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7.
7-3 嫌いだ
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side 貴大
頭を撫でる石井さんの手は大きくて優しい。僕はあの人に頭なんか撫でられたことがあったかな。大会で自己記録を更新した時とか…行為の最中にはあったかもしれないけど、それはこんな安心感を僕に与えてはくれなかった。
僕を好きだと言ってくれるこの人を好きになってもいいのかな。この人とだったら、好きだと言い合いながら抱かれることができるのかな。もしこの人に他に好きな人ができた時、許せないと詰って泣いて怒って、ちゃんと嫌いになることができるのかな。……そうか、僕はあの人に“嫌いだ”と言いたかったんだ。そのことに気がついて、また泣いた。
「…泊めてもらえますか」終電は終わってしまったし、ここから僕のアパートまでタクシーに乗るお金もない。駅まで行けば朝までやっているお店かなんかで時間を潰せるだろうけど、そもそも駅までの道がわからない。石井さんが僕を抱き捨てにしたってかまわない。あの人への僕の本心を気づかせてくれたことへの対価としては、僕の体なんかじゃ足りないくらいだ。「…中村君がいいなら」石井さんは嬉しそうに微笑んだ。
「明日、ってもう今日か。何限から?」「午後からです」「俺は2限なんだ。ゆっくりできるな。いろいろ疲れただろ?もう眠いか?」僕は頭を振った。言っておかなければならないことがある。
「僕もあなたを好きになってもいいですか」
頭を撫でる石井さんの手は大きくて優しい。僕はあの人に頭なんか撫でられたことがあったかな。大会で自己記録を更新した時とか…行為の最中にはあったかもしれないけど、それはこんな安心感を僕に与えてはくれなかった。
僕を好きだと言ってくれるこの人を好きになってもいいのかな。この人とだったら、好きだと言い合いながら抱かれることができるのかな。もしこの人に他に好きな人ができた時、許せないと詰って泣いて怒って、ちゃんと嫌いになることができるのかな。……そうか、僕はあの人に“嫌いだ”と言いたかったんだ。そのことに気がついて、また泣いた。
「…泊めてもらえますか」終電は終わってしまったし、ここから僕のアパートまでタクシーに乗るお金もない。駅まで行けば朝までやっているお店かなんかで時間を潰せるだろうけど、そもそも駅までの道がわからない。石井さんが僕を抱き捨てにしたってかまわない。あの人への僕の本心を気づかせてくれたことへの対価としては、僕の体なんかじゃ足りないくらいだ。「…中村君がいいなら」石井さんは嬉しそうに微笑んだ。
「明日、ってもう今日か。何限から?」「午後からです」「俺は2限なんだ。ゆっくりできるな。いろいろ疲れただろ?もう眠いか?」僕は頭を振った。言っておかなければならないことがある。
「僕もあなたを好きになってもいいですか」
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