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第2章
過保護になるのも仕方がない22
しおりを挟むいや、お前知ってるよな?
めっちゃ最近の話だよな?
十四、五年ちょっと位前だからな。この話。
しかも魔道具関連課なら知ってる話だ、あの上司の逸話として聞いてないやつはいない。
あの地獄の三か月はこいつの整理整頓ができていたら3日で解決していたんじゃないか伝説。先輩にも聞かされてるはずだし、何ならセイリオスも関係者だ。
「そっかぁ、それでヒカリくんはどうしてそんな話を俺に?」
ようやく戻ってきたか、お茶もう一杯入れてこよう。
「あのね、だからね、ありがとー」
「え、何が?」
「今、タウさんが素敵って言ってくれた絵。これがあるから描けたでしょ? だからタウさんにありがとうって言いたい」
「でも、俺その時、まだ仕事してないよ?」
まるで子どもと話しているような気になって、タウはヒカリに伝える。その話は俺じゃないのよね。
しかし、ヒカリは首を傾げてニカッと笑う。
「うぅん。おなじよ? まどーぐかんれんか。その時とかわてない。いつもいそがし。誰かの為。未来の為。昔の人も同じ。未来の為がんばた。だから、ありがとー。いつもありがとー。つながてる。過去と今と未来と。それにタウさんとセイリオスと、作る人と、使う人と、ヒカリとね? でしょう?」
疲れた社会人の体に言葉が浸み込んでいった。
思わず抱きしめそうになってしまう自分に驚く。その勢いでキッチンの方へ振り向く。
「せいりおすぅー、いい大人が泣いちゃうよー。泣かされちゃうよー。助けて―」
だから何で俺に助けを求めるんだ? 新しく入れてきたお茶を運んできたセイリオスにつかみかかろうとするタウを足蹴にして席へと戻る。
「ほら、どけって。こぼれたらお前ただじゃおかないぞ」
と言うとタウも正気に戻ってソファに座りなおす。
ヒカリはちょっとびっくりしている顔をしている。あの顔は恐らく、そんなに仕事忙しいのだろうかと思案しているのだろう。もじもじし始めたぞ。次は何だろうか。
「そうだ、ヒカリ。手紙の配達料金もう渡したのか?」
「あ、忘れてた!」
ポケットからヒカリが正方形の財布を出して金具に巻き付けてある紐をグルグルと解く。その中から50セルを取り出しタウに差し出した。
「タウさん、ありがとうございました! ……あとこれも!」
タウも手を差し出し料金を受け取る姿勢をしていた。その掌に50セルが置かれ、もう一つヒカリがポケットから何かを掴みぽとりと落とす。
「頑張ってるからご褒美! すごくおいしいよ」
そこにはヒカリが最近気にいってる飴玉が一つ。タウが止まる。
「ごほうび……久しくないな。そういうの」
小さい声で呟き震える。そんなタウにヒカリはまずいと思ったのかさらにご褒美を上乗せする。
「えとぅ、タウさんがよかったら、このペンで絵を描く? 」
「え、描いてくれるの?」
若干戸惑い気味にウンと頷くヒカリは恐らく、ペンを貸してあげようとしただけで描くとは言っていない。ヒカリの評価は自分の絵と言うよりペンがすごいからという評価になっているのだ。
「うん? そんなにヒカリの絵ほしい? タウさんの方が上手じゃない?」
「うん欲しい。ヒカリくんを知ってるから欲しいのかも」
「え?」
「あー、そうだな。ヒカリが描いた絵にはさ、ヒカリの気持ちとか思いがこもってて、ヒカリが好きな人からしたら、あると家が温かくなるんじゃないか? 癒されるというか、元気になる。ヒカリの嬉しいって気持ちとか幸せを分けてもらってるような気持ちになるんだ。だから、俺も欲しくなるよ」
そう伝えるとヒカリはポポポと頬を真っ赤にした。
耳まで赤い。そして照れて恥ずかしそうに口角が上がり、最後は満面の笑みになった。
「そういうことなら、わかる、よ。僕も弟の、絵、飾ってたから。同じね?」
そのあとは何の絵が欲しいの? とヒカリが聞き、タウがヒカリくんの好きなものを描いてほしいといえば、また悩んでいた。
「それにさー、この色ペン珍しい色ばっかだね。高かったんじゃない? お財布もいい財布買ったね? やっぱり初給料は夢があるよねー」
「あ、その、これは自分で買ってないの……。その、貰ったの。あのね、起きたらあった。知ってる?」
「あぁ、精霊の歓迎が来たの? そっか。よかったね」
そうタウが言うとヒカリは目をパッと開いて驚いた顔をした。
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