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15 謁見1
しおりを挟む謁見は考えていたより早く叶いました。
国王陛下が調整をしてくださったようです。
彼――王太子殿下の婚約者を決める日まで、あとふた月ほどです。
早い解決を望まれたのでしょう。
謁見を求めた理由が彼――王太子殿下の婚約者候補の辞退について、だからでしょうか。
謁見は謁見の間で行われる公式なものではなく別の部屋を用意しての、書記も置かない話し合いということになりました。
朝からすぐにでも雨が落ちてきそうな曇天でした。
部屋に通された両親と私は、国王ご夫妻の後ろに彼――王太子殿下の姿があり、こちらを睨んでいるのを見て足が止まりました。彼がいるとは思わなかったのです。
それでもすぐにお父様は何事もなかったように進み、国王ご夫妻にご挨拶申し上げました。お母様と私も倣います。
「体調はどう?」と、王妃様が私に聞いてくださいました。
嬉しさと、申し訳なさで涙が溢れそうでした。
「この場のことは記録しない。どんな発言も不敬にはとらない。だから王太子の婚約者候補を辞退したい理由を正直に話して欲しい」と、国王陛下が言ってくださり、私は胸がいっぱいになりました。
国王陛下に感謝申し上げ、頷く両親に励まされ、私は姿勢を正すと決めていた通り、27歳まで生きた前回の話を《予知夢》として話しました。
まずは
今からひと月後ほどのうちに王宮の大時計が落ちたこと。
ふた月ほど先の王太子殿下の20歳の誕生日に私が、王太子殿下の婚約者に決定したこと。
二年後に、王太子殿下と私はタナスウェル神殿で結婚式を挙げたこと。
(通常、王家の結婚式に使われるセンライド神殿は老朽化が激しく手狭で、建て替えることになったが二年後の式には間に合わず、使えなかったこと)
五年後に、国王陛下が譲位され、王太子殿下が新たな国王陛下になられたこと。
そして即位と同時に王太子妃だった私は側妃となり、正妃には西の大国の第四王女カタリナ様が迎えられたこと。
……そしてそれから一年もしないうちに、お二人の間にはそれは可愛らしい王子様が誕生されたこと。
一方、側妃となった私は、別棟に閉じ込められ、カタリナ様に代わり王妃の執務をこなすだけの存在になったこと。
……もはや側妃ではなく、別棟に住む単なる執務係だと呼ばれ。
それを証明するように、国王陛下となられていた王太子殿下が私に会いに来ることは……私が亡くなるまで、ただの一度もなかったこと。
前回生きたこの先、約九年間の話です。夢ではありません。
ですが、私は《予知夢》として語りました。
そして。
いよいよ最期は毒杯を賜ったことを語ろうとした時です。
「―――そんなものはだだの夢だ!でたらめだ!」
彼――王太子殿下がこれ以上、我慢ならないというように叫びました。
彼はそのまま前に進み出て、咄嗟に私を庇った両親を退け私の腕をきつく握りました。
「いい加減にしろ、ロゼ!
何が《予知夢》だ!そんなもの、あるはずがないだろう!
何をやってるんだ!父上や母上まで巻き込んでっ!」
「離してください王太子殿下。私は、本当のことを――」
「――くだらない話をするのはやめろ!馬鹿馬鹿しい!
君はただ、私が別の女性を妃に迎えるのではないかと不安になっただけだろう!」
「………………………………はぁ……?」
これが私の声でしょうか。
思わず出た声の低さと冷たさに、私は自分で自分に驚いていました。
彼――王太子殿下も同じだったようです。
息を呑み目を見開いて私を見ていました。顔も青くなっている気がします。
とにかくわかってもらえるように話をしなければ。
そう思い、再び口を開こうとした時です。
「―――もうよい」
凛とした女性の声がしました。王妃様のお声です。
彼はびくりと身を固め、私から手を離して慌てて振り返りました。
そんな彼の後ろには――険しい顔をされた国王ご夫妻の姿があります。
国王ご夫妻は目を合わせ、頷き合うとすっと立ち上がり。
国王陛下がおっしゃいました。
「良くわかった。カーステン侯爵。手間を取らせた。
願い出どおり、ロゼ・フローラ嬢は王太子の婚約者候補から外すこととする」
王妃様がおっしゃいました。
「ごめんなさいね。ロゼ」
―――わかっていただけた。
私は涙をこらえて、両親と共に頭を下げました。
「―――父上っ!母上っ!待ってください!そんな――」
彼――王太子殿下だけは、納得できない様子で国王ご夫妻に詰め寄ろうとしましたが。
王妃様の一言で動かなくなりました。
「黙りなさい、王太子。
貴方はロゼを――いいえ。婚約者候補たちをなんだと思っているのですか。
侮るのもいい加減になさい」
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