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春夏

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10. 旅の始まり

ファーストコンサート

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「俺、こっちにきて楽しいことばっかり。シキくんがすぐに見つけてくれたからだよ。ほんとにありがと!」「ヒカリ、ずっと一緒にいよな」「うん!あのね、マネージャーさんも決まってたの。俺、なんにもできないし頭悪いし、その人が全部面倒みてくれるはずだったんだー。あの人もどうしてるのかなぁ」「…そいつは男か?」「え?うん、30歳くらいの男の人」「…そいつもヒカリ狙っとったに違いないわ…」「え?!そんなわけないでしょ!」「嫌がるヒカリに強引に…」「そんなことされたら殴るよ!もう!シキくんだったら何されてもいいけど…あ、」「ほぉ」「違う、ウソ」「ウソなん?」「…ウソ…じゃない…」シキくんの顔が俺に近づいて唇が重なった。「俺がヒカリのマネージャーになったる。全部面倒みたるよ」「やっぱりここに来てよかった」俺もキスを返した。

「うわぁ…人いっぱい…」教会のホールにはたくさんの人。どこで聞いたのか、屋敷の執事さんがヒカリに高そうなスーツを届けてくれた。「よくお似合いです。結婚式にはより良いものを…!」なんてニヤけてまうやんか。結婚式…ええなぁ。「緊張して吐きそう…」「皆さんヒカリ君の歌が聴きたいのです。いつも通りで大丈夫ですよ」ロールさんがヒカリに笑いかける。「そうよぉ、ヒカリ君の歌、ほんとに素敵なんだから!」カミナさんもキールさんも、ギルド長まで「絶対聴いた方がいい、と誘われてな。ぜひ頼む」「せやで。曲は決めたん?」「一応…5曲…」まだ不安そうなヒカリの震える唇をサッと奪って「俺に聴かせて」と囁いた。「…うん!シキくんが聴いててくれるんだった。俺もう大丈夫!」

拍手に包まれ壇上に立つヒカリ。チラリ、と俺を見たから頷いてやる。ここに居るよ。いつだってヒカリのそばに。歌が始まる。優しく切ない恋の歌。聴く人を勇気づける励ましの歌。ヒカリが癒やしてくれる。家族への感謝を歌いあげたかと思えば、辛く苦しい別れの歌。間をとったヒカリが静かに話し始める。「今日は俺なんかのためにこんなたくさんの人が来てくれて、」言葉につまる。「、えっと…皆さんにいつも良くしてもらって俺、幸せです。ありがとう。最後の歌は」と俺を見て「えと…恥ずかしいけど…大好きなシキくんに捧げます」…息が止まりそうや。ヒカリが人前でこんなこと言うてくれるやなんて。ヒカリが奏でるのは、永遠を請い、与え合う愛の歌。静かに歌い終えて一礼するヒカリ。足が勝手に動いてヒカリの隣へ。「リュー!ヒカリ君を泣かすなよ!リューが嫌になったら俺がいるぞー!」またまたガハンかい!「…もん…」「ん?」「シキくん嫌いになったりしないもん!」「俺かて泣かさへんわ!」温かい笑いと拍手、そして癒しの空気に包まれて唇に誓い合った。
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