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第4章
忙しいのは変わらない5
しおりを挟むセイリオスはなぜ今それなのか、ぎりぎり誉めていないのじゃないかとは思うものの、そうかと笑うしかない。
前から少し思ってはいたものの、ヒカリはどうやらこの眼鏡にご執心のようだ。
あと、ごつい手袋も恐らくかっこいいの範疇に入るのだろう。
それはいくらで買えるのかと聞かれたことがあった。
非売品だなと言えば残念そうにしていた。
ケーティもそうだね、かっこいいねと言いながら机の上に用紙を置いていく。
ヒカリがそれを見て背筋を伸ばした。
「じゃあ、今から試験を始めるね」
唐突に試験が始まってヒカリは慌ててリュックの中から筆記用具を出す。
ケーティが辞書も出してと言うのでセイリオスとスピカ御手製の辞書などもすべて出した。
「ほかにも試験内容で分からないことがあれば、あの棚にある資料を使ってね」
「え? じしょとか、みてもいいの?」
「ん? いいよ。ただし自力でね。セイリオス君に聞くのはダメだよ?」
「はい、わかりました」
どうやらヒカリが思っていたような試験よりとても緩そうな雰囲気だとわかり少しほっとする。
突然明日は試験と面接だからと言われて、マジで!? 勉強しなくてはと焦りまくっていたのだが、二人がのんびりしていた理由がなんとなくわかった。
要は臨時職員に求められているのは資料とかをちゃんと読めるか。
自分で理解できるかと言う事なのだろう。
試験時間もたっぷり用意されている。
と言うことでこう言った試験なのだな。ふっふっふ、完全に読み切った!
それならそうと言ってくれればよかったのに。
満点は無理かもしれないけれど、半分は頑張ったらいけるかも。
図書館であれほど本とにらめっこしたのだ。
あ、できるかもと思ったら少し楽しくなってきた。
じゃあ、今から始めるねと課長のケーティが、実に中途半端な時間から始めの合図を言って、さらっと始まってしまった。
臨時職員の試験はその部署の役付きが作成する。独自のものだ。
最初は一般常識。
一般常識の問題は過去問から引っ張り出してきたものだ。
それを考えるのはめんどくさいし、楽しくないというケーティが考えそうなことだとセイリオスは思った。
会話文を読んで次にあてはまる文言はどれかとか、計算ができるかとか、国の周辺の話とかこれらは結構簡単で、時々辞書を見ながら解く。
正直、計算はこっちも日本も変わらないので問題なく、会話文は読むのは得意なのでこちらもスイスイ。
周辺諸国や地理の問題は所々考えて、時々自分のメモ帳を見て答える。
黙々と解いていると一般常識は結構すぐ終わった。
次に魔道具に関して。
法律関係のこととか、普及している魔道具を説明せよとか、普及率の高い順に並べろとか、この魔道具の材料は何かとか、注意点とかそれはもう色々あった。
頭を抱えながら、メモを見て、棚から資料を持ってきて自分の考えを書いていく。
自分で考えるところが結構多くて例えば。
「近年、我が国は、『魔法使用量減少に伴う人材の疲弊』『育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化』などの状況に直面しています。こうした中、魔道具に関する需要は確実に増えており魔道具関連課への負担は日に日に大きくなっています。
そこで職員たちの意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。
では、あなたなら職員たちが心身ともに健康に働くためにはどのような対応、工夫をしたらいいと考えますか。
あなたの考えを説明しなさい。」
問題文読むのに3分はかかった。
この問題文が問題じゃないのかとか思った。問題文を読めただけでも10点は欲しいくらいだった。
でもこの問題文を読むのは時間がかかるけど、答えは自分の考えをかくだけだからその点は楽だった。
難しい言葉とか文法は使わないように、簡潔に言いたいことをシンプルにまとめる。
気持ちを伝えるんじゃないから、簡単なのでいいでしょう。うんうん。
普及している魔道具とかは前にセイリオスが説明してくれたし、材料も結構知っているものが多くてそこらへんは自分のメモを見て答えられたので資料を探す手間も省けた。
セイリオス様様じゃんっ!
スピカはヒカリが試験を始めたら、自分の仕事場へと向かっていった。
昨日の落ち着かないヒカリはどこへやら。
銀行へと行く道で今日はお魚ですか? と聞かれたのでちゃっかり食の話は聞いていて期待していたヒカリのために、セイリオスにはぜひともおいしい脂ののった魚を買ってきてもらえるように圧をかけてから。
セイリオスも最初は傍にいてくれたようだったが、気付けばいなくなっている。
一般常識をサラサラ解いた時点でもう周りがあまり目に入らなくなっているのがわかり、しばらく傍で仕事をしていたが、魚を買うためには、仕事を何としても定時で終わらせないといけないので、あとはヒカリに任せて仕事を黙々としていた。
ヒカリの机の周りでは少し遠くで色々な人が働いている気配がしており、それが中々集中できて気づけば試験終了時間だった。
「はーい、そこまで!」
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