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番外編02 糸 ※アリアネルの母王妃side
しおりを挟む再びハンナと二人になると、私はハンナにドアに鍵をかけいつもの木枠を持ってくるように言った。
木枠は少し大きさの違うもの二つ。
祖国の織物を編む時に使う物で、本来なら端を開けてたて糸だけが張ってある。
だが、私の持つ飾り用のそれらには、たて糸とよこ糸が枠いっぱいまで張ってあり、糸で方眼が描かれている。
置いてあった箱を下ろし、机の上には先ほど手にしていたタペストリーと弟からの手紙を並べて置いた。その上に、それぞれ大きさの合う方の木枠を置く。
タペストリーと手紙。
どちらもぴたりと木枠に収まった。
次に、生成り色の地に色々な色で紋様が刺繍されているタペストリーにぽつぽつと飛ぶ緑の位置と同じ位置にある手紙の文字を紙に書き出し、全て終わったら読んでいく。
―――おかあさま。
ああ、と思わず声が漏れた。
―――お母様。お変わりないですか?私は―――
目尻を押さえた。
はっと気づいてハンナを見る。
私はハンナを呼び、箱の中からもうひとつ入っていたタペストリーを手渡した。
生成り色の地に色々な色で紋様が刺繍されているのは同じ。
だがそちらは、その中を――ぽつぽつと、茶色が飛んでいる。
ハンナはそれを私から受け取ると宝物のように抱き、声を抑えて泣き出した。
私はハンナをそっと抱きしめた。
お母様。お変わりないですか?私は元気です。
私の織った布はどうですか?
レナと一緒に多くのことができるようになりました。
料理ができます。洗濯もお掃除も。
馬にも乗れます。野菜も育てられます。
叔父様はとても良くしてくださいます。
心配しないでください。
私は―――
私は今、幸せです。
応援ありがとうございます!
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みんなの感想(105件)
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moku1225 様
お読みいただき、感想まで。ありがとうございます。
言ってはいけない言葉ってありますよね。
しかも本人に聞かれたとわかってもフォローもしていませんし……
(フォローしたところでどうかではありますが)
それにしても……
作者しばらくお休み中で、しかも随分前に公開したこの作品をお目にとめていただけるとは。
え、一体どうやって検索を??
本当に嬉しいです。
ありがとうございました!
ねこのたま 様
お読みいただき、感想まで。ありがとうございます。
面白いと言っていただき嬉しいです。
ありがとうございました!
凄く良い作品で短いのに深いと思いました🥺✨
ありがとうございまさ👏👏
せち 様
お読みいただき、感想まで。ありがとうございます。
なんて嬉しいお言葉!光栄です!
こちらこそ、ありがとうございました!