87 / 197
999年目
11 王太子妃来訪 ※エリサ
しおりを挟む※※※ エリサ ※※※
「王太子妃様?」
部屋に入ってこられた方を見て、チヒロ様が声を上げた。
王太子妃様は悪戯っぽくウインクされた。
「ふふ、貴女が来ないから私が押しかけてしまったの。
いいかしら?セバス。
できたら予定通り、チヒロとお茶会をここでしたいのだけれど」
「お久しぶりでございます、王太子妃様。
授業はここまでに致しますので、どうぞお茶会を。私は下がりますので」
セバス様が一礼をして去ろうとしたのを、王太子妃様は引き留めた。
「あら、いいのよセバス。
できたら貴方には加わって欲しいの。人数は多い方が楽しいから」
セバス様は驚き、部屋の中を見回し戸惑っている。
「いえ、お誘いいただき光栄ですが。
しかし、ご婦人方のお茶会に、私が参加させていただくわけには……」
「そんなことないわ。是非、参加して頂戴。絶対強いはずよ。ねえチヒロ」
「え?」
チヒロ様はこちらを向かれ、私と顔を見合わせた。
とてもいい笑顔の王太子妃様。
私は嫌な予感を覚える。(多分、チヒロ様も)
―――ま、まさか王太子妃様?
「ふふふ、どうしてもやりたくて持ってきてしまったの。ほら」
嫌な予感、あたったーーー!!
王太子妃様の侍女がうやうやしく持っていた包みを王太子妃様にお渡しする。
中身は貴族の似顔絵カードだ!
チヒロ様もそれを見て頬がヒクヒクしている。
「お、王太子妃様?それは……さすがにここでやるのは。
セバス先生もいらっしゃいますし……」
一方、王太子妃様はあくまで笑顔だ。
「あら、大丈夫よ。だからセバスには《一緒に》やってもらうんですもの。
――ねえ、断らないわよね、セバス?」
王太子妃様の目は捕食者のそれだ。
セバス様が困惑されている。
「は?あの、それは?」
「ふふ、貴方のことだもの。チヒロがどうやってこの国の全貴族を覚えたのか。
知りたいのでしょう?違って?」
「ええ、それはまあ……」
「それを今から教えてあげるわ。はい、これ」
王太子妃様はセバス様に貴族の似顔絵カードを渡した。
わあ、完全にセバス様を引き込んで共犯にする気だ。
後ろでは侍女たちが急いでテーブルと椅子など、お茶会のためのセッティングしている。
その前で、セバス様は王太子妃様から渡された貴族の似顔絵カードに目を通されていた。
「ほう。これがリューク公夫人シャナイア様が描かれたと言う似顔絵ですか。
貴族のフルネーム入りですね。
それにしても、ずいぶん特徴を誇張して描かれている……。
おや?こちらは?
……こちらはお名前と地位、役職が描かれている?
なるほど、貴族お一人につき二枚で一組みなのですね。
しかし、これを一体どう使うのですか?」
―――ブツブツと一人呟きながら一枚一枚、真剣に見ておられる。
そうこうするうちにお茶会のセッティングが完了した。
王太子妃様は
「突然来たからお菓子の準備が大変でしょう。お茶はあとでいいわ」と言って
南の宮の侍女を下がらせ、ご自分の侍女とご護衛にも外で待つように言った。
つまり完全に人払いされたのだ。
そして真っ先に椅子に座られた。
「……さて。すぐに遊んでも良いのだけれど。
――先ずは話をしましょうか。
座ってくれる?チヒロ。エリサ。そして貴方もよ、セバス」
0
お気に入りに追加
118
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
転生した元悪役令嬢は地味な人生を望んでいる
花見 有
恋愛
前世、悪役令嬢だったカーラはその罪を償う為、処刑され人生を終えた。転生して中流貴族家の令嬢として生まれ変わったカーラは、今度は地味で穏やかな人生を過ごそうと思っているのに、そんなカーラの元に自国の王子、アーロンのお妃候補の話が来てしまった。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる