二人暮らし

春夏

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3. 倫30歳 真希18歳

3-5

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「俺、彼女と別れたから」やけにスッキリした顔で真希が笑う。「笑とる場合なん?」「泣かれちゃったけどね。俺からフッたんだよ」「生意気なこと言いよって…」「だからこれからは勉強するだけ」「…なんでもええわ。しっかりやりや」受験シーズンまで残り5か月、風邪なんかひかさんようにせな。この子が笑ってここを出ていけるようにすることが倫の役目だ。

「私立は受けない。今年もし国公立に受からなかったら働くよ」「受験料のことなら気にせんでええんよ」「受かったって行かないんだから無駄だろ」それ以上強くは言えずに「ほな、まずはセンターやな」「今は共通テストって言うんだけどなぁ」「ホンマにお前は生意気になったわ」「俺だってね、いつまでも子どもじゃないんだよ」真剣な顔をした真希にまっすぐ見つめられて「…せやったな」とだけ答えて倫はドアを閉めた。

「マサ、起きろや。時間やぞ」入試が始まった。真希の高校も試験会場だ。慣れた場所で良かった。弁当に“がんばれ”とだけ書いた菓子をしのばせ下まで降りて真希を見送る。「行ってきます」硬い笑顔に「大丈夫や。いつもどおりやったらええねん」と笑ってやる。次の日は“信じとるよ”と書いた。緊張の2日間を終え帰宅した真希は柔らかな笑顔を見せてくれた。
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