亡国の姫と財閥令嬢

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水無月時雨と木葉という名前

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 水無月時雨は水無月家の3姉妹の長女であり、研究者でもある。時雨の研究の都合で文乃に神無月を預けているのだが母親らしいことはしたことが無い。それというのも神無月の父親は神無月が産まれてすぐある事件に巻き込まれて逝去している。時雨は研究に没頭するあまり育児を妹の文乃に任していたのだが、当時の当主である母親に現在の研究を続けるなら時雨おまえを表舞台に出すことは出来なくなるが覚悟は出来ているのかと問われて時雨は、この研究を始めた時からこうなる覚悟は出来ているという。


 「もう一度確認するけど時雨、本当にいいのね?この手続きが終わればあなたは神無月と会えなくなるのよ?」

 当時の水無月家当主である母親に本当に手続きを進めても良いのかと問われるが時雨はかまわないとう。水無月家のしきたりで長女以外当主になれないとされているのだが例外は存在する。長女がなんらかの理由により失脚または逝去した場合次女を長女として扱い当主にすることが出来るものとされている。このしきたりは水無月家の者であれば誰もが知っていることであり、長女が逝去した場合の手続きも代々伝えられている。時雨の死亡を偽装して文乃が長女として扱われている。時雨の表向きの名前である水無月木葉は文乃の妹で皐月の姉という事になっている。よほどのことが無い限り時雨は木葉として水無月家に居る事が無い!時雨は普段水無月家の研究施設で暮らしており先ず、研究施設から出て来ることは無いのだが必要な事があれば水無月木葉として本家邸宅に顔をだすことがある。

 時雨の1人娘でもある神無月は水無月木葉が実の母である時雨ということは知らされていない。時雨が研究施設から出ようとしないのも神無月と顔を合わさないためとも言われているが本当のところはわかっていない!時雨本人も語ろうともしないし語る気も無いらしいのだが弥生にはすでにバレており時々水無月桃月の名で本家邸宅に呼ばれている。

 「しかし、桃月って誰に似たのかしらね?」

 「あら、貴女からそんな言葉が聞けるとは思わなかったわ!」

 「それに弥生桃月も貴女のことを思ってのことでしょうしね。」

 「私は関係ないでしょ?それにあの娘がわたしに関わる理由が無いじゃない」

 「そうね、木葉としてなら関わることはないわね。でも、私の姉時雨としてなら関わる理由はあの娘にもあるのよ!」

 木葉時雨は文乃に姉と呼ばれることに少し戸惑いを感じながらも自分がこうして話が出来るのも文乃のおかげであることは知っていた。実は時雨と文乃は皐月とは違い一卵性の双子であるのだが、水無月家において双子は禁忌とされており、双子が産まれた場合どちらかを処分することになっているのだが、時雨たちの母親で当時の当主は死んだことにして名前を変えさせて妹の木葉として暮らすようにと時雨に命じていた。

 「しかし、本当にこれで良かったのかしら?母親としては良いけど当主としては失格かも知れないわね?」

 「奥様のお気持ちもわかりますがしきたりはしきたりですので、どんな形にせよ守って頂かないと当主として他に示しが付きません!」

 「いっそのこと、このくだらないしきたりを私の代で終わらそうかしら?その方が良いと思うのだけれども無理かしら?」

 「奥様、それは他の方々を納得させるだけの理由が必要でございます!」

 「そうね、男児は産まれない様に選別しているのでしょ?双子が女児と男児の場合のみ男児を処分するという形なら問題無いと思うのだけれど?」

 「確かに、それでしたら他の皆様にもご納得していただける可能性はありますな!ですが、女児の双子だった場合はいかがなされるのでしょうか?」

 「そこは当主のさじ加減としか言えないわね!私のように娘の死を偽装するのか、それとも別の家に養子に出すのか、処分するかはその時の当主にしかわからないもの。」

 水無月家は如月家のように産まれた月を名前にしていないため名前の偽装は出来るが戸籍をどうするかは当主に委ねられている。一卵性の双子であれば姉と妹を逆にすることは可能である、なぜならどちらが姉でどちらが妹かは産まれて来た順番以外で決められないからである。水無月家では双子の場合先に産まれた者を妹とし後から産まれた者を姉としているのだが、他家では先に産まれた者を姉とし後から産まれた者を妹とするところが増えたため双子に限り大人になってから双子のどちらかに不幸があった場合のみ続柄を当主の判断で変える事が出来るとしている。木葉こと時雨と文乃は、このケースに当てはまるため文乃を姉とすることで時雨の死を偽装したのではないかと実しやかに囁かれていた。

 「そういえば、先代が処分したはずの男児の遺体は確認出来たのかしら?」

 「それが少し困った事になっていまして御当主様の意見お聞きしようかと思っていた次第です!」

 「私の意見が必要ということは学院絡みかしら?そうね、もし学院絡みなら水無月家みなづきとしては由々しき事態だわ!」

 「それはどういう意味でしょうか?」

 「文字通りよ!あなたはまだ、この学院に来て間もないから知らないと思うけど、ここのセキュリティはね学院に血縁者がいる者と理事長以上の許可が無い限り学院の門の中に入ることは不可能なのよ!遺伝子レベルで登録してあるのだから例え変装しようと足跡1つあればどこの誰まで暴けるもの!」

 「そこまでする必要がこの学院には必要なのですか?」

 「あら?必要よ生徒は少なくとも王族とその血縁者ばかりなのだから!王族に何かあった場合あなたは責任取れて?」

 「それは流石に無理でございます!申し訳ございません。失礼を承知でお聞きしたいのですが、なぜ平民の娘が学院にいるのでしょうか?」

 「あなたが平民と言ったのは、どこの家の事かしら?」

 「水上と編入生のことでございます!」

 「あなたは本当に何も知らないのね?あの娘たちの出自を知らないから平民とか言えるのでしょうね。水上がどちらの水上を指すのかわからないけど、あの一族は王族より格上だしアルテミス・神前の神前は元王族若しくは王族に付ける事が許されていない苗字なのだけれど?そんなことも知らずに私に何を吹き込もうとしたのかしらね?」

 文乃の言葉に絶句する執事風の男は顔は蒼褪めており、今にも倒れそうな状態で息をするのがやっとで、文乃から放たれる殺気のような空気に耐えられるはずもなく立ったまま気絶してしまう。

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