確かに俺は文官だが

パチェル

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第4章

帰り道の夕焼けは目に眩しい20

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 なんか思いのほか二人がダメージを被っていたので、ヒカリは自分の思っていたことを考え考え話した。



「だから、ふたりがしらなくても、しかたないというか……。当たり前と、いうか?」
「あれ……だからか」



 ふとセイリオスが呟いた。

「あれ?」


 思い返してみれば、ヒカリがニホンにいた時に誕生日だったという日に、ヒカリが献立を考えて料理を作って、ケーキまで作った。


 お祝いの時に作るような料理を作りたかったらしいが、如何せん材料がなかったらしい。作り方もよくわからなかったと断念したのだそうだ。
 そして最後に、二人にいつもお世話になっているからとプレゼントも贈られたのだった。



「あれかぁ!」

 スピカが大きな声を出す。






「ヒカリの国では誕生日は祝われる人が贈り物をするのか?」
「んー、どうだろ。いつもはおくられてたよ」
「じゃあ、俺たちも贈らないと!」
「へへへー、きもちだけでいーよ。いつもいぱいもらてるし」

 そう言うのに、いーや、贈りたいと食い下がる二人。ヒカリははっと閃いた。


「じゃあ、おねがいごとしてもいい?」
「おーいいぞ!」
「あぁ、何でも。お肉食べ放題とか」
「それもいーね……。あのね、いやだたらいいんだけど」


 ちょっと考えて、食後のお茶を口に含んだヒカリは二人を見上げる。


「ふたりの、時間が、ほしいんだって、言っても?」
「……そんなんでいいのか?」
「そんなんって、だて、二人最近忙しかったし」


 ちょっといじけてしまう。
 二人は気付いていないかもしれないが、傍から見て本当に大変そうに見えたのだ。


 そう、とても忙しそうで、恐らくその一端であるのが自分であることなんてわかりきっているので、実に大人しくヒカリはここ最近を過ごしていたのだ。


 解らない事とかは以前は二人に聞けばなんでも答えて貰えたのだが、甘えはよくないということで、粘って粘ってどうしようもなさそうな事だけ聞くようにしていたし。


 休日どこか出掛けようかとか言われるのも、なるべく短時間で済むようなものにして後は家で過ごしていたし。
 トラウマの練習や薬物耐性の時間を否が応でも取ってしまうので、それ以外の時間は貰わないようにしていた。


 家事だって大分一人で任せてもらえるようになっていたので、働く人形たちと一緒にやった。

 マッサージしてウトウトし始める時間が早くなっているなんて二人は気付いていない。疲れているのに気付けないのはたぶんまずいと思う。


 ちょっと、というか、かなり心配していたのに「そんなん」とか言われると、謎に腹が立つ。しかも誰に腹を立てればいいのかわからない。



 それに夜も、一人で寝る時間を増やした。
 自慰の練習だって、一人で二回に一回くらいは自分でチャレンジしていて、結局無理で寝落ちみたいな時しかないけど。
  

 ヒカリとしては二人といれるのは大変ありがたいのだが、二人だって一人の時間は必要だろうしとそれなりに弁えなければと思っての行動だった。
 それを助言した人の話を思い出し、少し顔が熱くなったヒカリに二人は首をひねっている。


「じゃあ、どうする。とりあえず今日は三人で寝る?」
「明日は三人でお風呂に入るか」
「あ、ていうか。俺は使節団が来たら結構暇になるから、時間的に余裕だけど」
「俺は、まだちょっとだけ忙しい。以前よりは楽になると思いたいが」



 二人が話を逸らしてくれて助かった。



 この間、ダーナーが言ったのだ。
 贈り物に悩んでいたらアドバイスをくれたのだが、その後の雑談がちょっと、ヒカリには雑過ぎたというか。



 途中でカシオに助けてもらえなかったら、ずっとあたふたしていたかもしれない。カシオ曰く猥談には付き合わなくていいですよと言われた。


「え、マジで? ヒノー、お前そんなしょっちゅう、お年頃の二人と寝てて大丈夫かよ?」
「ん? なんで?」
「だって、あいつらだって男だろ? ほらー、ムラムラして一緒に扱くとかないの?」


 いつもの警吏課のソファで色々話していたら、ちょっと嬉しそうにダーナーが話し始めた。

「いっしょに? シゴク? むらむら?」
「ほらー、男の生理現象があるわけじゃないですかー。ヒノさーん」
「おとこのせーりげんしょー……」

 げんしょーは現象か、せーりってなんだっけ。考えている間にダーナーが続ける。

「だって、娼館とかに行ってセックスとかしてるわけでもないし、そんな暇とかなさそうだし、恋人もいないだろ? さすがに隣にお前さんが寝ていて……。一人シコッているのだろうか。こそこそと……。えぇー。もしくは便所とか? 風呂は一緒に入ってんだもんなぁ。そこらへんどうなの? 俺は一人の男として、あいつらの養い親としてちょっとばかし心配になってきたんだけど。お前、そのまま、我慢させてたらいつか爆発しちゃうんじゃないの? え? 大丈夫? ヒノ。お前の貞操は大丈夫なのか?」
「ちょと、え? まてまて、え? せっく……」


 何かわからないまま、話がちょっと飛んだ気がして、でも声に出すのが恥ずかしくて。


「そんなに赤くなるなんて、お前のおぼこい感じってどうやったらなくなるの? とりあえず、今度あいつら連れて娼館でも行くか。ちょっと抜いたら大丈夫だろう。なーに、ヒノ。俺に任せておけ。たまったもん、ぜーんぶ抜かせて来るから」


 と、がはははと大きな声で笑うダーナーに何も言えずに真っ赤に固まっていたら、カシオがその口に氷の塊を突っ込んで黙らせ、ヒカリを抱えてその場から逃がしてくれたのだ。



 真っ赤なまま抱えられて、カシオがじっと見てくる。

「ヒノさん……。とりあえず、聞かなかったことにしましょうか? あれの制裁は私が代わりに下しておきますので、それでいいですか? あれも、気が急いているんですよ。すみませんね。とりあえず、無駄なことできないように仕事も倍増させておきますし」


 とりあえず、わからぬまま頷いた。
 なんとなく、本当になんとなくだけど。


 二人が娼館に行くと聞いて、ちょっとだけ胸がもやもやしてしまったのは誰にも言えていない。







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