愚者と聖女と姫巫女

アレス・オーランドの秘密

　アレス・オーランドには、ブライアン家とオーランド家の当主しか知らない秘密が存在する。アレスがブラインではなくオーランドを名乗って居る理由が、それである。アレスはアーノルド・ブライアンがシルヴィアに無理やり迫って孕ませた子供であることは間違え無いのだが、なぜブラインの家名ではなくオーランドの家名を名乗る事になったのかはアーノルド・ブライアンは知らない。シルヴィアはスコットからある程度の事情を教えられていた為、びっくりする事無く受け入れたのだった。

　「父上、なぜ？私の息子であるアレスがブライアン家ではなくオーランドの家名を名乗る事になるんですか！」

　「すまないな、アーノルド。これも我が一族が生き残るために必要な事なのだよ！諦めてくれ。」

　「納得出来ません父上、どうしてアレスなんですか！」

　「それは現当主であったスコット・オーランドが男児が産まれる前に亡くなったからとしか言えぬ！わかってくれ息子よ、私もツラいのだ！」

　「それでは我が家はまるでオーランド家の・・・・」

　「言うな！それ以上は我が家が滅びかねない！」

　アーノルドは父親であるアース・ブライアンの言葉の意味が理解出来ずにいた。なぜ？オーランド家に纏わる話がブライアン家の滅亡に繋がるのかアーノルドは意味がわからないという表情をするも父親の必死な説得により、理解は出来ないが家が無くなるのは困ると思い直したのだった。

　「しかし、アレスが対象になるとはな。まあ、考えてもどうにもならんのだが納得は出来んな！」

　アーノルドが執務室に戻って頭を抱えていると扉の方からコンコンとノックされる音が聞こえて来た。アーノルドは何事だと返事をすると使用人はお客様がお見えになっておりますと告げた！

　「私は忙しいのだが、そのお客とは誰だ？」

　「大変申し上げにくいのですが宮殿からの使者のようです！」

　「宮殿からの使者だと？（なぜだ、なぜ宮殿から使者が来る？あの事に関しては関与した事実は消したはずだ！）わかったすぐに行く！」

　アーノルドは宮殿の使者が来た事によって意外な事実を知ることになるのだが、起きてしまったものはもうどうにも出来ないのを理解していた。

　「お待たせしました、アース・ブライアンです！それで今日はどういったご用向きでしょうか？」

　「これはご丁寧にありがとうございます。わたくしは宮殿の使者として参りました者です。宮殿の仕事上名前を名乗れない御無礼をお許しください！」

　「そうでしたね、宮殿関係者は役職でしか呼んではいけないのでしたね！」

　「今日、ブライアン家に赴いたのはスコットランドヤード家に連なる者がオーランド家の当主をお探しのようでして何かお知りではないかと赴いた次第でございます！」

　「スコットランドヤード家ですか？なぜ？オーランド家に関係のないスコットランドヤード家がオーランド家の御当主を探しているのかお聞きしてもよろしいですかな？」

　「はい、元オーランド家当主スコット・オーランド様がスコットランドヤード家がある国の高貴なるお方から預かったお子であることがわかりまして探している次第でございます！」

　「それで、なぜ我が家に来ることになるのかがわからないのだがご説明してもらえるかね？」

　「実は調べてから分かったことなのですが、スコット様は我が国が授けたオーランドという名前と同じ名前の高貴なる方だった事が、最近わかりまして相手側からスコット様が亡くなられてた場合、その国に責任を取ってもらうと言い出されましてスコット様が縁を結ばれていた場合は血縁者の男児もしくは配偶者を見つけない限り滅ぼすとまで言われていますのでご協力をお願いしたくお話に来た次第です！」

　「そうですか、確か彼には男児は産まれなかったと聞いていますが、その場合は配偶者だった者を連れて行かないいけないという事ですよね？」

　そうですねと宮殿の使者はいうのだが、アーノルドにしてみればやっとの思いで手に入れたシルヴィアを手放さないといけないという意味になるのだが、自分のせいで国が滅ぼされては堪らないという気持ちになるが納得は出来ていない。冷静を保つのに必死なアーノルドに宮殿の使者はさらに追い打ちかけるようなことを言い出すのだった。