僕の幸せは

春夏

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とりあえず僕は実家に帰った。もう誰も待つ人のいない家に。幼い頃、父を亡くした僕をひとりで育ててくれた母は、僕の大学入学に合わせて再婚した。僕の大学費用を出してくれた新しい父は笑って言った。

「好きにしたらいいよ。でももう面倒はみないぞ」僕も笑って応えた。「母さんの面倒だけはよろしくね」「返せ、って言われても返せないなぁ」困ったように笑う母さんが幸せそうで、僕にとってはそれで充分だった。

毎日電気が灯るようになった僕の家を尋ねてきた数少ない地元の友人。「悠、帰ってたんなら連絡しろよ」「ごめん。なんか誰にも会いたくなかった」「ん?迷惑だったか?」「タキならいいよ。どっちにしろもう会っちゃったんだし」滝口は僕の頭を軽く叩いた。「おかえり」その優しい声が何重もの嘘で固めた僕の武装を剥がしてしまった。声を上げて泣く僕を滝口はただ静かに抱き寄せた。

「やることないんならさ、ウチで働かね?」タキの家は小さな花屋だったんだけれど、商才があったらしいタキの父が観葉植物なんかのレンタルを始めたという。「メンテとか配達とかさ、会合やパーティーなんかがあれば飾り付けもやってんだよ。人手が足りないんだ」

僕が子どもみたいに泣いた理由も聞かずにいてくれるタキの申し出を、僕はありがたく受けた。
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