43 / 89
2章 誰が為の蛇
14 庭園の花
しおりを挟む
立ち尽くしていても仕方ない。
ソフィアはシャルロットがいたという庭園を訪れることにした。城の複雑な構造に苦戦しつつ、なんとか外に出てみれば最早見慣れた美しい花々が視界を埋め尽くした。
花の種類によって区画分けされ、庭師が毎日丁寧に世話をしている故の豪奢さが際立つ。所々に建つ大理石の像は歴代の王を模したものだと以前聞かされたが、いずれここにフェリクスの像も並ぶかもしれないと思うと不思議な気分になった。
芳醇な香りが漂う中を歩いていると、想像していた金赤の髪と全く同じ色の髪が揺れる様が見えた。
繻子の光沢が上品なドレスを纏った彼女はこの国の王女ベアトリクスだ。
成人の儀を迎えてなお存在を秘匿され続けた彼女だが、フェリクスを中心にした活動の中で存在が周囲に知れ渡ることとなった。活動的な弟とは違い、主に城にいることが多いが概ね従者達には受け入れられているようだった。
ソフィアが近づけば、彼女は髪を耳にかけながら振り返る。
「あら。貴女は確か……」
「ソフィアと申します、王女殿下」
「畏まらなくても良いのよ。フェリクスにもそういう態度はとっていないのでしょう? それに――貴女も神子なのだから、立場としては同等のはずよ」
ベアトリクスはソフィアが神子の直系であることを知っているようだ。おそらくはフェリクスから聞いたのだろう。
ソフィアは一度目を伏せる。
「とっくの昔に王族ではなくなっているけれど」
「ふふ、そんなの関係ないわ。ところで、ここでは何をしに?」
艶やかに微笑まれ一蹴される。
ソフィアは苦笑しつつ、王女殿下の要望に応えることにした。
「シャルロットという女の子と居たでしょう? 彼女と私の知り合いがどうやら隠し事をしているみたいで。貴女なら何か聞いているのではないかと思ったの」
そう問われてベアトリクスは目を細めた。小さな仕草ひとつひとつが妖艶ながら気品を感じさせる。ソフィアにはない輝きだ。
そうね、と淡い紅が引かれた唇が甘い声を紡ぐ。
「最近ね、この庭園に花が増え始めたのよ。数もだけど、種類もね」
「……?」
質問の答えになっていないような気がしてソフィアは眉をひそめる。
そんな彼女の反応を楽しむかのようにベアトリクスは金赤の髪をかき上げた。よく手入れされ艶のあるそれはさらさらと流れゆく。鮮やかな色は庭園の花々に引けを取らない。
「図書館にも花の本が増えたわ。ラエティティア王国から取り寄せたものみたいね。子供でも読めるような簡単なものだけど――見てみると案外面白いのよ。貴女も見てみるといいわ」
「そうね、機会があったら。それで?」
「そう。庭師の話によると、この庭園が更に美しくなり始めたのはつい最近とのことよ。あの王妃候補様がよく出入りするようになってから……そうね、ちょうど七日前だったかしら」
ソフィアにはベアトリクスの言いたいことがなんとなく分かってきた。
彼女はこう言いたいのだ。
求める答えは、シアルワ王国の次期王妃候補が握っていると。随分と分かりやすいヒントを貰ったものだ。
シャーンス襲撃事件の際は随分と暴れたそうだが、根は寛容で面倒見が良い性格なのかもしれない。
「花、ね。次はどんなものを仕入れるのかしら。彼女に聞いてみることにするわ」
そう答えると、ベアトリクスは満足そうに微笑んだ。
***
目的の人物の居場所を聞くには、一番親交のある人物に聞くのが一番だ。場所の候補はあるのだが、立ち入りに許可がいるかもしれない。その許可も得たかった。
そう思い王の執務室へ向かおうとしたソフィアだが、そこまで行く必要はなかった。
ベアトリクスに別れを告げて庭園を抜けようとした矢先、何かがぶつかり合う音が聞こえることに気がつく。そちらを見れば、庭園の外れに設けられた芝生の広場に次期王フェリクスがいた。
彼はノアと細身の木剣を手に打ち合いをしていた。側にはセラフィが控えている。
ノアの方は涼しい顔をしているが、フェリクスの顔には緊張が滲み息が上がっているようにも見える。マグナロアで多少の修行をしたとはいえ、まだまだ体力はついていないようだ。
「ソフィア」
「今はお邪魔かしら」
「うーん、もうそろそろ休憩に入ると思うよ」
二人の邪魔にならぬよう気を付けながらセラフィの隣に立つ。彼は主から目を離さず答えた。
そう、と軽く頷いてソフィアは打ち合いを続ける二人を見やった。
フェリクスの方は緊張のせいか動きが鈍い。ノアの方は余裕そうだが、太刀筋が荒い場面が多々見られる。
二人に後で伝えた方が良いだろうか、と思った数秒後。
フェリクスが派手に転んだことで討ち合いはひとまず終わりを迎えたようだ。同時に「ぐふぅ」などと情けないうめき声つきだ。こうしてみると次期王に決まっているとは言え年相応の少年に見える。
木剣を放り出して仰向けに寝転んだフェリクスはソフィアが増えていたことに気づき、へにゃりと笑った。
「あはは、師匠に負けたところ見られちゃった」
「ははは、フェリクスもまだまだだな! でもまぁ、出会ったばっかりの時よりはかなーり強くなってるけどな!」
「やったぁ」
喜びつつ起き上がり、髪や服についた芝の欠片を払い落とす。
フェリクスはソフィアに向き直る。
「待たせたな。何か用があって来たんだろ?」
「えぇ。ミセリアの居場所について聞こうと思って。彼女に用事があるの」
「ミセリアに?」
頷いたソフィアにフェリクスは快く答えてくれる。
「彼女なら多分図書館……かな? 最近はいくつか本を買いに街まで行っていたみたいだし。本に興味があるみたいだな」
「私も行って良いかしら?」
「良いよ。許可証とかはなくても入れるはずだから」
「分かったわ。それが聞ければ満足よ。――それと、もう少し脇を締めた方が良いわ。剣がふらふらしていると、それだけ余分な力が必要になってしまうから」
「へ? ……あぁ、ありがとう」
簡潔な教えにフェリクスが笑顔で礼を言った。
ソフィアも微笑し、軽く挨拶をしてからその場を後にした。
***
シアルワ城の図書館は広い。三階構造の図書館は吹き抜けがあるおかげでその広さに拍車がかかり、その吹き抜けを突き抜けるようにして巨大なステンドグラスが陽光を通して輝いていた。淡い七色の光がビロードの床を染め上げている。
ソフィアはその図書館に足を踏み入れ、地図を確認すると真っ直ぐに目的の場所に向かった。歴史、産業、文学――様々な書架の海を越えて、辿り着いたのは植物の書架だ。
難しそうな文字ばかりが並ぶ背表紙に、子供向けの図鑑が何冊か混じっている様子が見て取れた。真新しい背表紙だ。これこそミセリアが仕入れたという本だろう。
足音を立てないように歩いていると、やがて小さな声が聞こえてきた。しんと静寂に満ちた空間の中では、耳を澄ませば容易に聞き取れる声量だ。
「……これは、秋に咲く花だな」
「かわいい……!」
「ふふ、なら用意しよう。今度は一緒に鉢植えも見に行こうか。この花に合ったデザインがあれば良いのだが」
くすくすと笑い合う二人の声。どちらの声にも聞き覚えがあった。
こっそりと書架に身を隠しながら覗き見ると、二人の女がビロードの床に腰掛けながら大きな図鑑を仲良く覗き込んでいた。
一人は夜空色の髪が美しい女性ミセリア。そしてもう一人は――。
(ここにいたのね)
エメラルドグリーンの髪の少女、ラルカだった。
最後に見た時の焦燥した様子は見られない。あどけない少女そのものに見えるが、雰囲気にはどこか陰りが見え隠れしている。
どう声を掛ければ良いのか考えあぐねていたときだった。
「いるんだろう? 出てきたらどうだ」
ミセリアから声がかかった。やけに静かな声だった。
気付かれていたのだ。
呼びかけを無視する理由もない。
ソフィアは素直に書架の影から姿を晒すことにした。
「七日、か。随分と気付くのに時間がかかったみたいだな」
「……」
なんとも言えない表情を浮かべているソフィアを、ミセリアは微苦笑で出迎えた。
ソフィアはシャルロットがいたという庭園を訪れることにした。城の複雑な構造に苦戦しつつ、なんとか外に出てみれば最早見慣れた美しい花々が視界を埋め尽くした。
花の種類によって区画分けされ、庭師が毎日丁寧に世話をしている故の豪奢さが際立つ。所々に建つ大理石の像は歴代の王を模したものだと以前聞かされたが、いずれここにフェリクスの像も並ぶかもしれないと思うと不思議な気分になった。
芳醇な香りが漂う中を歩いていると、想像していた金赤の髪と全く同じ色の髪が揺れる様が見えた。
繻子の光沢が上品なドレスを纏った彼女はこの国の王女ベアトリクスだ。
成人の儀を迎えてなお存在を秘匿され続けた彼女だが、フェリクスを中心にした活動の中で存在が周囲に知れ渡ることとなった。活動的な弟とは違い、主に城にいることが多いが概ね従者達には受け入れられているようだった。
ソフィアが近づけば、彼女は髪を耳にかけながら振り返る。
「あら。貴女は確か……」
「ソフィアと申します、王女殿下」
「畏まらなくても良いのよ。フェリクスにもそういう態度はとっていないのでしょう? それに――貴女も神子なのだから、立場としては同等のはずよ」
ベアトリクスはソフィアが神子の直系であることを知っているようだ。おそらくはフェリクスから聞いたのだろう。
ソフィアは一度目を伏せる。
「とっくの昔に王族ではなくなっているけれど」
「ふふ、そんなの関係ないわ。ところで、ここでは何をしに?」
艶やかに微笑まれ一蹴される。
ソフィアは苦笑しつつ、王女殿下の要望に応えることにした。
「シャルロットという女の子と居たでしょう? 彼女と私の知り合いがどうやら隠し事をしているみたいで。貴女なら何か聞いているのではないかと思ったの」
そう問われてベアトリクスは目を細めた。小さな仕草ひとつひとつが妖艶ながら気品を感じさせる。ソフィアにはない輝きだ。
そうね、と淡い紅が引かれた唇が甘い声を紡ぐ。
「最近ね、この庭園に花が増え始めたのよ。数もだけど、種類もね」
「……?」
質問の答えになっていないような気がしてソフィアは眉をひそめる。
そんな彼女の反応を楽しむかのようにベアトリクスは金赤の髪をかき上げた。よく手入れされ艶のあるそれはさらさらと流れゆく。鮮やかな色は庭園の花々に引けを取らない。
「図書館にも花の本が増えたわ。ラエティティア王国から取り寄せたものみたいね。子供でも読めるような簡単なものだけど――見てみると案外面白いのよ。貴女も見てみるといいわ」
「そうね、機会があったら。それで?」
「そう。庭師の話によると、この庭園が更に美しくなり始めたのはつい最近とのことよ。あの王妃候補様がよく出入りするようになってから……そうね、ちょうど七日前だったかしら」
ソフィアにはベアトリクスの言いたいことがなんとなく分かってきた。
彼女はこう言いたいのだ。
求める答えは、シアルワ王国の次期王妃候補が握っていると。随分と分かりやすいヒントを貰ったものだ。
シャーンス襲撃事件の際は随分と暴れたそうだが、根は寛容で面倒見が良い性格なのかもしれない。
「花、ね。次はどんなものを仕入れるのかしら。彼女に聞いてみることにするわ」
そう答えると、ベアトリクスは満足そうに微笑んだ。
***
目的の人物の居場所を聞くには、一番親交のある人物に聞くのが一番だ。場所の候補はあるのだが、立ち入りに許可がいるかもしれない。その許可も得たかった。
そう思い王の執務室へ向かおうとしたソフィアだが、そこまで行く必要はなかった。
ベアトリクスに別れを告げて庭園を抜けようとした矢先、何かがぶつかり合う音が聞こえることに気がつく。そちらを見れば、庭園の外れに設けられた芝生の広場に次期王フェリクスがいた。
彼はノアと細身の木剣を手に打ち合いをしていた。側にはセラフィが控えている。
ノアの方は涼しい顔をしているが、フェリクスの顔には緊張が滲み息が上がっているようにも見える。マグナロアで多少の修行をしたとはいえ、まだまだ体力はついていないようだ。
「ソフィア」
「今はお邪魔かしら」
「うーん、もうそろそろ休憩に入ると思うよ」
二人の邪魔にならぬよう気を付けながらセラフィの隣に立つ。彼は主から目を離さず答えた。
そう、と軽く頷いてソフィアは打ち合いを続ける二人を見やった。
フェリクスの方は緊張のせいか動きが鈍い。ノアの方は余裕そうだが、太刀筋が荒い場面が多々見られる。
二人に後で伝えた方が良いだろうか、と思った数秒後。
フェリクスが派手に転んだことで討ち合いはひとまず終わりを迎えたようだ。同時に「ぐふぅ」などと情けないうめき声つきだ。こうしてみると次期王に決まっているとは言え年相応の少年に見える。
木剣を放り出して仰向けに寝転んだフェリクスはソフィアが増えていたことに気づき、へにゃりと笑った。
「あはは、師匠に負けたところ見られちゃった」
「ははは、フェリクスもまだまだだな! でもまぁ、出会ったばっかりの時よりはかなーり強くなってるけどな!」
「やったぁ」
喜びつつ起き上がり、髪や服についた芝の欠片を払い落とす。
フェリクスはソフィアに向き直る。
「待たせたな。何か用があって来たんだろ?」
「えぇ。ミセリアの居場所について聞こうと思って。彼女に用事があるの」
「ミセリアに?」
頷いたソフィアにフェリクスは快く答えてくれる。
「彼女なら多分図書館……かな? 最近はいくつか本を買いに街まで行っていたみたいだし。本に興味があるみたいだな」
「私も行って良いかしら?」
「良いよ。許可証とかはなくても入れるはずだから」
「分かったわ。それが聞ければ満足よ。――それと、もう少し脇を締めた方が良いわ。剣がふらふらしていると、それだけ余分な力が必要になってしまうから」
「へ? ……あぁ、ありがとう」
簡潔な教えにフェリクスが笑顔で礼を言った。
ソフィアも微笑し、軽く挨拶をしてからその場を後にした。
***
シアルワ城の図書館は広い。三階構造の図書館は吹き抜けがあるおかげでその広さに拍車がかかり、その吹き抜けを突き抜けるようにして巨大なステンドグラスが陽光を通して輝いていた。淡い七色の光がビロードの床を染め上げている。
ソフィアはその図書館に足を踏み入れ、地図を確認すると真っ直ぐに目的の場所に向かった。歴史、産業、文学――様々な書架の海を越えて、辿り着いたのは植物の書架だ。
難しそうな文字ばかりが並ぶ背表紙に、子供向けの図鑑が何冊か混じっている様子が見て取れた。真新しい背表紙だ。これこそミセリアが仕入れたという本だろう。
足音を立てないように歩いていると、やがて小さな声が聞こえてきた。しんと静寂に満ちた空間の中では、耳を澄ませば容易に聞き取れる声量だ。
「……これは、秋に咲く花だな」
「かわいい……!」
「ふふ、なら用意しよう。今度は一緒に鉢植えも見に行こうか。この花に合ったデザインがあれば良いのだが」
くすくすと笑い合う二人の声。どちらの声にも聞き覚えがあった。
こっそりと書架に身を隠しながら覗き見ると、二人の女がビロードの床に腰掛けながら大きな図鑑を仲良く覗き込んでいた。
一人は夜空色の髪が美しい女性ミセリア。そしてもう一人は――。
(ここにいたのね)
エメラルドグリーンの髪の少女、ラルカだった。
最後に見た時の焦燥した様子は見られない。あどけない少女そのものに見えるが、雰囲気にはどこか陰りが見え隠れしている。
どう声を掛ければ良いのか考えあぐねていたときだった。
「いるんだろう? 出てきたらどうだ」
ミセリアから声がかかった。やけに静かな声だった。
気付かれていたのだ。
呼びかけを無視する理由もない。
ソフィアは素直に書架の影から姿を晒すことにした。
「七日、か。随分と気付くのに時間がかかったみたいだな」
「……」
なんとも言えない表情を浮かべているソフィアを、ミセリアは微苦笑で出迎えた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
名も無き星達は今日も輝く
内藤晴人
ファンタジー
エトルリア大陸の二大強国、ルウツとエドナ。
双方の間では長年に渡り、無為の争いが続いていた。
そんな中偶然にも時を同じくして、両国に稀代の名将が生まれる。
両者の共通点は、類稀な戦上手であるにもかかわらず上層部からは煙たがれていること、そして数奇な運命をたどっていることだった。
世界の片隅で精一杯に生きる人々の物語。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる