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夜明けの幻想曲 3章 救国の旗手

11.5 重なりゆく不穏

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 ベアトリクスは遠ざかっていく足音に目を細めた。手にしていた本を閉じ、表紙を撫でる。金箔で描かれた豪奢な表紙。描かれているのはおとぎ話の王子様だった。

「まだ良かったのか?」

 ハスキーボイスが部屋に木霊した。

「えぇ。まだその時ではないわ。貴方もそう思うでしょう?」
「まぁそうだな。きな臭いことしやがる人間がいるようだし、それを利用しても良いと思ってるんだけどな。それからお前の望みを叶えてやるよ」
「あらそれは嬉しい。精霊様も慈悲深いのね」
「そりゃあな。元は人間を救うために生まれた存在だからな」

 声の主とは顔を合わせずに淡々と言葉を交わしていく。

「貴方はイミタシアとやらを生み出してどうするつもりなのかしら」
「世界を救うためさ。このままだと洒落にならないことになるぜ?人間達には知らないことだけどな……」
「どんなことになるのかしら」

 栗毛の侍女に手入れされた髪に指を通す。さらりとした金赤色を見ると弟を思い出す。綺麗な色だ。父と弟と自分にだけ許された色彩。それ以外は、許さない。

「さぁ、な」

 コロン、と何かがベッドに転がったのをベアトリクスは見る。白く細い指でつまみ上げる。何の変哲もないガラスの小瓶。中には仄かに発光する赤黒い液体が入っている。
 小瓶をくるくると回しつつ、ベアトリクスは尋ねる。

「これは、例の?」
「その通り。今のうちから渡しておく」
「綺麗ね」
「気を付けろよ?触れただけで発狂する奴もいたんだからな」
「ふふ。……二人で仲良く分け合うわね。楽しみだわ」

 大きなため息。

「狂ってるな、お姫様」


***


 どことも知れぬ廃墟は森で囲まれ、静謐な雰囲気の中佇んでいる。耳を澄ませば葉が揺れる音や小鳥たちの声が聞こえる、穏やかな地だ。
 ボロボロの廃墟にはもちろん普通の人間が暮らせるような環境は整っていない。生活するために必要なものは使い物にならない。
 その廃墟が廃墟になった後作られた地下室がある。そこにはアンティーク調の洒落た家具は一切なく、無機質な棚や机、得体の知れない機械が並べられていた。

「ルシオラ様、準備が整いました」
「シトロン」
「りょーかい」

 美しい白髪の女性が椅子に腰掛けて資料に目を通しているルシオラへ声をかける。それを聞いたルシオラはぞんざいにシトロンへ指示を出した。具体的な言葉は一切なくともシトロンには伝わっていたらしく、鼻歌交じりにキーボードを叩く。
 その前には大きなガラスの筒がある。中は液体で満たされ、獣が一匹揺蕩っていた。
 シトロンの操作により液体が管を通って抜かれていく。
 その獣は奇妙な姿をしていた。獅子の頭に鋭く尖った羊の角、鱗で覆われた鰐の尾。この世には存在しないはずの生き物だった。
 その生物が覚醒し、うなり声を上げるのを聞きルシオラは目を眇めた。

「合成獣は簡単に作れるというのに、人形を作るのは難しいものだな」
「そりゃそうっしょ。獣と違ってイミタシアのサンプルはそうそうないんだし。今のところデータをとれたのは二人だけ。ルシたんの弟君が協力してくれれば……そんで妹さんも面白いし……ってそんなに睨むなよ、冗談だって」

 人を殺しかねない眼光だな、とシトロンは笑む。

「まぁいいじゃないの。兵器としては使えないけど一応人形は作れたし」

 そう言ってシトロンはガラスの筒にもたれ込み、後ろを見やる。メイルが「合成獣に刺激を与えてしまいます」と文句を垂れ流していることは全く気にも留めず。シトロンの視線の先、一人の若い少女が冷めた瞳で研究者たちを見つめていた。白い顔にかかったエメラルドグリーンの髪を払い、つまらなさそうに腕を組む。

「あいつは精霊に対しては使い物にならない」
「雑用でもさせりゃいいじゃん。ま、今回は合成獣の面倒でも見て貰おうか」

 シトロンがちょいちょい、と指を動かして少女を呼ぶ。少女は無言で研究者達に近寄った。

「お人形ちゃん、こいつらをだな……そうそう、コレと同じ奴が他にも何体かいて……」
「分かってる。連れて行けばいいんでしょう」
「おお、凄い利口」
「流石ルシオラ様。この人形は誰が見ても人間だと勘違いするでしょう。素晴らしい出来映えです」

 メイルがこれでもかと褒めちぎっても、ルシオラは少女に見向きもしなかった。思考は既に次の段階へと進んでいる。

「……の遺伝子を……と……て……」

 ブツブツと独り言を呟きながら思考の海へと入っていったルシオラを見てシトロンは肩をすくめた。メイルは上機嫌にどこかへ去って行く。きっと熱いコーヒーでも淹れにいったのだろう。

(さぁて。どう転ぶかな)


***


「待ちなさい、クロウ」

 マグナロアから出てしばらくしたところ。
 ヴェレーノを見失って立ち止まっていたクロウに追いつき、ソフィアはその腕を掴んだ。最初は首根っこを掴んでやろうと思ったが、クロウは背が高いため掴むのが面倒だと即座に諦めた。

「はぁ~あ」

 クロウはこれでもかと大げさにため息をついてその場に座り込んだ。
 それに併せてソフィアも手を離す。

「見失ったよ、アイツ」
「そのようね。それにしても貴方がそこまで怒るなんて珍しいわね」
「疲れてたんだよ。色々と知りすぎてしまったせいで」
「本当のようね。貴方の態度、明らかに隠せていなかったわ。貴方なら正体を隠し通すものだと思っていたのだけれど」

 ソフィアはクロウの背後に立って腕を組んだ。

「まぁ、フェリクス達には言うつもりもないが隠してるつもりもなかったからな。実際目の前で力使ったことあるし。セラフィが信頼しているなら知られたって大丈夫だろ。俺も……イミタシアだってこと」
「そうかもしれないけれど……」
「あぁそうだ。言っておくけどな、俺さ、お前が抱えてるモンもある程度は知ってるんだ。お前の考えてること、うっかり覗き見ちまったからなぁ。相当やばいやつ、今までたったの一人で抱え込んでいたんだな」
「……貴方に見つかってしまった日からそうだろうとは思っていた。他言は無用よ。例え他の誰であろうと」
「分かってるよ」

 言えるわけないだろう、とぼやいた後にあ~あ、と再びため息。

「俺も損な性格だよな。元々は面倒ごとが嫌いだったはずなのに」
「貴方、リコにひっつかれて心底嫌そうな顔をしていたもの。覚えているわ」
「ハハ……。お前ら本当に面倒だな。色々走り回らされる俺の身にもなってみろっての。はぁ。そんなことよりも、お前はどうするんだ?シャーンスへ行くか?」
「どうかしら。多少の襲撃ならセラフィも彼女もいるのだしなんとかなりそうなものだけど」

 ソフィアは王都シャーンスがある方向へ顔を向ける。少し涼しい風が吹くようになった空はいつものように美しい青を輝かせたまま。不吉な予告なんて嘘であるかのように清々しい色彩だ。

「まずはセルペンスを捜しましょう。もしもシャーンスに何かあった場合いたら便利でしょうし、ヴェレーノも彼を捜していたもの、また会えるかもしれないわ」
「……そうだな。その方がいいな。まさかお前がちゃんと着いてくるなんて思ってなかったけど」
「……」
「なんか言ったか?」
「別に。さぁ行くわよ」

 目的が決まるやいなやさっさと歩き出したソフィアの背中を見て、クロウは口を尖らせる。そして重い腰を持ち上げて立ち上がり、指を一回鳴らした。
 その瞬間、近くの茂みから三つの頭がぴょこんと飛び出す。
 亜麻色の髪の少女と、黒いバンダナを巻いた巨漢と、眼鏡のおかっぱ頭。クロウの仕事仲間である。

「聞いたなお前ら。次の捜し人はセルペンスだ。ノアでも良い。何でもいいから情報集めてこい」
「はーい了解ですクロウさん!ほら、行くわよコルボー」
「おでに任せるだ~」
「あっちょっと待ちなさいよ!!速いってば!」

 キラキラと瞳を輝かせて走り去る巨漢コルボーの後を少女クレーエが追っていく。

「あの二人は僕にお任せを。クロウさんは二人旅を楽しんで~」

 最後に眼鏡を光らせたカーグがのんびりと去って行く。バタバタとうるさい足音は順調に遠ざかり、やがて聞こえなくなる。それでも騒がしい幻聴が聞こえるような気さえしてしまう。
 声を聞いて脚を止めていたソフィアが呆れたように半目になって、つい口を開いた。

「いつからいたのかしら」
「さぁ?」

 それは俺にも分からない、とクロウは苦笑した。
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