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07-2 計画 ※王女アリアネルside
しおりを挟むアルノルト様たちのいた休憩室を後にして、レナと手を取りあっていたところを
お母様に命じられ、私たちの様子を見にきた侍女ハンナにつかまった。
そして私とレナは、お母様のお部屋にいる。
王女の私は生まれてすぐから個室を与えられていたし、国王であるお父様もだけれど、王妃であり多くの公務を担うお母様とお会いできる時間は少なかった。
たまにゆっくりお会いできる時と言ったら弟妹たちと一緒のお茶会くらいだったから、私はこのお部屋に入るのは初めてだった。
異国にいるのかと思うようなお部屋だった。
―――いいえ。
この国の物と、異国の――お母様の祖国の物がうまく調和されていて、独特な。でもとても落ち着くお部屋だった。
私はお母様とソファーで。
レナは部屋の隅でハンナと話した。
ハンナはお母様が祖国から連れてきた侍女で、レナの母親だ。
ハンナがこの国の男性――もう亡くなってしまったが、と結婚して、生まれたのがレナ。
つまり今は、お互い母娘での話し合いになっていた。
私の返事を聞いたお母様はすぐにこれからのことを指示された。
まずはそのウェディングドレスを脱ぎ、侍女の服に着替えなさい。靴もよ。
そして私が良いと言うまでこの部屋で隠れていなさい。
その間に髪を染めなさい。
どうやって?簡単よ。
この国には茶色の髪染めが豊富なの。
歳を重ね、髪に白いものが混じるようになった者たちが欲しがるから。王宮の者たちもこっそり使っているからすぐに手に入るわ。誰にも知られずにね。
ちなみに他の色はないのよ。
茶色系以外の髪色を持つ者は諦めるか、地毛でかつらを作るしかない。
髪を切るか、または日々抜けた毛を貯めるかしておいてね。不便よね。
―――それはさておき。
ちょうど結婚式に参加していた祖国からの使者がいる。
使者の公爵は私の弟よ。
貴女を祖国に連れて行ってくれるよう話をしてあげましょう。
この国では駄目よ。貴女の髪と瞳の色は目立ちすぎる。
でも私の祖国なら珍しい色ではないもの。見つからないわ。
わかっています。弟の公爵家でずっと暮らせと言うのではありません。
ですが貴女は、外を全く知らない。
いきなり一人で生活するのは無理よ。わかるでしょう?
頼れる人は必要ですよ。
あとは……花嫁の貴女がいなくなったとなれば大騒ぎね。
陛下はすぐに貴女を探すでしょう。
祖国の使者――私の弟が、貴女を祖国に連れ去ったと知れても困る。
私も、ハンナも妙な動きはできない。
……そうね。
そこまで言って、お母様は楽しそうに笑った。
「手伝ってもらいましょうか。アルノルトと一緒にいたという友人二人に」
「フリント様とダルトン様にですか?何故お二人に?」
「ふふ、手伝わせるにはもってこいよ。
誰にも漏らすはずがないもの。あの人にもね。
文官には貴女が消える方法を考えてもらい、近衛騎士には実際に動いてもらいましょう。
きっと必死に手伝ってくれるわ。
……王女暗殺を企てた友人と、それを放置した罪を一年の謹慎で見逃してあげると言えばね」
「え?」
「なんでもないわ。貴女には似合わない話よ」
そう言って、お母様は私の頬にそっと手をあてた。
「貴女の瞳は澄んでいるわね。綺麗すぎるほど」
「……お母様?」
「四人授かった子の中で、私の色を受け継いだのは貴女だけ。
予感はあった気がするわ」
「…………」
「狭いこの国も、駆け引きばかりの王宮も貴族も貴女には合わないわ。
お行きなさい、アリアネル。好きな場所へ。
……この国の慣例で乳母をおくしかなかった。
私が育ててあげられなくて……ごめんなさいね」
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