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第3章
まだ獣にはなれない6
しおりを挟むスピカがまずはヒカリ一人でやってみようかというので、恐る恐る自分の性器に触れる。
ちょっとの刺激でいつもどうにもならないから、勢いよく手のひら全部でぎゅっと握った。
「ぐぅぅっ」
「ちょいちょい、ちょっと待って、ヒカリそんなに強く握っちゃダメだろ?」
物理的に痛くするとちょっとだけ大人しくなる気がするので勢いよくいったが、すぐにスピカにダメ出しをされる。
「もっと優しくしないと」
スピカがジェスチャーも交えて教えてくれる。掌全体でこうやって上下にして擦ってもいいし、親指と人差し指で輪っかを作って擦ってもいい。
どうだ、できる?
スピカの輪っかをまじまじと観察して。
「やてみる」
さっきとは違い力を抜いて触れてみる。
本当に触れているギリギリくらいの力で輪っかでやってみるけど、力が入らなくてもどかしくなる。
何回もそれでゆるゆる、擦ってみる。
そうしていると館でされた教育を思い出した。
今思えば、自分のペニスすら射精させたことがないのに、人のペニスを射精させる訓練はひどくおかしかった。
たぶんここをこうやれとか言葉じゃわかんないから実戦でずっとやってたけれど、気持ちよくなったことがないので難しいと言えば難しかった。
自分は全く興奮していないのに相手だけが興奮しているのが手のひらから伝わってくる。
ビクビクし始めて、そろそろ出るなーと思って身構えるのに、出たらやっぱり気持ち悪いという感想しか出なくて。
その熱さが気持ち悪くて。
その感触が気持ち悪くて。
自分のを見て、どうしてこんな頼りないもの切り落とそうと思えるのか考えたら、同じ人間じゃないのかもとか思ったこともあった。
口に含めさせるのも、手でさせるのも、お尻でさせるのも誰もがさせたがった。
どれも大っ嫌いだったけど、それがあの時は仕事で。
そう、あれが生きのびる糧で。
でもあれは生きていると言えたのか。
あぁ、だめだめ。
と過る映像を振り切るように前を向くと、セイリオスと目が合う。
耳たぶにちゅうをしてヒカリと声をかけられると、過った音が消えてセイリオスの声だけになった。
瞳を見ると過った映像が消えてお月様だけになった。
おまじない、すごい!
辛くなったらセイリオスを見て、しばらく擦り続けた。
「はぁはぁはぁ」
息だけが荒くなって熱も上がる。
全然気持ちよい感じはしない。
もだもだしているとでもいえばいいのか。
フラストレーションだけがたまっていくようで、目じりに涙がたまっていた。
目じりの涙をセイリオスがそっと拭う。
「力、うまいこと調整できないか?」
「うん、なんかちょっとかすごい、かしか、力入んない」
「そうか。しんどいな」
「うん……ぜんぜんきもちくない」
スピカが頭をポンポンと撫で、ヒカリの片方の手を汚れているのも厭わず、包み込む。
「ヒカリ、セイリオスの手好きだろ? ほら、片手は握っててもらおうな」
スピカがヒカリの片手をとってセイリオスの手と握らせた。
指と指の間にセイリオスの指が絡まる。
セイリオスの手をにぎにぎ。セイリオスもにぎにぎ。
皮膚の保護のためにつけていた軟膏が二人の手の間で音を立てた。
「片手は俺とこっちな?」
もう片方の手はスピカに導かれ、再び自分の性器にそっと触れる。
その上からスピカの大きな手が重ねられた。
「スピカの手もすきけど」
自分の手の上に重ねられた手を見てそう呟く。
「そう? じゃあ、やっぱり怖くなさそうだな。こうやって軟膏とかつけると気持ちいし、皮膚も傷つけないからな。いつでも使ってな?」
スピカのもう片方の手もやってきて両手ですっぽり包まれてしまった。
さっきは氷で冷たかったスピカの手は今はすごく熱い。
燃えるようだ。
自分で触れた時は力が一向に入らなかった。
しかし、今は。
こちゅこちゅ。
「どんなのがいいかな。一緒に探そうな。ここはどうだ?」
「う、もうちょとゆっくりぃ」
「強すぎたか? よし、じゃあ、先にこっちは?」
スピカに陰茎の方からもう少し下の方へと導かれる。
「こっちも刺激してやろうな。体と頭に教えると思ってな。今から、ヒカリが! さわりますよー。ほら声に出して」
「今から僕が触れるよー。スピカも触るよー」
やんわりもみ込むように触れるとギュギュっと動く。
ちょっと面白いな。
「ヒカリ、さっきより立ち上がってきてるな?」
「う、本当だ」
「次は、こっちもっと触ってやろうな。ここを撫でたり」
「あ」
「こうやって指先でなでたり、ここらへんとか、やってみるか?」
「うん」
指先で自分の性器を所々なぞっていくと、ぴくぴくする。
ぴくぴくするとお腹の底も一緒にずくずくする。
「よさそうだな? じゃあ、もうちょっと軟膏増やそうか。で、今度はぎゅって握れるか?」
ぎゅっと恐る恐る握るけど、やはり力が入りきらない。
スピカがそのまま力を入れすぎずに上下に動かそうなと声をかける。
でも少し動かしただけで、体が言うことを聞かなくなる。
力が入らなくなってセイリオスにもたれかかってしまった。
凭れ掛かったヒカリのおでこにセイリオスがまたちゅうをする。
だからそのまま手に力を入れて擦り上げようとするが、せりあがる快感に唇をかみしめた。
「ヒカリ」
スピカが囁く。
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