確率は100

春夏

文字の大きさ
上 下
37 / 195
5. ランクアップ

結界ってホンマ便利や

しおりを挟む
「…薪」「ハイ!」「…水」「ハイ!」大将と話すことはこんなもんや。せやけどホンマに見ていて飽きん。固い鉄の塊が炉で溶かされ鎚で叩かれ美しい形になっていく。剣身が層構造だなんて知りもせなんだ。伸ばして叩いてまた伸ばす。気に入らなけば溶かすとこからやり直しや。依頼を受けるのも忘れて鍛冶に夢中になった。

あっという間に半年。月イチのカミナさんとのセックス以外は全く品行方正の日々。大将も鍛造の時に魔力を込めとるけど、俺とどうこうしようという気はないらしい。俺もそんな気にならんけど。溜めに溜めとるせいか、カミナさんは毎回ツヤツヤして上機嫌でサイナラ。

剣を鍛えるのには時間がかかる。量販物も扱っとって、その研ぎが俺の仕事や。大将が手にしているのは特注の大剣。俺の剣より長く重い。「これはお前よりガタイがよくて力もある冒険者に頼まれたモンだ。お前にはあのサイズが合っている。あれ以上の剣はもて余すだろうよ」

「鹿の解体はできるか」「一応できますけど…」「柄に皮を使う。明日にでも外に出て狩ってこい」「わかりました。採集とか、他の依頼も受けてええですか」「かまわん。ついでに薪にする木の伐採。ツリングの在庫も減ってきたからもし見つけたら頼む」朝のうちから出発。皮を使うねやから燃やしたらアカンな。傷をつけずに倒すには…窒息か。カミナさんが「小さな結界を張る時に気をつけるのは空気の通り道を作ること。いつもの結界を小さくしただけじゃ息ができなくなってしまうの。でもそれを利用して…」とラビッツを窒息死させたことがある。やってみるか。森に入って枝を伐採。ホンマこんなときマジックバッグは便利や。荷物にならんで済むからな。じいちゃんたちにヒュンに着いたこと手紙出さな。「んっ!おった!」鹿をメインに索敵しとった俺は走り出す。よし、ちゃんと鹿を索敵できた、あそこにおるわ。逃げ出さんように回り込んで鹿の顔回りに結界を張る。小さく、小さく…。苦しいのか暴れ出す鹿の脚を切り飛ばす。痙攣して息絶えた鹿、うまくいってよかったわ。解体用のナイフを取り出すが、小動物サイズのナイフやからやり難い。帰ったら大将に大きめのナイフを貸してもらえるよう頼んでみるか。

夕方までに5頭の鹿を倒すことができた。試しに空気の通り道をつくるように意識して結界を張ってみたらできていたようで、元気な鹿と戦うハメになったのは御愛嬌や。しかたなく大剣を振るい腹に傷を作ってもうた。ギルドに寄って薬草や傷のついた鹿を納品。大将が頼んどった鉄が入荷したから、と持たされて帰宅。「ご苦労だったな…なんと!無傷か!」「ちょいと工夫したんす。そうや、解体用のもう少しデカいナイフが欲しいんすけど…」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

絶頂の快感にとろける男の子たち【2023年短編】

ゆめゆき
BL
2023年に書いたものを大体まとめました。セックスに夢中になっちゃう男の子たちの話 しっちゃかめっちゃかなシチュエーション。 個別に投稿していたものにお気に入り、しおりして下さった方、ありがとうございました!

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

【完結】王子の婚約者をやめて厄介者同士で婚約するんで、そっちはそっちでやってくれ

天冨七緒
BL
頭に強い衝撃を受けた瞬間、前世の記憶が甦ったのか転生したのか今現在異世界にいる。 俺が王子の婚約者? 隣に他の男の肩を抱きながら宣言されても、俺お前の事覚えてねぇし。 てか、俺よりデカイ男抱く気はねぇし抱かれるなんて考えたことねぇから。 婚約は解消の方向で。 あっ、好みの奴みぃっけた。 えっ?俺とは犬猿の仲? そんなもんは過去の話だろ? 俺と王子の仲の悪さに付け入って、王子の婚約者の座を狙ってた? あんな浮気野郎はほっといて俺にしろよ。 BL大賞に応募したく急いでしまった為に荒い部分がありますが、ちょこちょこ直しながら公開していきます。 そういうシーンも早い段階でありますのでご注意ください。 同時に「王子を追いかけていた人に転生?ごめんなさい僕は違う人が気になってます」も公開してます、そちらもよろしくお願いします。

嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい

りまり
BL
 僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。  この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。  僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。  本当に僕にはもったいない人なんだ。  どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。  彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。  答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。  後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。

処理中です...