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1000年目
08 出発前夜 ※セバス
しおりを挟む※※※ セバス ※※※
「おかえりなさい、シン」と、チヒロ様。
「ただいま帰りました」と、我が主人。
私は頭を下げ、唇を噛んで密かに笑いをこらえた。
私だけではない。
主人を迎えに出た者たちは全員笑いを噛み殺している。
何度聞いても……慣れない。
ここ我が主人の屋敷にチヒロ様が《遊びに》来られるようになってから。
お二人の間で必ずなされる挨拶だ。
《以前》いた場所の、家の者を迎える挨拶だとチヒロ様はおっしゃった。
この国では違うのかと聞かれれば同じですと答えるしかない。
違いはしない。同じだ。だが……
血縁者ではない女性で、帰宅した当主をその言葉で迎えるのは、当主の……とは言えない。
チヒロ様がご存知なく言われていると知っているので、我が主人も気にせず返事をされる。
それが見ている者にはたまらなく可笑しい。
小さなチヒロ様に、当然のようにさらりと返されるその姿たるや―――。
私は笑いを笑みに変えて頭を上げようとしたが――もう一度下げた。
「ねえ、ご飯は食べてきちゃった?」
「……まだですが」
数人がたまらずふきだしていた。
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