タカロ領ができるまで

春夏

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タカロの理由

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あの山は…ここは私が住んでいたところにそっくり!!
ミューそう思った途端、力が発動した。美優が住んでいた家が、登った木が、美優が生きていたあの風景がまるごとできあがってしまっていたのだ。

毎日見ていた景色。そして美優の家。声も出せずに呆然とするミューをアリスさんが抱きしめてくれた。「…ここが私の家なの。中身も全部同じなの。なのに誰も…お母さんもお父さんもいない…」ミューは声をあげて泣いた。

 
「ミュー、これから君はここで暮らしていくつもりだろう?ここに名前をつけなければならないね。ミューの好きなように名前をつけていいよ」王様はそう仰った。ミューが辺境の様子を変えてしまったのでマリンさんが転移魔法で王様を連れてきてくれたのだ。さすがの王様も目の前にある「日本の田舎の村」には大いに驚いた。一面にひろがる田園。所々に点在する家。この世界にはない茅葺の屋根、瓦の屋根、鋼板の屋根。外壁だって木造にモルタルにコンクリート。家の中に入ってみれば、これまた見たこともないような服や雑貨、電化製品。ミューが出したものなんてほんの一部だということがわかる。ここまで旅をしてきた人たちが、ミューとここで暮らすことを希望してくれている。王宮のときと同じように、こちらの世界でも使えるように研究するそうだ。


「名前はタカロにします。」「どういう意味だい?」「意味はないんです。…お母さんの名前なの。ここにお母さんはいないけれど、私の大事なこの場所にお母さんの名前をつけたいんです」

それからミューはタカロ領で生涯を過ごした。王国は様々なものを作ることに成功したが、まだまだ研究員たちの熱意はおさまらない。ミューが亡くなって不思議な力ももう無くなったけれど、この風景と熱意の結晶が王国に残された。


「おかあさん、おてがみきてるよ。タカロさんってだれ?」「?ああ、美優、これはお母さんの名前なの。漢字で書いてあるんだけれど、カタカナみたいだね。夕加。ゆうか、だよ」「おかあさんはゆうかさん?タカロさんじゃないのかぁ。おかあさんはゆうかさんなのにタカロさん。おもしろいねぇ」
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