初恋

5.

5-3 初めてじゃない

side 将真

「俺と行こうよ」そう言うと中村君は驚いたように目を丸くした。「え…なんで石井さんと？」「なんでって…」好きになったから、って言ってしまおうか。振られるなら早い方がいい。このままちょっとずつ仲良くなって距離を詰めてから、なんて思っていたけど俺は別に中村君と友達になりたいわけじゃない。そうだ、言っちまえ。

「中村君に一目惚れなんだ。中村君は男は無理か？」「は？揶揄ってるんですか？」「本気だよ。受付で知里に抱きついただろ？あん時知里に言ったんだ。中村君と会わせてくれてありがとう、って。絶対に落としてみせる、って。ほら」信じられないという顔をしている中村君に知里からのメッセージ画面を見せる。そこには［だめだよ！］［早く帰してやってよ］［せめて同意の上で！］なんて言葉が並んでいる。「うわ…本当なんだ…」沈黙が続いた後で中村君が俺を見て口を開いた。

「男が無理か、と聞かれたら…無理じゃない、です」「マジ？だったら俺と付き合ってよ」「……男の人は…初めてじゃないんです」「…え？」「だから…もし僕を抱いたら…石井さんもきっと、やっぱり女の子の方がいい、って思うはずです」