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 その日の夜、おいしいオムライスを食べて片付けが終わり、テレビを観てまったりしていると彼が先にシャワーを浴びるよう言った。
「え、清さん先でいいですよ」
「俺は後でいい。先入ってこい」
 じゃあお先に、とシャワーを浴びているとドキドキしてきた。
 遂にこの時がやってきた。付き合って一ヶ月と少し、期間としては早い訳ではないがまともなデートは今日が初めてだったし、泊まった初日で迫るのはがっつきすぎかもしれない。いやでも俺も彼も大人な訳で。そういう雰囲気になって彼が断るならそこでやめれば大丈夫か。
「お先でしたー…」
 入れ替わりで彼が風呂場へ向かう。
 今日来たときにこっそり移した枕元のコンドームの箱を確認してまたリビングに戻った。
「清さん長いな…」
 俺が早いだけかな。清さんも期待して入念に体洗ってるとか。いや潔癖気味な彼のことだ。きっといつもこんな感じなんだろう。
 そんなことを考えながらテレビを観ていると風呂場のドアが開いた音がした。首にタオルを掛け半ズボンを履き、上半身は裸の状態で出てきた彼に視線が釘付けになる。髪が濡れてひどく色っぽい。そのまま台所で水を飲んだ。
「飲みたきゃ勝手に飲めよ」
 俺の視線に気付いた彼が言う。何故かすみませんと言葉が出た。
「暑いな」
 クーラーのスイッチを入れ洗面所へ戻るとドライヤーの音がした。どきどきしすぎて心臓が痛い。あの姿を見ただけで元気になる股間をクッションで隠して落ち着けと心の中で言い聞かせた。
 あれは狙ってやってるのか逆に全く意識していないのかどっちだ。
「よし、俺も水飲もう」
 台所で水を飲んでいるとシャンプーのいい匂いがした。振り返るとTシャツを着た彼がリビングへ移動している。使っているものは同じなのにどういう違いなのだろうと不思議に思った。髪をセットしていないと少し幼く見える彼の後ろ姿を見ながら水をごくりと飲み干すと俺も彼の隣へ移動した。
「あのー清さん」
「なんだ」
「キス、してもいいですか」
 一瞬目を見開いたが彼は頷いて目を閉じた。そっと口付ける。啄むようなキスを繰り返し首筋へ移動した。
「…っ」
 びくっと揺れて彼の手が俺の腕を掴んだ。
「すみません」
 調子に乗ったかと彼を見れば目を伏せたままぼそりと言った。
「…ベッド行くぞ」
「っはい!」
 彼を抱き上げ寝室へ入るとベッドにそっと下ろす。リビングからの明かりで彼の表情もうっすらわかり、心臓がばくばくした。
「清さん…」
 続きを、とキスをしながらTシャツの中へ手を潜り込ませる。細い脇腹を撫でて乳首を摘むとびくっと彼の体が跳ねた。
「ん、」
 シャツを捲り上げ腹から胸へ軽く音を立てながら口付け乳首を舐めると甘い吐息が漏れた。女の人と性感帯は同じなんだなと過去の経験を頼りに愛撫する。下半身に手を伸ばすと彼のペニスもしっかり硬くなっていた。ズボン越しに軽く握ると恥ずかしそうに身を捩る。
「脱がしますね」
「ちょ、ちょっと待て…っ」
 下着に手を掛けたところで彼のストップが入った。まさかのここでお預けかと彼を見ると、彼がゆっくり起き上がり俺のペニスに触れた。
「…してやるから、脱げ」
 いいんですか?! と言いたいのを堪えて黙って下着を脱ぐと彼の手がそっと触れた。そして顔を近付けぺろりと先端を舐める。
 あの清さんがフェラしてくれるなんて。エロすぎる。ていうか、気持ち良すぎる。丁寧に根元から先端まで何往復かしたところでぱくりと咥えた。暖かい口の中に射精しそうなのを必死で堪えて白い背中を撫でるとくすぐったそうに動いた。
「き、清さんストップ…っ」
 はぁ、と口を拭い顔を上げた彼のなんと色っぽいことか。早く彼と繋がりたいと逸るが、俺は男とするのは初めてで、ここからどうするのかは漠然とした知識しかない。ちゃんと勉強してくればよかったと後悔したがもう遅い。
「あの、すみません、俺、男の人は初めてで…」
 教えてくださいと言う前に彼があっち向いてろ、と言うので背中を向けた。
 ごそごそと布が擦れる音と水音が聞こえた。
「き、清さん…?」
「っ…ちょっと、待ってろ…ん、」
「──!!」
 耐えられなくなってそっと振り向くと彼は足を広げ自分の指を挿入していた。あまりに扇情的な光景に息を飲んだ。
「見るなって言ったろっ…」
 紅潮した顔で枕が投げられた。
「き、清さん、俺が…っ」
「あっ、馬鹿…!」
 彼の手を取り代わりに俺の指を挿入する。彼の体がびくりと震えた。先程彼自身で解していたので指はすんなり動く。二本目を増やし探るように中を擦っていく。
「清さん、痛くない? どこがいいですか? この辺とか?」
「っん、…あぁっ」
 腹側の少し膨らんだ部分を擦ると、聞いたことのない甘い声を上げた。慌てて彼が腕で顔を隠したので、俺は構わずその部分を押し上げる。
「あ、んんっ…ふ、あ、やめっ…!」
 彼のペニスからだらだらと先走りが溢れていたので、空いている手でそれに触れると大きく体を震わせて彼は果てた。彼の腹に飛んだ精液がエロい。はぁはぁと荒い息を整えるように唾を飲み込んだ彼を覗き込むと、きっと睨んで俺を突き飛ばし馬乗りになった。
「やめろって言っただろうが」
 俺のを掴んだ彼はいつの間にかコンドームを持ち慣れた手付きで着けると後孔に押し当て腰を下ろした。
「あ、清さんっ…」
「っん──」
 はぁ、と息を吐き髪をかき上げる彼の姿と締め付けにそれだけでイッてしまいそうだ。慣らすようにゆっくり腰を上下する彼に焦れて、下から突き上げると彼が仰け反って喘いだ。
「清さんエロすぎ…」
「うっせ、あっ、あっ」
 止めようと俺の腹に手を置くが全然力が入っていない。俺は起き上がって彼をベッドに倒すと先程見付けた彼の弱いところを擦るように腰を動かした。
「や、んんっ、まっ…て、やひろっ…」
「すみませんっ…無理っす…」
「そこっ、やだっ…あぁっ」
 押し返そうとする手を握り、強く打ち付けるとびくりと彼の体が跳ねた。堪らず唇を塞ぎ舌を絡ませる。
「んっんっんっ、いっく、やひろぉ…っ」
「お、れもっ」
 彼が射精したのを見て俺も彼の中へ吐き出す。そのままどさりと彼の隣へ倒れ込んだ。
「すげぇ気持ち良かったです…」
 顔を彼の方に向けると背を向けられていた。
「えっ」
 痛かったですか、と問えば別にと言うがこちらを向いてくれない。
「清さーん?」
 肩に顔を乗せると耳まで真っ赤になっていた。
「こっち見んな馬鹿っ」
 よっぽど恥ずかしかったのかと先程の姿を思い出し頬が緩む。
「…煙草吸ってくる」
「えっじゃあ俺も…」
 ティッシュでささっと体を拭き下着を履くと二人で換気扇の元へ移動した。火を点け煙を吐き出すと漸く彼はこちらを見た。
「清さん、大好きですよ」
 そう言うとまた照れたように目を伏せた。
「──俺も」
 口に運ぼうとした手が止まる。
「清さん!」
 顔を背けて煙草を吸う彼を抱き締めた。


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