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第二章
22 復讐の先 ※お婆さん(占い師)side
しおりを挟む「許せないんです。―――あの男が」
と、アグストゥと名乗った男は歯噛みした。
そして次に
「なのに何故、貴女が!巫女様が!
あんな男の――元竜王の《番》などを匿っているのですか……っ!」
と憎々しげに言った時。
私はサヤをこの場に同席させなくて良かったと心底思った。
サヤは今、メイと家にいる。
「後で説明するから」と宥めたが……難しいかもしれない。
私はクルスとロウに縛り上げられ、地面に転がっている男――アグストゥを見た。
森の中だ。
私の家からも人の住む辺りからも離れている。
アグストゥに逃げられないよう厳重に結界が張ってある。
外に声は届かないから万一、仲間がいても助けは呼べない。
縛り上げている縄は私が捕縛用に編んだ物だ。解ける竜はいない。
だから別に地面に転がしておく必要はないのだが……気持ちだ。
私はアグストゥに、努めて冷静に聞いた。
「――それで。つまりお前はヴィント――元竜王が許せないから、彼の《番》であるサヤを狙ったというのかい?」
「…………」
アグストゥは返事をしなかったが、肯定と取って続ける。
「何故、直接ヴィント―――元竜王ではなく《番》のサヤを狙った。
サヤは私といる。誰が考えても直接、憎む相手を手にかけた方が簡単じゃないか」
アグストゥは血が滲むほど唇を噛んだ。
「……それじゃあ足りないんだ」
「足りない?」
「あの男のせいでっ!
あの元竜王のせいで《番》を失った私の……っ!
私たちの復讐が、あの男をただ殺すだけで足りるものかっ!!」
「《番》を失った?」
「―――そうですっ!
だから、あの男にも私たちと同じ苦しみを味あわせてやる。
《番》を奪われる苦しみをあの男にも!」
「元竜王のヴィントに《番》を失う苦しみを味あわせようとサヤを狙ったのかい。
サヤが私に守られていると知っていても」
アグストゥは
涙を溢しながらはは、と笑った。
「……貴女にはわからないでしょうね。
唯一無二の存在である《番》を失った私の絶望が。
この身体をどこまでも深く抉られたような恐ろしいまでの喪失感が。
《番》のいない貴女には……!」
「…………」
「いっそ死ねたら――《番》のところに行けたらどんなに楽かと思いましたよ。
だが、それでもあの男がいるうちは死ねないと思い直した。
あの男がいるから私はどれほど辛くても生きた。
ただ復讐の為だけに生きてきた。
そして復讐を果たしてきた」
「復讐を果たしてきた?」
「―――狙ったのはあの《番》だけじゃない」
「何?」
「復讐ですよ?あの男が消えるまでやるに決まっているでしょう?
狙ったのはあの《番》だけじゃない。
何度も。何度もあの男の《番》を葬ってやった!
復讐を果たしてきた!」
その場が凍りついた。
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