愚者と聖女と姫巫女

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アーノルド・ブライアンという男

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 アーノルド・ブライアンの家は先祖が功績をあげ爵位をもらった家柄なのだが、何代か前の当主が妾の子を養子にしたこともあり、ブライン家は伯爵以上の爵位を賜ることはなくなったという。この国では先祖からの血筋以外の血が入ることを嫌う貴族が多くいるため王家では一定以上の爵位にしないという規則が出来たのだった。

 ブライアン家の祖とされているアーガスは剣術に長けていたとされており、髪はくすんだ青色で眼は紫色をしていたということだった。代々受け継がれていた髪色もある時期から色が変わり眼も紫から紅のような色になったという事だった。ブライアンの血筋はみんな剣術に長けているのだが、アーノルド・ブライアンには、剣術の才能が受け継がれずに産まれて来たという。

 シルヴィアとの間に産まれたアレスは父親のアーノルド・ブライアンには無かった剣術の才能があったのだが、アーノルドが剣術の才能が無かったため自分で剣術を教えることが出来ず父親であるアース・ブライアンに息子アレスに剣術を教えてやって欲しいと依頼したとのことだが、これが他の貴族の耳に入り良からぬ噂を立てられてしまう。アーノルドとアレスは、実は親子ではないのではないかという噂が流れる。

 アレスはアーノルドがシルヴィアに無理やり迫ったあげくに孕ませて産ませた子供であるのは間違えではないのだが、貴族はおもしろおかしく噂をたてるのだが真実はどうでもいいかのようにウソとわかる噂でも利用するのが、この国の貴族である。

 アーノルドがやたらと敵視していたのがシルヴィアの元夫の故スコット・オーランドである。アーノルドがスコットを意識し始めたのはシルヴィアと2人で居るところを見かけてからなのだが、アーノルドが一方的に敵視しているだけでスコットは知らなかったのである。アレスがアーノルドの息子であるにも関わらずオーランドを名乗っているのは、アーノルドとシルヴィアの結婚をブライン家が認めておらず仕方なくシルヴィアにオーランドを名乗らせるように頼み込んだという事だった。

 息子の頼みということもありアース・ブライアンは孫にあたるアレスに剣術を教えることを承諾するのだが、アレスがオーランドを名乗っていることから貴族たちの間では実子ではないのではと言われるようになったのだった。アース・ブライアンは息子の子供ということもありアレスに甘いが、アレスから見て祖母にあたるシェリー・ブライアンはアーノルドとシルヴィアの関係を認めていないため剣術の稽古はシェリーがいない日に限られている。


 アーノルドがシルヴィアに固執する理由は父親であるアース・ブライアンでさえ理解出来ていないし母親であるシェリー・ブライアンでさえ息子の考えることが理解出来ないというほどシルヴィアに対する感情が異常である。アレスをシルヴィアが孕んだ時は異常な喜び方をしており両親とも息子に怯える程であったという事だった。

 アーノルドがシルヴィアを欲した理由はシルヴィアの持つ痣の力であるが、シルヴィアの痣の力は痣が確認出来てすぐ封印されていたためアレスに遺伝することなく事なきを得ているのだった。アーノルドはアレスの痣がなにを意味しているのかまったく知らないでいる。アレスの痣は愚者と呼ばれるもので、この痣の持ち主は碌なことが起きず最後には悲惨な最期遂げるという伝承が残っているのだが、アーノルドはそんなことはお構いなしに喜んでいたのだった。

 アレスの痣とその力は本来封印するべきものであるのだが、痣の鑑定を出来るものがおらず人知れずアレスを蝕んでいくことになるとはアーノルドはこの時気付いていなかった。もう少し痣の事を気にしていればアレスに悲劇が起こることもなかったと言われている。
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