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6 報告2
しおりを挟む変わらない日々が穏やかに過ぎていきました。
リュエンシーナ様は変わらず楽しそうに侍女として仕事をし、私と一緒に
王宮中をまわり。
王子殿下方とも、侍女たちとも、仲良くなっていかれました。
もちろん国王陛下にお顔を見せに行かれることもあります。
私も変わらずリュエンシーナ様の先輩侍女として彼女を指導し、共に王宮中を
まわり。
侍女長から他のご令嬢達の様子を聞き、何かあれば対応し。
国王陛下への報告も、変わらず続けておりました。
人払いされた執務室で、私はリュエンシーナ様の近況を報告します。
近衛隊長は黙して控え、国王陛下も静かに聞いておられました。
しかし半年。一年。一年半と時は過ぎ。
リュエンシーナ様が成長され、花が開くように女性へと近づいていかれると
国王陛下のお言葉には、段々と焦りの色が浮かぶようになりました。
「そろそろ王太子妃にしたい、とあの子に話したいのだが」
国王陛下のお気持ちは良くわかります。
それでも、、私は、こうお返事するしかありませんでした。
「お待ちを……今はまだ《その時》ではございません」
「まだ駄目だと言うのか」
国王陛下は国を統べる方。そう感情を露わにされるわけではありません。
ですがその声には苛立ちがありました。
このままのらりくらりとかわすのにも限界があります。
私は頭を下げ、意を決して進言しました。
「……恐れながら。
リュエンシーナ様が成人されてからにされてはいかがでしょうか?
それでも王太子殿下は16歳。成人までまだ時間があるかと」
国王陛下は一瞬言葉を失ったようです。気配でわかりました。
近衛隊長に至っては……睨みましたね?
ですがどうしようもありません。仕方がないでしょう。
気付かれないように心の内で、私は大きなため息を吐きました。
仕方がないでしょう。
ならば察してくださいませ。
教えて差し上げるわけにはいきません。
私が言えることではないのです。
ご自分たちでお気付きになってください。
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