確かに俺は文官だが

パチェル

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第4章

皆で行けば怖くない1

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 新年になって、一週間後。王立研究所には、朝から気だるげな雰囲気が漂う。
 年末から合わせて10日ほどの休みが、人間をそうさせる。新年だからと言って、元気な挨拶など……。



「おはよーございますっ! ことしもよろしく、おねがいしますっ!」



 いた、いたな。隣に。

 元気おはよう製造機「ヒノヒカリ」が、この短期間で知り合いになった人に挨拶をしている。
 知り合いではない人にも挨拶しているが。



 職場の自分の席に着くとヒカリがさっそく濡らした布巾で机の上を拭いている。
 次々と入ってくる職員にあいさつをしている。
 いつもはちょっとため息なんかついている奴もいる年始の勤務だが、今年はかなり違った。



 えっ? 年末のあの騒動はどうなったか?


 恐らく何とかなった。
 この後、何かしらの考えや思いをこじらせて、何かしらの行動を起こすかもしれないから要観察ではあるが。
 セクハラをする人物の考えを改めさせるというのはなかなか難しい。


 よって、要観察だ。



 ヒカリとは話し合って、直属の上司に相談することとなった。
 つまり、ケーティ魔道具関連課課長である。

 ヒカリが相談がありますと言って、没頭していた研究からぼんやりした顔をして聞いていた課長が、途中からえらくきれいに整った顔で聞き始めた。



 ヒノくん。僕は君の上司なんだよ? 報告、連絡、相談。これってすごく大事なんだ。
 もしかして、僕が頼りなくて信用できないからかな?
 上司としてあるまじき人物だと思ってるのかな。
 ……そっか、それなら仕方ないよ。
 僕はヒノくんの上司として。



 のところらへんでヒカリが立ち上がって、「そんなことないです。僕、すごくお世話になていて、僕がちいさいことだって判断を間違たから!」と謝り始めた。



 そんな一生懸命なヒカリを見て頷き、さらさらと白い髪をなびかせて、うちの上司が言った。

「なら、僕たちどっちもどっちだったね。もう、ごめんなさいは終りだね? これからも僕が上司として成長できるように頼ってくれるかな? どんな些細な事でもいいんだよ。魔道具っていうのはそういうところから発展していくものだから、ね?」


 この人は半分本気で、半分計算で言っているんだろうけど。

 ヒノくんの上司として。の後にヒカリは何が続くと思ったんだろうか。



 そして、課長室から出て集まって休憩していた職員に声をかけた。

「ねぇねぇ、今からちょっと害虫一匹やっつけに行くけど、ついてくる人ー?」







 その後は、まずヒカリが一人で業務停滞の報告と謝罪に向かった。
 そのうえで担当を代えさせてもらいたい旨を話しに言った。



 付き添いで一緒についていったのはリーツという職員である。
 俺やタウより上の、頼れる? 先輩だ。
 少し軽いのは致し方がない。


 ヒカリが一人で説明に行ってくると謎のやる気に満ち溢れ始めた時に、俺、土木管理課行ったことないからどんなところか見に行ってもいいかなと付いて行った。


 そこで、あちらの課長が出てきて「なになに、なんかあったの?」「えっと、その」なんて対応していたら、例のセクハラ男が現れた。


 そのまま、ヒカリと二人で倉庫に向かおうとするのをリーツがやんわり間に入って止めてくれたので、ヒカリには指一本触れることはなかったらしい。



 音だけだとそこまではわからなかったのでハラハラしていたのだが。

 エリオットの知り合いの土木管理課の職員も間に入ってくれていたようだ。



「謝ることなんてないっすよ。ねぇ、先輩? 」
「そうだ。今日の業務は午後からだったな」
「あの、その事なんですけど。うちの新人がすいません。業務が滞っていると伺っているのですが」
「あぁ、そうらしいね。聞いてるよ。慣れないうちは仕方がないよ」
「そうだぞ。仕事ができないからって落ち込むことはない。俺が今日も教えてやるから、行くぞ」


 などとペラペラ言うのでヒカリが口を挟めず、オロオロしてもセクハラ男は何も聞こうとせずにヒカリを連れていこうとした。


「そうそう、それで今日は手が空いているもので、うちのヒノの業務を見がてらお手伝いに来たんですよ」
「それには及ばないですよ。こいつと二人で」



 そこで廊下で待機していた魔道具関連課の職員が扉をノックしてぞろぞろと「応援に来ましたー」と入っていく。筆頭は課長である。


「職員総出でお手伝いにきましたー。さっさと仕事終わらして新年迎えましょー」

 突然現れた魔道具関連課の集団に課長が問いかけた。



「え? こんなに必要なんですか?」
「え? 聞いてませんか? うちの毎年恒例の魔道具の業務ですけど、かなり滞っていて、例年よりかなり遅れているんですが」
「確かに、いつもよりは遅れていると聞きましたが。新人さんがいるからうちのが丁寧に教えているものかと思いまして」


「ほうほう、教えて? もらってたのかな? ヒノくん?」
「おそわることはとくに?」


 ヒカリが本当にそう思ったのだろう、即座に返事する。



「違うんですよ。その子の仕事が遅くて、時間がかかっていたんですよ。なんせ、魔力も使えないもんですから!」


 そこで、俺も手を上げる。



「あの、スイマセン。例年、こちらの魔道具の業務担当しているセイリオスと申します。私も魔力は使えないので毎年お願いしているのですが、こんなに時間はかからなかったかと」

「い、いや、それに言葉が」
「言葉ですか? ヒノは聞き取りは早口でない限り、仕事の話に関してはほぼほぼ聞き取れますよ。仕事に関係のない無駄話でもない限り」


「体力だって」
「この業務にはそうそう体力は必要ないと思うのですが? 道具がしっかり保管されていればですが」




 で、時間ももったいないので行きましょうとリーツがエリオットとヒカリの肩に手を回して、抓られポイッと捨てられた。


「先輩。それ、いつも言ってますよね。仕事に関係のない接触はセクハラですよ。仲良くなったと勘違いしているかもしれないですけど、人によってのボーダーはかなり違うんです。そのボーダーをわかっていると思うならやめてください。勘違いも甚だしい。ヒノは新人ですよ。嫌だなんて言えるわけないんですから。もしその人が接触恐怖症とかだったらどうするんですか」

「えー、じゃあ、エリオットになら触れていいのかぁ?」
「ダメと思いますけど」


 何故かヒカリが突っ込む。それをエリオットが聞いて、俺ならと続ける。


「触らないでもらえますか? それ、きもいですよ? 目線が犯罪者みたいなので見ないでもらえますか? ことあるごとに寄りかからないと仕事できないんですか? 手が止まるなら無駄話やめてもらっていいですか? ていうかプライベートなこと何度も無理やり聞かないでもらえますか? 話してもいいと思ったら話してますから。 ここ、仕事場ですよ。たまってるんなら飲み屋とか娼館とかに行ってもらっていいですかって俺なら言ってますね」


「えっ」







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