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7 謝ればなんでも許されると思うなよ?! ―中堅・アイラ―

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「エ、テイデン?貴方、ナウリアちゃん《も》好きだったんじゃないの?」

皆がまだ言葉を失っている中、エイデンの母が息子に駆け寄ると聞いた。
エイデンはしゃくりあげながら答える。

「別に。ナウリアのことはなんとも思ってない。
ただ気持ちよ……楽しかったから」

「そんな。じゃあ貴方はアイラちゃんだけが好きなの?」

「……うん」

「エイデン。それならナウリアちゃんとは別れて。
アイラちゃんに謝って、許して欲しいって言わなくちゃ……」

「うん。もうナウリアとは別れる。アイラ……ごめん」

エイデンの言葉を聞き、エイデンの母は息子の頭を優しく撫でた。

「アイラちゃん。
エイデンは確かに不貞をしたかもしれない。
けどこうやって謝っているわ。今回は許してやってくれないかしら。
お願いします」


―――ああ、懐かしい。

一連のやり取りを見せられたアイラは思った。

―「いい?エイデン。悪いことしたらごめんなさいって謝るのよ。
そしたらみんないいよって許してくれるわ。
また仲良しさんに戻れるのよ」―

小さい頃、おばさんがエイデンに言うのをずっと聞いていた。
けれど、こんな……。
こんな……。

こんな腹立たしい気持ちで聞くことになるとは思わなかったわ!


アイラはうふふ、と可愛らしく笑ってみせた。

「おばさん。じゃあおばさんはエイデンがしてたことを、おじさんがしてても許せるのね?」

「え?……も、もちろんよ?」

「そう。なら言っても大丈夫ね。
ナウリアはね、エイデンに言い寄る前にウチの父さんに言い寄っていたの。
彼女、かなり年上の男性も好きなのよ。
だからおじさんに言い寄っていたのかもって私、心配してたの。
ほら、おじさんは父さんと同い年で、父さんより男前だし?」

エイデンの母の顔が強張った。

「―――――え?」

―――嘘だよ。父さんの方が百万倍いい男だよ。

という思いを込め、父を見てにやりと笑ったアイラ。
アイラの父オリバーは、それだけで娘が何をしたいのか悟った。
そこでうんうんと大袈裟に頷いてみせた。
もちろん参戦したのだ。

「―――ああ、そうだな。ケイズ。
お前も言い寄られていたんじゃないのか?ナウリアに」

「なっ!何を言うんだオリバー!そんなわけないだろう!」

「隠すなよケイズ。
だからお前、ナウリアがこの家に来ることを許していたんだろ。
《ナウリアちゃん》なんて呼んで、鼻の下伸ばしてまあ……。
ナウリアと不貞を働いていたのはエイデンだけなのか?
お前、好きだものなあ。
ナウリアのような、若くて綺麗な女の子が」

「―――――」

にやにやと笑うアイラとその父オリバー。
言葉をなくしている妻を見て、エイデンの父ケイズは震え上がった。

エイデンの母は普段、大人しい。
夫をたてる妻であり、一人息子のエイデンには甘い母だ。

だが一旦怒ると怖い。
特に夫と女性の話題は禁忌だ。

「よせ!なんてこと言うんだ!
ナウリアはエイデンのところに来てたんだぞ?」

妻怖さか、言い訳に力が入るエイデンの父ケイズ。
アイラと父オリバーは黒い笑いが止まらない。

「でもナウリアは毎日来ていたんだろう?
エイデンがいない時間も、もちろん奥さんがいない時間もあっただろう。
機会はいくらでもあったよな。
《まだ》何もなかったにしても、狙ってたんだろ?
可愛い《ナウリアちゃん》のことを」

「やめろ!そんなわけないって言ってるだろう!」

「ムキになるなんて。怪しいなあ」

突然、エイデンの母は顔を覆って泣き出した。

「―――――ひどいわ。
貴方が《ナウリアを家に入れる》って言ったのは自分の欲望のためだったの?
エイデンのためだと思ってたのに。私は騙されていたの?」

「お、おい!誤解だ!」

泣く妻を前におろおろするだけで、何もできなくなったエイデンの父ケイズ。
アイラはトドメとばかりにトコトコと近づいていって、にっこり笑った。

「大丈夫よ、おじさん。
もしおじさんがナウリアと不貞を働いていたっておばさんは許してくれるわよ。
《ごめんね》って謝ればいいの。
――ねえ、おばさん?
《不貞はしたけどエイデンは謝ったんだから許してやって》ってさっき私に言ったのと同じよね?」

エイデンの母は
さっと立ち上がったかと思ったら鬼の形相でアイラを睨みつけ、そのまま夫ケイズを殴った。もちろんグーで。

「冗談じゃないわ!ふざけたこと言わないで!
この浮気者!未遂だろうが一生許さないからっ!」

アイラと父オリバーをはじめ、ソルディバ商会から来た全員の気持ちが揃う。


―――だろうな!―――


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