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第一章
14 酔う ※王子side
しおりを挟む父王が呼んでいるというので彼女を伴って行った。
父王は彼女を部屋の外に出そうとしたが、ならば私も出ると言えば黙った。
なんだ。
こうすれば良かったのだ。はじめから。
常識も慣習も知ったことか。
これからは彼女とずっと一緒だ。
「何を考えておるのだ!いきなり人に斬りつけるなど!
しかもお前が妃にと望む《その娘》の父親ではないか!」
父王は怒鳴った。
怒りに震えているようだ。
何が悪い?
あの男は彼女に触れていたのだ。
私の、唯一無二の《番》に―――
「聞いておるのか!」
「聞いております」
「なら軽率な行動を反省し、彼に謝罪を――」
「――冗談でしょう。反省も謝罪も致しません。あの男は彼女に危害を加えた。
息の根を止めてやりたかったくらいだ」
「な……」
「あの男の傷などしばらくしたら癒える些細なものでしょう。
これでもこらえているのですよ?
私は彼女に危害を加える者を決して許さない。覚えておいてください。
たとえ父である貴方でもだ。
それから――貴方が《その娘》呼ばわりしたのは私の唯一。
彼女を貶めることは許さない。もう一度言ってみろ……消しますよ?」
父王の目は面白いくらい見開かれた。
「何故それほど……その――令嬢に固執するのだ……」
「当たり前のことですよ。彼女は私の《番》なのだから」
「つがい……?」
「もうよろしいでしょうか。失礼します」
彼女の手を取り父王に背を向けた。
甘く香る彼女の香り。
あまりに甘美で幸福で
父王が最後に何か言ったが私には届いていなかった。
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