確率は100

11. いざアインネートへ

ぼんやり

ようやくヒカリが動けるようになったのは、朝昼食が昼食になるころやった。「ごゆっくりお休みになれましたか」クランさんに聞かれて困ったように俺を見る。「おかげさんでな。今日もゆっくりさせてもらうわ」と受ける。「ではまた夕食の際に。洗濯等お預かり致しましょうか」ヒカリがまた燃えとる。「大丈夫や、ヒカリ、庭の散歩でもしよか」と外に連れ出す。

「庭じゃないじゃん。これは公園」「せやなぁ。ほら、あそこが俺たちの部屋」バスルームのガラス窓。「…見えちゃうじゃん…」「誰もここまで来ぉへんよ。せやから夜また一緒に入ろな」「シキくんすぐヤラしいことするもん！」俺の手をブンブン振って恥ずかしがっとる。夜のヒカリはエロ可愛ええけど昼のヒカリはホンマに天使。

「シキくんはさ、向こうでもお散歩とかした？」「散歩…あんましたことないかもしれんな。休みはだいたい寝とったし…遊ぶのは」と言いかけて、口をつぐむ。オトコひっかける飲み屋、なんて言えるわけないやろ！「…ヒカリはどやった？」「え？俺？俺はしょっちゅうしてた！」良かった、気ぃついてへん。「俺んちの近くに大きい公園があってね、俺、ぼーっとしながら歩くの大好き」確かにヒカリはぼんやりしとることが多い。さすがに旅の道中ではヒカリなりに周囲に気を配っとるようやけど、街中なんか俺が手を引いてやらんとフラフラどこかに行ってまう。家の中でも静かにぼーっ。２人で暮らし始めたころはその静けさが怖かった。俺のこと好きやない？俺と居っても楽しない？ぼんやりするヒカリを不安とともにただ見つめとったんよ。そんなある日、「俺、ついぼーっとしちゃうの…向こうでも変な奴って笑われてた。だから、シキくんにも嫌われるかも…」抱かれたあとの気怠さを残したままのヒカリに言われた時は安心して、嬉しゅうてついもういっぺんシてもうた。嫌いになんてなるわけがない。