俺にタオルを渡してドアを閉めた。あれ…?なんかこんなこと前にもあったような…ぼんやりした俺の頭はその続きを考えることができなかった。

喉がカラカラで、お礼も言わずに車を降りる。冷蔵庫を開けて水をがぶ飲み。あ、これ先生のタオル…持ってきちゃった。「幸久を頼んます」返そうと玄関に戻りかけた俺に先生の声とドアが閉まる音が聞こえた。

先生が父さんに俺のこと頼むなんておかしくね?またわからないことが増えていく。けど今はそれどころじゃない。「父さん、俺もう寝る。夏風邪かな、怠くって」「…幸久、話がある」「それ、今じゃなきゃだめ?俺、寝たいんだけど」「だめだ。座りなさい」父さんの珍しい厳しい声に、俺は仕方なく椅子にこしかけた。

「幸久、それは夏風邪じゃないんだ」「どういうこと?俺、疲れてるだけ?」「そうじゃない。それは…ヒートなんだよ。オメガのヒートなんだ」「は?冗談ならやめてくれよ。寝るって言ってるだろ」「幸久は中3の夏にオメガに転性したんだよ」は?俺がオメガ?そんなバカな。だって俺、検査でアルファだって言われたじゃん。「…なにそれ…」「それから1年半くらいしてからかな、幸久にもヒートがくるようになった」「…ホントのことなのかよ…じゃ俺、薬とか飲んでたってこと?」父さんは首を振った。

「幸久に薬は必要なかった。幸久のヒートは1人にしか効かないんだ。誰彼構わず惑わしていたわけじゃない」そんなことで安心できるわけがない。けど襲われたりしたことはないってことかな…それならいいけど。でも!「1人って…なんでだよ!」

「それを思い出さなきゃ」ガタガタと震える俺を子どもの頃のように抱きしめた父さんが言った。

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