Promised Happiness

9. リアルの出会い

9-4 ２人きり

「あ、これ美味しい」ランチセットについてきた茶碗蒸し。「出汁がきいとるな」「茶碗蒸しも作れる？」「ん」「すごい！なんでもできるじゃん。僕はまだ簡単なものしか作れないんだよね。プロハピでご飯食べるでしょ？リアルに戻ると、食べなくてもいいかな、って気になっちゃう」「わかるわ…メシが美味いんよな」「マールが作ってくれてるんじゃん」「…次は、こっちでも食わしたる」お互い照れてしまって、２人は食事に集中した。

混み合ってきた店内。食後のコーヒーが届く。「あんまり長居してたら悪いよね」「けどまだ帰るには早すぎるやろ。気兼ねなく話せるとこないやろか」「んー…あ！カラオケは？」「あ！せや、個室やし２人っきりでいくらでも話せるやんか」「探してみるね」…２人きり…話すだけで終われるやろか、海未の理性が試されている。

結局のところ、話すだけでは終われなかった。２人の間はいつの間にか近づいて、どちらからともなく指が絡まる。「その服、よう似合うとる」シンプルな黒のシャツに細身のパンツ。腰に巻かれるアシンメトリーの巻きスカート。「…僕の服の趣味は地元じゃ受け入れてもらえなくて。今は思う存分着られるからさ。僕だってジーンズのときもあればジャケットにチノパンの時だってあるよ」「どんな服かて似合うやろ」「別に女の子になりたいわけじゃない。可愛い服も好きなだけ」「いろんな理久に会いたいわ」「…嫌じゃない？」「嫌なわけないやろ。理久が好きや。やっぱりリアルでも好きのままや」「僕も海未が好き。マールも海未も、全部大好き」海未から、理久から。キスが３度往復した時、退出のコールが鳴った。