確かに俺は文官だが

パチェル

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第2章

暗躍するのはそこそこ得意7

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「じゃあ、今日もリハーサルだな」
「うん、よろしくお願いします!」

 今日も仲良く子供が二人、図書館で勉学に励んでいる。
 図書館で話しているからか、いつも声ははっきりとは聞こえない。しかも遠目にしか見れないからなおのことだ。

 二人で難しい本を読んでいるので、学校の課題でもやっているのだろうか。まじめな子供ほどかわいいものはない。生意気な子供も可愛いが。

 一人は群青色を持ち少し鋭い目つきをしている。
 が、あのきりっとした目元を赤く染めながらいい声で鳴かせるのがいいのではないだろうか。それもいいと思う。


 しかしだ。



 男が今欲しいのはあの日から男の心をつかんで離さない少年だった。

 その少年はフードをかぶって人目につかないように楽しく笑っている、難民だ。
 今日は全身を覆うようなローブを着ているのであのすらっとした手足、細い腰が見えなくて残念だった。

 肌はきめが細かくて吸い付くようで、サラサラの髪の毛から少し香る汗のにおい。何よりあの漆黒の瞳。パチパチと瞬きをする賢そうな目。

 あの目から流れる涙はどんな味だろうか。
 あの小さな口から洩れる嬌声はどんな音だろうか。彼の中の熱はどれほど熱いのだろうか。

 あの小さな口に、まだ見ぬ彼の柔らかな双丘に早く欲望をねじ込んで泣かせたい。鳴かせたい。啼かせたい。
 日に日に募る欲望で何も手につかなかったじゃないか。なぁ。


「フィル、僕ちょっと、お手洗いに」
「おぅ、付いて行こうか?」
「いいよ、一人で行けるし」
「そう言えば、さっきあっちのトイレ清掃中だったぞー」
「りょうかーい」

 ターゲットはいつも通りフードを目深にかぶったまま、リュックを背負ってトイレへと急ぐ。
 フードで隠しているつもりかもしれないが、それだと視野が狭くなるだろう? こちらの事にも気づかない。そういう抜けてるところも可愛いな。

『えっと、トイレってあとは、どこにあったかな。二階と、中庭と、旧館と……』


 図書館の地図を見てトイレの場所を確認しているヒカリはもちろん気付かなかった。
 フードを目深にかぶっているのは珍しい色を持つヒカリが噂の子どもだと気付かれないようにするためもあるのだが、そのせいで確かに周囲は見づらくなっていた。


 ヒカリが少し早歩きでお手洗いへと急ぐと、仲のいい図書部員と会ったようで話しかけられていた。
 それを物陰から見ながらチャンスが来るのを待ち続けるのもじらされているような、興奮につながるようで男の欲望が独りでに増していった。

 彼がどこのトイレに行くかによって作戦を変えなくてはいけない。

 こんなチャンスはもうないかもしれない。

 子供を調達して、調教し、出荷するのが男の仕事だった。
 天職ともいえるその仕事は今この時の出会いのためにあったのかもしれないと男は思った。

 最初はその体のラインを見て、目を付けた。
 攫われてきた子供を調教するのが主だった。が、たまに自分でも攫いに行くことがあった。自分の好みの子供が常にほしいと思っていたため、欲望に忠実に子供を手に入れたのだ。
 気に入った子供は調教しつくして大きくなってしまえば売る。

 その日は、本当にたまたま町にいたヒカリに目を付けた。

 カタコトで話すからには異国の子どもだろう。
 しかし隣を歩いている男を見るに親ではなさそうだ。似てもいない。売りでもしているのかと思って眺めていた。

 もし、空いているなら自分も相手してもらおうかな。
 しかし、その子どもが図書館へ行くのを見て男娼ではなかったのかと男は。
 喜んだ。


 図書館で勉強する真面目な少年。
 調教されていない少年。

 欲しいなと何なら涎を垂らして機会をうかがっていた。情報も集めた。
 どうやら、難民らしく今は保護を受けているのだとか。
 そういうルートで手に入れてもいいか。


 しかし、彼の周りはガードが固くなかなか手出しができない。そこできた機会に男は近づいた。近づいてその瞳を見たとたん。

 興奮して自制がきかなくなった。
 その肌に少し触れてみよう。
 その臀部の感触を少し楽しもう。
 その声に苦痛をのせてみたい。

 他に誰かがいるかもしれない、神聖な王城の図書館で襲われるなんて、この少年の心にどんな思いをもたらすだろうか。


 誰にも助けてもらえないその時この瞳はどんな色で自分を見るだろうか。

 今この体の下でやめてと言う少年は。




 そう思った時魔力を発動して、彼に雷流を食らわせていた。

 苦しそうに呻く少年は混乱したのか、しびれた体をバラバラに動かして必死にもがいた。

 そのぶつかる体が気持ちよくて。
 その後も抵抗する彼の体温を奪い、徐々に抵抗が弱まったところを嬲ろうとしたところで邪魔が入ってしまった。滅多に人が来ない館内に人が来たのだった。

 まずいと思って目深にかぶった帽子から、確認すると怖がって呆然としている少年だったので、むしろ見せつけるようにした。

 しかし、その後に図書部員が来たので、逃げるしかなかった。身体強化をする道具を使いもした。

 顔を見られたからには確実に彼を消すか、男のものにするしかないだろう。
 男はもちろん後者を選んだ。
 難民の権利は近年高まりつつあるが、市民権は低い。
 一人二人消えたところでだれも何にも思わないし、だれも傷つかない。どころか有効利用されるなら本望だろう。



 その時の感触と匂いを思い出しながら尾行をしていると、人通りの多い広間に出た。
 この道を右に行くと中庭へ、左に行くと旧館へ行く道だ。どちらに行くかなと少し遠くから眺めていると、視線を遮るように中庭の方へ向かう大きな棚を運んでいる連中が現れた。

 男は見失ってしまうと少し焦って前に飛び出したが、少年は旧館の方へ向かう道を選んだようだった。
 ふらふらと旧館へ向かう道を進んで戸口に消えるリュックサックが見えた。

 やっぱり君とは気が合うと思う。
 男はより簡単な道を選んだ少年に笑いかけた。


 小さな足音がタタタと聞こえる。
 それを後ろから姿を見せないように柱の陰から時折覗き着いて行く。旧館は人気がほとんどないため焦る必要がないのだ。

 フードをかぶったままきょろきょろとあたりを見回している。
 もしかして思い出しているのかな。ここは君が襲われた場所に似て人気が少ないから、今更気付いたのかな。
 しかし少年はトイレへと歩みを進めた。


 男は周りに人がいないのを確認して歩みを進めた。
 しんとしたトイレに入ると、小便器の方には用がなかったのか少年はいない。とすると個室の方かと音を立てずに近づく。案の定、3つある個室のうち真ん中の個室が埋まっていた。

 個室の方がもっと事が捗ってしまうよ。

 笑いそうになる口を必死に抑えて扉に手をかける。
 こんな簡単な鍵なんてないにも等しい。
 蹴破って驚いているところを襲おうか。

 それとも鍵を開けて油断しているところを口を押さえて入り込もうか。
 持ってきた袋に入れる前にまた味見をしてしまいそうな妄想が脳内に繰り広げられる。


 ジャー。


 水を流す音がした。
 






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