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13 痛み

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国王陛下から派遣された援軍のおかげで魔物は一気に討伐された。

辺境伯サマの不正も明らかになった。

辺境伯サマは魔物討伐の費用として国から与えられた金を着服していたそうだ。
そのせいで俺たち兵士の生活は苦しかったらしい。

ずっと搾取されていた俺たちは全く気づいていなかった。

この地しか知らないから他と比べたこともなければ、
村に住む人間の生活も似たようなものだったから。

雪の季節だけ魔物討伐にあたる兵士の給料なんて、そんなものだと思っていた。
慣れとはまったく、恐ろしいものだ。

辺境伯サマを捕縛し国王陛下のもとへ向かう隊は
誰が手配したのかは知らないが、この村を通ったらしい。

兵士たちに囲まれ、その怒りを一身に受けて震えていた辺境伯サマの顔には
誰に斬られたのか、大きな傷跡があったという。

残念ながら俺は見なかった。
たいそうな怪我をした俺はベッドの中にいたのだ。

まあ……良かった。
見ていたら何をしていたかわからない。


今日も任務前にタニアとカールが来てくれた。
他にも同僚たちが代わる代わる様子を見に来てくれる。

薬や食事を持ってきてくれる。
近所の人も、俺を気にしてくれる。

当分、兵士として働けなくなったのだ。
皆が生活の心配をしてくれたが……俺は生活には困らなかった。

俺には貯金があったのだ。
怪我が癒えるまで暮らせるほどの。

全く知らなかった。
わずかな給料しか貰えていなかった。
その給料も、貰えば俺は武器だ鎧だと結構使っていたはずなのに。

フィンリーはどう、やりくりして貯めていたのだろう。

部屋を見回した。

今は埃だらけだが、前はそうじゃなかった。

掃除の行き届いた部屋の窓からは青い空が見えた。
洗濯された、いつも清潔な香りのしたシーツ。服。
帰れば自然に出された、温かい食事。

「おかえりなさい」と出迎えてくれた笑顔。
安らげた暮らし。


……ああ、そうか。

守られていたんだな。


俺は
ようやく気づいた。

一方的に俺が守っているばかりだと思っていた。

砦に立ち魔物からその身を
兵士としての稼ぎでその生活を

だけど違った。

方法が違っただけだ。

あいつも俺を守ってくれていたんだ。

あの小さな身体で
精一杯、俺の身を、心を守ってくれていたのだ。


全身の怪我で包帯だらけの身体は
痛み止めを飲んでも昼夜を問わずあちこち痛んだ。

でも今は痛くない。


今、痛むのは

張り裂けそうに痛むのは―――――


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