確かに俺は文官だが

パチェル

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第4章

帰り道の夕焼けは目に眩しい9

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 延々延々、話して。さて、3時間が経とうとしている。


 俺はいるのか、いらないのか。
 部外者に近いほうの人間なのであまり口を挟まないようにしていると、会議のメンバーの一人に話を振られた。


「何かいい案ありませんか。セイリオスさん」

 因みにセイリオスは暇すぎて、会議のメンバーに三回目のお茶を配っていたところだった。
 それは、俺に聞くことなのだろうか。警備の話だからなぁと思いつつも、考えていたことを伝える。


「案と言うか、騎士寮に住まわせたらいいんじゃないかと」

 お茶を受け取った男性が笑う。
  

「いやいや、だから。城内にあんまり部外者の武力を置いて留めるのは」

 笑うなら聞くなよとは言わずに、自分の意見を伝える。


「でも、その騎士の連中も見張らないといけないんですよね? だったら、近場で見張った方がいいじゃないですか。鍛錬も見ている中で行ってもらったら。留学とか友好の証で来ているので、一緒に鍛錬しましょうねぐらいで言っておけばあっちも文句は言えませんでしょうし」

「しかし、全員いれようと思ったら部屋が足りない」
「いや、入れてしまえばいいですよ」


 セイリオスはやってくる騎士を等分に分けて王城内にあるいくつかの騎士寮に分けてしまえばいいと言った。
 要は戦力を分断させればよいのだ。


 街中でバラバラに襲撃されるよりも、固めて見張る方がいいだろう。
 その間、武力関連の課には当直の人数を増やしてもらえば、こちらの戦力の方がはるかに上だ。


 部屋にあるベッドを2段にして、一部屋二人を、一部屋四人か三人にしてしまえばいいだろう。
 どうせそのうちの何人かは当直で出歩いているのだから、寝ているときには2人部屋だ。

 うちの騎士にも一時期だけ部屋替えをしてもらって、悪さできないような部屋割りにすればいい。


「そうしたら、うちの騎士たちの部屋が」
「それは騎士の駐屯所でいいと思います。あそこには当直室もかなりあったでしょう? 野戦病院になるようにベッドもいくつかありますし。そもそも、怪しい動きをしそうな人たちが一時期多くなるのだから、街での騒ぎに対応できる人間を増やしてもいいでしょう。これなら仕事が増えることもそれほどないし」



 みたいな、セイリオスがいるかどうかわからないようなことも最近では参加している。
 まぁ、臨時で給料が増えるのでそれはありがたい。



 残業せずともお給料が増えるので飛びついたのだが、どうせ呼ぶなら本業に近い仕事をしたいのだと思う。
 はぁ、と会議室の隅っこで小さくため息をつく。



 ヒカリにはああ言ったが、そうそう簡単に情報が入ることはない。


 一般市民の力の限界をほとほと感じているところだった。
 日々生きるための仕事をしながら、目的のために別のことをするというのはとても労力がいる。

 しかも、それが何の手掛かりもなく、希望にすがるだけの状況だとしたら猶のこと。



 ヒカリはこんなしんどいことを理不尽な状況を前にしても続けて、今、セイリオスたちの前で笑っている。
 それを思うと、馬鹿だとは思うが自分の方が焦ってしまう。


 異世界。いせかい。


 そこへ行くのに、何がいるのだろうか。


 何もわからないし、示してもやれない歯がゆさが募る。



 だから唯一わかることはお金があった方がいいということだ。

 違う国へ行き、異世界への道のりの手掛かりを探しに行くというのなら、お金はたくさんあって困ることはない。
 事が動き始める時間があるときに、貯めておかないといけない。




 なのに、俺ときたら……。
 セイリオスは自分にあきれた。



 それはわかるのだが、頭でもそうしたほうがいいのはわかるのだが。


 ヒカリと一緒にあーでもない、こーでもないと実験して、失敗も一緒にして、検証して。
 楽しいだろうなと思うと、やっぱりため息が出てしまう。


 ヒカリと働くと浮かれる自分がいる。楽しくって、ヒカリを見て楽しそうにしていると思うと安心して。




 早く見つけてやらねばと思うのに、俺なんかが楽しんでいていいのだろうか。
 もっと必死になれるんじゃないだろうか。





「セイリオスさん、この拾音機なんですけど。指向性を持たせることってできないですか」
「あー、そうですね」


 魔道具関連の仕事がようやくやってきて、少し安心する。
 頭の片隅には、ヒカリとケーティが一緒に楽しそうに作業していた姿が思い起こされてはいる。



 俺も頑張らないとな。



 背筋を伸ばして手帳にスケジュールを書き込む。
 そろそろ三月。



 暖かくなったころには、また、変化が起きているのだろうか。
 目まぐるしく変化ばかりの一年が過ぎようとしている。






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