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第3話
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人間界に入り、上空から手頃な人間を探す。
「貧富の差が激しいあの街なんてどうでしょう?」
「権力を笠にやりたい放題か……やっぱ、殺るなら肥溜めから生まれたような人間だよな。レヴィ、早速準備してくれ」
「"TV"! ふぅ……。これしながらの戦闘って実は結構しんどいんですよね」
この魔法はレヴィが実際見たものを、映像として魔界の魔族達に見せる魔法だ。
「一振りで終わらせるからその瞬間《ヴィジョン》、バッチリ撮ってくれよ」
地上に降りると声高に命令を下す私腹を肥やした貴族《ブタ》ども。それとは裏腹に、覇気のない奴隷達。
俺が死をもって救済してやるから、感謝して敬いなよ。
「皆殺しにするおつもりですか!?」
「ここが冥府《タルタロス》かのように絶望しきってんだったらいっそ殺しちまった方がいいだろうが!」
「魔族に歯向かう人間は殺すべきですけど、抵抗もしないのに殺すのはどうかと思いますよ」
「わかったよ。おい奴隷ども……いや、この場にいるやつ全員伏せろ!」
その刹那。傲慢な貴族《カス》どもをぶった切ると、解放された奴隷達が、メシアだなんだと叫びやがる。
「おいお前ら、俺は神じゃねー。あくまで魔族だ。助けてくれたなんて変な期待を持つのはやめろ。お前たちが生きてるのは歯向かわなかったから。ただそれだけだ」
「魔族は何を望む? 金か? 地位か名誉か!? なんでも用意出来るぞ!」
運よく躱《かわ》した貴族《クズ》が命乞いをしている。
「なら奴隷になりな。死んだほうがマシだって思えるほどの地獄を見せてやるぜ」
「許してくれ! 金ならいくらでも……そ、そうだ。私の権力《ちから》でこの国の王にしてやるぞ! それならば文句はないだろう!?」
「下卑たグールにも劣る醜い生物が! 奴隷達がお前に許しを請うた時、お前は解放《ゆる》してやったのか? いや……いい、そのドブ臭い口を今すぐ閉じろ」
ドスッ
断末魔が上がる間もなくレヴィが奴の胸を貫く。
「さて、中々ばえる画《え》が撮れたんじゃないか?」
「ええ、バッチリですよ良い宣伝効果になりそうです……って何ですかこれ!?
レヴィが移動した先に広がっていたのは魔族達の死体だった。
貴族《ゴミ》を守ってた衛兵が殺ったのか? いや、魔剣を手にした魔族が全滅させられてるんだぞ……?
思案を巡らせていると魔族が使ってたであろうボロボロに朽ちた魔剣をレヴィが渡してくる。
そこには巨匠オーディンの紋章が刻まれていた。
「……!? あのクソ女やりやがったな!!」
「レヴィ! 魔剣《こいつ》にかけられた魔法を追えるか?」
「追うって、そんなこと出来んのか?」
「もちろんです。魔法には個性がありますからね。思いついた魔法に想いを込める。同じ魔法でも想いが宿れば、もはやそれは違う魔法です」
「それじゃあ、こっちは頼んだぞ」
「了解です。任せてください!」
***
「あ!? なんだよこりゃあ!?」
店に戻って来た俺達に悲惨な光景が目に飛び込んでくる。
災厄はさらに続くようだ。
「こりゃひでーな。紋章の入った魔剣ばかりが壊されてる……」
そこにタイミングよく蛇女が店に入ってくる。
「オホホホ、ごめん遊ばせ。……あらまぁ、なんということでしょう! 私はあなた方に商売の基本をご教示してさしあげようと思ったのですが…… こんな状態では教えても無駄骨ではありませんこと!」
「ああ、蛇族に足があるくらい無駄だな。まぁ、俺達はお前みたいな卑怯者には絶対に負けないから、安心して商売に勤しんでなよ」
「な……! オホホホ……こんな状態で私達に勝てるですって? あなたは武具屋から魔界ピエロにでも転職なさってはどうかしら?」
「そうだな、お前に負けたら魔都中を裸踊りで練り歩いてやるよ」
「その言葉お忘れなきよう」
そして、グランプリ最終日も終わり運営から結果が発表される。
壊された魔剣の補充もなんとか間に合い、店も最後まで盛況だった。途中結果を見てもまず間違いなく優勝は……
「今年のMM-1グランプリ優勝者は……。蛇族です」
「なにぃ!? おいちょっと待て、売上げは俺らの方が上じゃねぇかよ!」
「なぁーに言ってるんだい?、僅差で蛇族の方が上じゃないかぁ」
運営もグルってわけか……。
「ふざけんじゃねぇ!」
「落ち着け!」
「で、でもよぉ……」
「何も知らない魔族達《オーディエンス》の前で下手に騒いでは奴らの思うつぼだ」
そうは言ったモノの時間がない。 クソッ! レヴィの奴はまだか……
「待たれよ!」
「あ……あなた様は……魔界商会の会長!」
「なんとか間に合ったようだね」
「そ……それは!?」
「それは? ……何だと言うのだね」
「いえ、何でもありませんわ」
魔剣を握った会長が睨みを効かせる。蛇女はその鋭い眼光を向けられひどく動揺している。
「それじゃあ試し切りといきましょうか」
ドスン
レヴィが岩をテレポートさせる。
「ふむ、これが本物の魔剣ならばこのような岩などすんなり斬れるというわけだね」
「ええ、もちろんです。軽く当てるだけで豆腐みたいにスパスパ斬れますよ」
会長が魔剣を振りあげ岩に向かって振り下ろす。
パキンッッ。ヒュルルルルル……サクッ!
結果は火を見るよりも明らかだった。
「貧富の差が激しいあの街なんてどうでしょう?」
「権力を笠にやりたい放題か……やっぱ、殺るなら肥溜めから生まれたような人間だよな。レヴィ、早速準備してくれ」
「"TV"! ふぅ……。これしながらの戦闘って実は結構しんどいんですよね」
この魔法はレヴィが実際見たものを、映像として魔界の魔族達に見せる魔法だ。
「一振りで終わらせるからその瞬間《ヴィジョン》、バッチリ撮ってくれよ」
地上に降りると声高に命令を下す私腹を肥やした貴族《ブタ》ども。それとは裏腹に、覇気のない奴隷達。
俺が死をもって救済してやるから、感謝して敬いなよ。
「皆殺しにするおつもりですか!?」
「ここが冥府《タルタロス》かのように絶望しきってんだったらいっそ殺しちまった方がいいだろうが!」
「魔族に歯向かう人間は殺すべきですけど、抵抗もしないのに殺すのはどうかと思いますよ」
「わかったよ。おい奴隷ども……いや、この場にいるやつ全員伏せろ!」
その刹那。傲慢な貴族《カス》どもをぶった切ると、解放された奴隷達が、メシアだなんだと叫びやがる。
「おいお前ら、俺は神じゃねー。あくまで魔族だ。助けてくれたなんて変な期待を持つのはやめろ。お前たちが生きてるのは歯向かわなかったから。ただそれだけだ」
「魔族は何を望む? 金か? 地位か名誉か!? なんでも用意出来るぞ!」
運よく躱《かわ》した貴族《クズ》が命乞いをしている。
「なら奴隷になりな。死んだほうがマシだって思えるほどの地獄を見せてやるぜ」
「許してくれ! 金ならいくらでも……そ、そうだ。私の権力《ちから》でこの国の王にしてやるぞ! それならば文句はないだろう!?」
「下卑たグールにも劣る醜い生物が! 奴隷達がお前に許しを請うた時、お前は解放《ゆる》してやったのか? いや……いい、そのドブ臭い口を今すぐ閉じろ」
ドスッ
断末魔が上がる間もなくレヴィが奴の胸を貫く。
「さて、中々ばえる画《え》が撮れたんじゃないか?」
「ええ、バッチリですよ良い宣伝効果になりそうです……って何ですかこれ!?
レヴィが移動した先に広がっていたのは魔族達の死体だった。
貴族《ゴミ》を守ってた衛兵が殺ったのか? いや、魔剣を手にした魔族が全滅させられてるんだぞ……?
思案を巡らせていると魔族が使ってたであろうボロボロに朽ちた魔剣をレヴィが渡してくる。
そこには巨匠オーディンの紋章が刻まれていた。
「……!? あのクソ女やりやがったな!!」
「レヴィ! 魔剣《こいつ》にかけられた魔法を追えるか?」
「追うって、そんなこと出来んのか?」
「もちろんです。魔法には個性がありますからね。思いついた魔法に想いを込める。同じ魔法でも想いが宿れば、もはやそれは違う魔法です」
「それじゃあ、こっちは頼んだぞ」
「了解です。任せてください!」
***
「あ!? なんだよこりゃあ!?」
店に戻って来た俺達に悲惨な光景が目に飛び込んでくる。
災厄はさらに続くようだ。
「こりゃひでーな。紋章の入った魔剣ばかりが壊されてる……」
そこにタイミングよく蛇女が店に入ってくる。
「オホホホ、ごめん遊ばせ。……あらまぁ、なんということでしょう! 私はあなた方に商売の基本をご教示してさしあげようと思ったのですが…… こんな状態では教えても無駄骨ではありませんこと!」
「ああ、蛇族に足があるくらい無駄だな。まぁ、俺達はお前みたいな卑怯者には絶対に負けないから、安心して商売に勤しんでなよ」
「な……! オホホホ……こんな状態で私達に勝てるですって? あなたは武具屋から魔界ピエロにでも転職なさってはどうかしら?」
「そうだな、お前に負けたら魔都中を裸踊りで練り歩いてやるよ」
「その言葉お忘れなきよう」
そして、グランプリ最終日も終わり運営から結果が発表される。
壊された魔剣の補充もなんとか間に合い、店も最後まで盛況だった。途中結果を見てもまず間違いなく優勝は……
「今年のMM-1グランプリ優勝者は……。蛇族です」
「なにぃ!? おいちょっと待て、売上げは俺らの方が上じゃねぇかよ!」
「なぁーに言ってるんだい?、僅差で蛇族の方が上じゃないかぁ」
運営もグルってわけか……。
「ふざけんじゃねぇ!」
「落ち着け!」
「で、でもよぉ……」
「何も知らない魔族達《オーディエンス》の前で下手に騒いでは奴らの思うつぼだ」
そうは言ったモノの時間がない。 クソッ! レヴィの奴はまだか……
「待たれよ!」
「あ……あなた様は……魔界商会の会長!」
「なんとか間に合ったようだね」
「そ……それは!?」
「それは? ……何だと言うのだね」
「いえ、何でもありませんわ」
魔剣を握った会長が睨みを効かせる。蛇女はその鋭い眼光を向けられひどく動揺している。
「それじゃあ試し切りといきましょうか」
ドスン
レヴィが岩をテレポートさせる。
「ふむ、これが本物の魔剣ならばこのような岩などすんなり斬れるというわけだね」
「ええ、もちろんです。軽く当てるだけで豆腐みたいにスパスパ斬れますよ」
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