私の幸せは貴方が側にいないこと【第二章まで完結済】

ちくわぶ(まるどらむぎ)

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第二章

16 変化 ※お婆さん(占い師)side

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「じゃあ、俺は市場じゃなく少し離れたところから見張ることにするよ。
クルスに何かあればすぐに助けに行けるよう待機してる」

ロウは頭をかきながら言った。

「ならば私がここからクルスを《見て》いよう。
何かあればロウ。《伝える》からクルスを助けに行ってくれるかい?」

私が微笑んだまま言えば、ロウは頷いた。

「ああ。わかった」


「私は。何かお手伝いできることはありますか?」

メイが聞いてきた。
その目は真剣だ。

ロウとメイ。
二人とも、これまでより積極的に協力してくれるらしい。

クルスを知ったからだろう。
《竜気なし》の竜が、言われているような《感情なし》ではないと知ったから。

「メイはここに残ってくれるかい?
《見て》いる間、私は部屋に籠らなければならないからね」

頼めばメイも頷いた。


私の《見る》能力には弱点がある。

さほど遠くを《見られる》わけではないし、何より《見ている》間、私は全く動けなくなる。

目と耳が身体を離れ、別の場所ににあるようなものだ。
別の場所を《見聞き》するかわりに、自分のいる場所の方は見えも聞こえもしなくなってしまう。

メイには、ここにいて欲しい。


「そういえば、サヤは?まだ熱が高いの?」

客間の方に目を向けたロウに、メイが首を振って見せた。

「熱はもう下がったわ。今は薬で寝ているだけよ。
でもまだしばらくは動かない方が良いわね。
疲れが出たのでしょう」

「看病していたクルスと入れ違いに倒れるとはね」


「それにしても……元気がない気がするねえ」

サヤはいつも通りにしているつもりだろうが、どこか違った。
特にクルスに対してだ。
クルスが目が覚めてから急によそよそしくなった。


「もしかして、気づかれたんじゃないの?
クルスが倒れたのは、実は病気じゃなくて毒のせいだ、って。
誰かがクルスの命を狙っているって」

ロウはそう言ったが
「誰かサヤに話したかい?毒のこと」と聞けばロウもメイも。そしてクルスも首を左右に振った。

「だろう?もちろん私もだ。
誰もサヤに本当のことを教えたりしていない。
誰からも聞いていないのに、サヤが毒のことに気づいたとは思えない。
私たちの様子から、何か不穏なものを感じてないとは言い切れないが。
それより……」

サヤの眠る客間の方を見る。
そこには、まるで客間を守るようにドアの前に立つクルスがいる。

「クルス。サヤと何かあったのかい?」

クルスは
一瞬、言葉に詰まってから紫色の瞳を伏せ、言った。

「……別に。何も」

「…………そうかい」


―――そんな顔で言われてもねえ……。


そう思ったが、黙っておくことにした。

まずはクルスを狙った奴を捕まえること。
クルスとサヤのことは、サヤの体調が戻ってからだ。


「ともかく。今はサヤをゆっくりと休ませてやろうかね」

私がため息を吐くとロウが揶揄うように言った。

「婆さんは本当にサヤには優しいねえ」

「そうかもしれないね」と、苦笑する。



「サヤのこととなると、どうしても慎重になってしまうんだ。
我ら竜に比べ、人は儚いからね」


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