確率は100

春夏

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10. 旅の始まり

誘わなくて良かった

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噂はあっという間に広まって、旅の買い物をしていても声をかけられる。ヒカリは俺のや!とガッチリ手を掴み、周りに睨みをきかせる俺に「お似合いだよ」だとか「いつも仲良しねぇ」だとか冷やかしの声がとぶ。「ヒカリは俺のや!」ついに叫んだ俺の頭をポカポカ叩いて真っ赤な顔で恥ずかしがるヒカリ。可愛ええ。誰にもやらんぞ。周りから爆笑と「聴きにいくからね!」の声援。ヒカリのファーストコンサートは明日の夕方。

ギルドには歌聴くやつなんかおらんやろ、と立ち寄るがそこにいたのは、またこいつか…ガハンたち。「リュー!久しぶりか?ヒカリ君は今日も可愛いいねぇ!」「ヒカリが可愛ええのはいつものことや!ヒカリ、帰るで!」「来たばっかじゃん!こんにちはガハンさん」「ヒカリ君はイイ子だなぁ。歌の会、行くからな」「来んでええわ!」まあまあ、とガハンのところの弓師。「ヒカリ君、この前は治癒をありがとう。ガハンがさ、歌が良かった良かった、って羨ましくてな。明日は俺も行かせてもらうから」ヒカリがはにかんで笑う。「せやからそんな顔したらあかんよ!その顔は俺に抱かれとる時だけ…」「わーっ!」ヒカリが大声で遮る。「シキくん!黙って!」「まったく、お前らイチャイチャすんなよ!」「ガハンさんも黙って!」ヒカリにしっかり怒られてもた。

「ねぇシキくん。俺ね、3人組でデビューすることになってたの」「へえ!ソロかと思うとった」「うん。俺がボーカルで。ギターとピアノ。まだ1度しか会ったことなくてさ、ちょっと年上の人たちで…あの人たちどうなったんだろ…」「ヒカリを見つけたやり手の社長がどうにかしとるよ。気にしてもしゃあないやろ」「…うん。俺、明日がんばる。見ててね」「1番前で聴いとるからな。俺かてずっと待っとったんよ。ヒカリが神様のとこに居ることも知らんと、歌番組見たり雑誌で探したり。俺な、後悔しててん。なんでメシ誘わんかったんやろ、もっといろいろ話したかったわ、てな。それに…」「それに?」「ヒカリ、あの日に火事に巻き込まれた、言うたやろ。俺が誘っとったら遅くに帰って起きとったかもしれん。そしたら生きとったかも、て」「…じゃあやっぱり誘われなくて良かった。もし俺が生きてたら、俺の知らないところでシキくんが神様のところに行っちゃったんだもんね」「…そうなるなぁ…」「そしたら今、一緒にいないもんね?俺、この世界でシキくんと居られてよかったぁ」「俺もや。せやな、誘わんで良かったわ。あの日の分までいっぱい話そな」
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