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05 絶望 ※王女アリアネルside
しおりを挟む「お前は何も心配することはない。のんびり暮らせば良いんだよ。
お前は身体が弱い。だから―――」
結婚式前の挨拶で。
国王であるお父様の言葉は私を絶望へ突き落とした。
私は王女だ。
何不自由なく育てられ、大勢の臣下に傅かれ守られてきた。
私が身につける物、食べる物、使う物。
そして心身に至るまで、私は私個人のものではない。
全てが国のものだ。
そう教えられていたし、それが王女に生まれた私の当たり前だった。
立派な王女となることが重要で。
立ち居振る舞い。知識。嗜み。
王女に相応しいものを身につけるよう教育を受けてきた。
すぐに熱や咳を出す弱い身体でも関係ない。
いいえ。そんな身体の弱さも努力で克服しなくては。
近い将来、私の身体の弱さを理由に婚姻を――政略を断られては困るのだから。
政略で嫁ぐ。
私はその日が来るのを待っていた。
遠い北の国から言葉も違うこの国へと――お父様のところへと嫁ぎ、両国の血を持つ子を産んだお母様のように。
国の役に立てる日を。
けれどそんな日は来なかった。
成長するにつれ、もう熱や咳を出すこともなくなった。
それでもお父様は「万一倒れたらどうする」と私をほとんど外には出されなかった。
それは私を心配されてのこと。愛情からだと思っていた。
けれど……違ったみたい。
私の婚姻に意味なんてなかった。
国のためでも王家のためでもない。
私は何も求められていなかった。
私がいる意味なんて……なかったんだ。
そう思い知らされる
お父様の言葉だった。
「お前は何も心配することはない。のんびり暮らせば良いんだよ。
お前は身体が弱い。
だから社交はせずとも良い。子は養子を迎えれば良い。
気にするな。
侯爵家には王女を迎え入れるに十分な報酬を与えておくから大丈夫だ」
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