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11. いざアインネートへ
伝えたい
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「ヒカリ、朝やで。朝飯食うたら祭に行くんやろ」おはようのキスで起こされた。「…ん…そうだ!お祭り!」フハハ、おはよ、ともう1度キスをもらって朝からすごくいい気分。おじいさんとシキくんはもう今日の収穫を澄ませたんだって。「…俺だけ寝てた…ごめんなさい」「かまうものか。夜に大仕事があるんだろう?昼間は楽しんでおいで」と送り出される。
村はお祭り一色。あちこちに旗がひらめき、屋台からは声をかけられる。「リュー?久しぶり!来てたのかい」村唯一の食堂のおばさん。「まぁ、可愛い子連れちゃって!」あらあら赤くなっちゃってー、なんて揶揄われて「可愛ええやろ。やらんぞ」なんて応えるからますます恥ずかしい。野菜たっぷりのバーガーを買って並んで座る。「シキくん、どこに行っても知り合いがいるんだね」…あ、こんなのよくない…「ヤキモチか?まったくいつもいつも。なしてこんなに可愛ええかね」思わずシキくんを見上げる。「ん?」「俺…すぐヤキモチ…ごめんね」「何を言うとる。俺を独り占めしたいんやろ。嬉しいやん」「…俺、直さなくてもいい?」「あたりまえやろ」そか。いいのか。俺が俺のままで。「次!次行こ!」「ヒカリくんはお子様やねぇ」「こんな俺が好きなくせに!」シキくんがギューってしてくれる。空高く飛んでいく風船が俺の最後の不安も連れていってくれた。
燃える顔、こわ…。村中の人が教会に集まって広場に積まれた顔に火がつけられた。神父さんが「今年の収穫に感謝を」と神に祈りを捧げる。炎はだんだん勢いを増して立ち昇る煙。「ヒカリ君、お願いします」とうとう俺の番。村で暮らした人々の魂が本当に帰ってきていることが俺にはわかる。また来年来るよ、体に気をつけて。身内の人なのかな、側にふわふわ浮かんでいる。明日への希望を願う歌。魂たちが幸せを願っていること、ちゃんと伝えてあげなきゃ。木が爆ぜる音だけが夜の村に響いて、俺はまた気持ちを紡ぐ。俺とシキくんを繋いでくれた子守唄。ずっと見守ってくれてるんだよ。歌い終えて目を開けたら煙とともに光が天に還っていくのが見えた。
「もう少し長生きしてみたくなったぞ。またおいで。リュー、うちの野菜でヒカリ君に美味いもの作ってやっておくれ」「言われんでも。胃袋掴んだもん勝ちや」この小さな村で俺はシキくんを信じる気持ちを取り戻した。
村はお祭り一色。あちこちに旗がひらめき、屋台からは声をかけられる。「リュー?久しぶり!来てたのかい」村唯一の食堂のおばさん。「まぁ、可愛い子連れちゃって!」あらあら赤くなっちゃってー、なんて揶揄われて「可愛ええやろ。やらんぞ」なんて応えるからますます恥ずかしい。野菜たっぷりのバーガーを買って並んで座る。「シキくん、どこに行っても知り合いがいるんだね」…あ、こんなのよくない…「ヤキモチか?まったくいつもいつも。なしてこんなに可愛ええかね」思わずシキくんを見上げる。「ん?」「俺…すぐヤキモチ…ごめんね」「何を言うとる。俺を独り占めしたいんやろ。嬉しいやん」「…俺、直さなくてもいい?」「あたりまえやろ」そか。いいのか。俺が俺のままで。「次!次行こ!」「ヒカリくんはお子様やねぇ」「こんな俺が好きなくせに!」シキくんがギューってしてくれる。空高く飛んでいく風船が俺の最後の不安も連れていってくれた。
燃える顔、こわ…。村中の人が教会に集まって広場に積まれた顔に火がつけられた。神父さんが「今年の収穫に感謝を」と神に祈りを捧げる。炎はだんだん勢いを増して立ち昇る煙。「ヒカリ君、お願いします」とうとう俺の番。村で暮らした人々の魂が本当に帰ってきていることが俺にはわかる。また来年来るよ、体に気をつけて。身内の人なのかな、側にふわふわ浮かんでいる。明日への希望を願う歌。魂たちが幸せを願っていること、ちゃんと伝えてあげなきゃ。木が爆ぜる音だけが夜の村に響いて、俺はまた気持ちを紡ぐ。俺とシキくんを繋いでくれた子守唄。ずっと見守ってくれてるんだよ。歌い終えて目を開けたら煙とともに光が天に還っていくのが見えた。
「もう少し長生きしてみたくなったぞ。またおいで。リュー、うちの野菜でヒカリ君に美味いもの作ってやっておくれ」「言われんでも。胃袋掴んだもん勝ちや」この小さな村で俺はシキくんを信じる気持ちを取り戻した。
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